家政夫くんと、はてなのレシピ

真鳥カノ

文字の大きさ
27 / 98
第二章 一品目 ”ぽろぽろ”ごはん

11 ねんどのお料理

しおりを挟む
「……ねね、おきた」
 そうこうしているうちに、天は起き出してしまった。寝ぼけ眼を片手でこすりながらも、奈々の姿をしっかりと捉えている。
 そして眠そうな顔のままとことこ歩み寄り、奈々にぴとっとくっつくように隣に座った。
 天には内緒の作戦会議のつもりだったが、これでは内緒にするのは難しそうだ。
「天ちゃん、邪魔したらアカンよ」
「うん。じゃあてんちゃん、ねんどする」
 そう言うと、天は持ってきた荷物のもとへと歩いて行った。
 まだ荷ほどきしていない大きなかばんをがさごそ漁り、中から両手で抱えられるほどのプラスチックのケースを取り出す。
 奈々が慌てて粘土板も取り出して、ケースを開く前にテーブルに敷いた。天は、その横にケースを置き、パカッと留め金を外す。すると中から色とりどりの粘土と、それを切ったり伸ばしたりこねたりするための様々な道具が出てきた。小さなアタッシュケースの中にきっちり収まっているスパイ道具のようだった。
 野保も晶も竹志も、さっきまでの話題を忘れたかのように、興味津々で覗き込んだ。
「へぇ……全部揃ってるんだね」
「小麦粘土のお料理キットです。ホンマに料理作ってるみたいなんですよ」
 そう言う奈々は、ちょっと自慢げだった。その理由は、すぐにわかった。
 天の手の中で、様々な色の粘土がこねられ、固められ、切られ、組み合わさっていく。粘土と食材の違いはあれど、その様は『料理』そのものだと、竹志は思った。
 感心していると、あっという間に小さな皿の上に粘土のメニューが載っていく。黄色いもの、茶色いもの、白いもの……小さく切ってはちょこんと載せて、『料理』の載った皿が次々出来上がる。まるで定食か何かのようだ。
 竹志は、思わず尋ねた。
「これ、何?」
 緑色の塊をちょこんと載せると、一仕事終えたというような顔をして、天は言った。
「ねねの朝ごはん!」
 天が自慢げに言うと、奈々は急に恥ずかしそうに俯いてしまった。
「ねね……奈々ちゃんが作ったご飯、てこと?」
「うん」
 竹志が問うと、天は自慢げに頷いた。
「そっか。美味しいの?」
「めっちゃ美味しい!」
「や、やめてや! そんなテキトーなん……」
 奈々の顔色は赤いのか青いのかよくわからなくなっている。
「かけた時間と美味しさが比例するとは限らないよ。僕も朝食はテキトーだし」
「で、でも……」
 もしかしたら、先ほどのちらし寿司で竹志の料理の腕は過大評価されてしまったのかもしれない。奈々がこれ以上卑下しないよう、更なる褒め言葉を引き出そうと竹志は考えた。
「ねえ天ちゃん、これ何?」
 竹志が白い粘土を指さし尋ねた。すると天は、胸を張って答えた。
「それ、ごはん!」
「ああ、白ご飯か。じゃあこの黄色いのは?」
「卵焼き!」
「この細くて茶色いのは? こっちの緑色のは?」
「えっとな……茶色はな、ウインナーやで。緑は、えっと……おやさい!」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。