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第二章 一品目 ”ぽろぽろ”ごはん
11 ねんどのお料理
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「……ねね、おきた」
そうこうしているうちに、天は起き出してしまった。寝ぼけ眼を片手でこすりながらも、奈々の姿をしっかりと捉えている。
そして眠そうな顔のままとことこ歩み寄り、奈々にぴとっとくっつくように隣に座った。
天には内緒の作戦会議のつもりだったが、これでは内緒にするのは難しそうだ。
「天ちゃん、邪魔したらアカンよ」
「うん。じゃあてんちゃん、ねんどする」
そう言うと、天は持ってきた荷物のもとへと歩いて行った。
まだ荷ほどきしていない大きなかばんをがさごそ漁り、中から両手で抱えられるほどのプラスチックのケースを取り出す。
奈々が慌てて粘土板も取り出して、ケースを開く前にテーブルに敷いた。天は、その横にケースを置き、パカッと留め金を外す。すると中から色とりどりの粘土と、それを切ったり伸ばしたりこねたりするための様々な道具が出てきた。小さなアタッシュケースの中にきっちり収まっているスパイ道具のようだった。
野保も晶も竹志も、さっきまでの話題を忘れたかのように、興味津々で覗き込んだ。
「へぇ……全部揃ってるんだね」
「小麦粘土のお料理キットです。ホンマに料理作ってるみたいなんですよ」
そう言う奈々は、ちょっと自慢げだった。その理由は、すぐにわかった。
天の手の中で、様々な色の粘土がこねられ、固められ、切られ、組み合わさっていく。粘土と食材の違いはあれど、その様は『料理』そのものだと、竹志は思った。
感心していると、あっという間に小さな皿の上に粘土のメニューが載っていく。黄色いもの、茶色いもの、白いもの……小さく切ってはちょこんと載せて、『料理』の載った皿が次々出来上がる。まるで定食か何かのようだ。
竹志は、思わず尋ねた。
「これ、何?」
緑色の塊をちょこんと載せると、一仕事終えたというような顔をして、天は言った。
「ねねの朝ごはん!」
天が自慢げに言うと、奈々は急に恥ずかしそうに俯いてしまった。
「ねね……奈々ちゃんが作ったご飯、てこと?」
「うん」
竹志が問うと、天は自慢げに頷いた。
「そっか。美味しいの?」
「めっちゃ美味しい!」
「や、やめてや! そんなテキトーなん……」
奈々の顔色は赤いのか青いのかよくわからなくなっている。
「かけた時間と美味しさが比例するとは限らないよ。僕も朝食はテキトーだし」
「で、でも……」
もしかしたら、先ほどのちらし寿司で竹志の料理の腕は過大評価されてしまったのかもしれない。奈々がこれ以上卑下しないよう、更なる褒め言葉を引き出そうと竹志は考えた。
「ねえ天ちゃん、これ何?」
竹志が白い粘土を指さし尋ねた。すると天は、胸を張って答えた。
「それ、ごはん!」
「ああ、白ご飯か。じゃあこの黄色いのは?」
「卵焼き!」
「この細くて茶色いのは? こっちの緑色のは?」
「えっとな……茶色はな、ウインナーやで。緑は、えっと……おやさい!」
そうこうしているうちに、天は起き出してしまった。寝ぼけ眼を片手でこすりながらも、奈々の姿をしっかりと捉えている。
そして眠そうな顔のままとことこ歩み寄り、奈々にぴとっとくっつくように隣に座った。
天には内緒の作戦会議のつもりだったが、これでは内緒にするのは難しそうだ。
「天ちゃん、邪魔したらアカンよ」
「うん。じゃあてんちゃん、ねんどする」
そう言うと、天は持ってきた荷物のもとへと歩いて行った。
まだ荷ほどきしていない大きなかばんをがさごそ漁り、中から両手で抱えられるほどのプラスチックのケースを取り出す。
奈々が慌てて粘土板も取り出して、ケースを開く前にテーブルに敷いた。天は、その横にケースを置き、パカッと留め金を外す。すると中から色とりどりの粘土と、それを切ったり伸ばしたりこねたりするための様々な道具が出てきた。小さなアタッシュケースの中にきっちり収まっているスパイ道具のようだった。
野保も晶も竹志も、さっきまでの話題を忘れたかのように、興味津々で覗き込んだ。
「へぇ……全部揃ってるんだね」
「小麦粘土のお料理キットです。ホンマに料理作ってるみたいなんですよ」
そう言う奈々は、ちょっと自慢げだった。その理由は、すぐにわかった。
天の手の中で、様々な色の粘土がこねられ、固められ、切られ、組み合わさっていく。粘土と食材の違いはあれど、その様は『料理』そのものだと、竹志は思った。
感心していると、あっという間に小さな皿の上に粘土のメニューが載っていく。黄色いもの、茶色いもの、白いもの……小さく切ってはちょこんと載せて、『料理』の載った皿が次々出来上がる。まるで定食か何かのようだ。
竹志は、思わず尋ねた。
「これ、何?」
緑色の塊をちょこんと載せると、一仕事終えたというような顔をして、天は言った。
「ねねの朝ごはん!」
天が自慢げに言うと、奈々は急に恥ずかしそうに俯いてしまった。
「ねね……奈々ちゃんが作ったご飯、てこと?」
「うん」
竹志が問うと、天は自慢げに頷いた。
「そっか。美味しいの?」
「めっちゃ美味しい!」
「や、やめてや! そんなテキトーなん……」
奈々の顔色は赤いのか青いのかよくわからなくなっている。
「かけた時間と美味しさが比例するとは限らないよ。僕も朝食はテキトーだし」
「で、でも……」
もしかしたら、先ほどのちらし寿司で竹志の料理の腕は過大評価されてしまったのかもしれない。奈々がこれ以上卑下しないよう、更なる褒め言葉を引き出そうと竹志は考えた。
「ねえ天ちゃん、これ何?」
竹志が白い粘土を指さし尋ねた。すると天は、胸を張って答えた。
「それ、ごはん!」
「ああ、白ご飯か。じゃあこの黄色いのは?」
「卵焼き!」
「この細くて茶色いのは? こっちの緑色のは?」
「えっとな……茶色はな、ウインナーやで。緑は、えっと……おやさい!」
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