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六
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千秋の元に来たからには、千秋に従うべきだろう。ここは大人しく、主に従って一緒に昼寝……なんてことができるはずもない。りんは千秋が起きてくるまで、ひたすら店と家の中を掃除して回った。
それほど汚れているわけではないのだが、床も柱も壁も見違えるほどぴかぴかに磨き上げてみたのだった。きっと掃除くらいしか、役に立てることがないのだし。
卓を拭いて、箸置きに箸を入れ終えて……ようやく、すべてが終わった。
ふと外を見ると、空が赤みがかっている。
「いや、もう夜になってまう……!」
だというのに、千秋が起きてくる気配は感じない。
このままでは店を開ける前に日が落ちて、夜が明けてしまうのではないか。そう思い、家の方へと向かおうとした、その時だった。
ガタンガタン
戸を開けようとする音がした。開けようとしたが、開けられなかった音と言うべきか。
ふと戸口を見ると、そこに心張り棒などはかかっていない。暖簾を出していないとはいえ、開けようと思えば開けられるはずだ。
だが、戸は開かない。
ガタガタ――今度は、戸を軽く叩く音がした。
「ごめんください。開けとくれやす」
男の声だ。客だろうか。
迷った末に、障子戸越しに答えた。
「すんまへん。まだ開けてへんのです」
申し訳ないと思いつつそう告げると、戸の向こうの男は、ほんの一瞬の間を置いて、続けた。
「かましまへん(構いません)。開けとくれやす」
何が構わないのだろうか。こっちが都合が悪いと言っているのに。
「そやから、まだ商い前なんです」
「かましまへん。開けとくれやす」
まったく同じ答えが、返ってきてしまった。話が通じていないのだろうかと、りんは眉をひそめた。
「あの……この店の旦さんに、何かご用ですやろか?」
「へぇ、そうだす。開けとくれやす」
もしや、千秋の知り合いだろうか。一瞬だけ、開けようかと思ってしまったが、それはいけないとすぐに直感した。
用があって来たのなら、少なくとも千秋が迎え入れようとする者なら、何も気にせず入れるはず。
ふと、視線を動かすと、護符が貼られているのが目に入った。本家で見たことがある、魔除けの護符だ。邪な目的を以て入ることができないように、敷地内の至る所に貼られていた。
これを破れないということは……
(この人も、あやかし……!)
それほど汚れているわけではないのだが、床も柱も壁も見違えるほどぴかぴかに磨き上げてみたのだった。きっと掃除くらいしか、役に立てることがないのだし。
卓を拭いて、箸置きに箸を入れ終えて……ようやく、すべてが終わった。
ふと外を見ると、空が赤みがかっている。
「いや、もう夜になってまう……!」
だというのに、千秋が起きてくる気配は感じない。
このままでは店を開ける前に日が落ちて、夜が明けてしまうのではないか。そう思い、家の方へと向かおうとした、その時だった。
ガタンガタン
戸を開けようとする音がした。開けようとしたが、開けられなかった音と言うべきか。
ふと戸口を見ると、そこに心張り棒などはかかっていない。暖簾を出していないとはいえ、開けようと思えば開けられるはずだ。
だが、戸は開かない。
ガタガタ――今度は、戸を軽く叩く音がした。
「ごめんください。開けとくれやす」
男の声だ。客だろうか。
迷った末に、障子戸越しに答えた。
「すんまへん。まだ開けてへんのです」
申し訳ないと思いつつそう告げると、戸の向こうの男は、ほんの一瞬の間を置いて、続けた。
「かましまへん(構いません)。開けとくれやす」
何が構わないのだろうか。こっちが都合が悪いと言っているのに。
「そやから、まだ商い前なんです」
「かましまへん。開けとくれやす」
まったく同じ答えが、返ってきてしまった。話が通じていないのだろうかと、りんは眉をひそめた。
「あの……この店の旦さんに、何かご用ですやろか?」
「へぇ、そうだす。開けとくれやす」
もしや、千秋の知り合いだろうか。一瞬だけ、開けようかと思ってしまったが、それはいけないとすぐに直感した。
用があって来たのなら、少なくとも千秋が迎え入れようとする者なら、何も気にせず入れるはず。
ふと、視線を動かすと、護符が貼られているのが目に入った。本家で見たことがある、魔除けの護符だ。邪な目的を以て入ることができないように、敷地内の至る所に貼られていた。
これを破れないということは……
(この人も、あやかし……!)
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