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第1章 荷物運びの(魔)王様
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ギルザードが、先ほどよりも深く、強く頷いた。
「だからこそ、歴代の国王様は人間界に攻め入ろうとなさっていましたが……」
「どれほど獰猛な獣だろうと、海に沈んでは戦えまい。戦意ばかり高揚して、結局のところ打つ手なしで終わっていたな」
「はい。ですが……貴方様は違います」
ギルザードの瞳が、きりっと引き締まった。まっすぐにライゼンシュタールを見据える。
「我らが王は、南の人間の装備を見て、彼らの文明がとても優れた技術を持っていることに目を付けた。そして、その技術を取り入れる方法を考え、気付いた……彼らの元で働けば収入を得て物資を手に入れられ、その上彼らの技術も学ぶことが出来ると……!」
「そんな大層なものじゃない。『出稼ぎ』だ」
「王自らがなさることです。これほど尊い『出稼ぎ』がありますか……!」
「……わかったわかった」
熱っぽく語るギルザードを、ライゼンシュタールが宥めている。
この副官は、普段は優秀で、ライゼンシュタールの留守を安心して任せられる人物なのだが、主のことを語り出すと熱が上がりすぎるきらいがある。本当に、なぜなのか、わからないが……。
そして、熱くなったかと思うと、急にさめざめと泣き出す始末だ。ちょうど、今のように。
「ああ、なんてことだ……王にこのような役目を負わせて……本来なら我々配下が行かなければならないというのに」
「何度も話しただろう。南の地は、ここと比べて魔力濃度が低すぎる。ろくに身動きすらとれないだろう。魔力の外郭を常に纏っていられる俺以外はな」
「はい……貴方様のような規格外の魔力量がなければ、できぬ神業です」
「そう。だから俺が出稼ぎに行くのは、自明の理ということだ」
ライゼンシュタールがそう言うと、納得してけろっと立ち直る。長年の付き合いだが、本当にわからない……。
「それで、今回はいつまで城に?」
「いや、これからすぐに発つ」
「そ、そんな……!」
ライゼンシュタールが立ち上がると同時に、ギルザードはあたふたし始める。
「先ほど帰られたばかりではないですか」
「今、繁忙期らしくてな。働き口は競争になっているんだ。まぁ……ルーグには顔を見せてやりたかったが……」
「ルーグは……ここ数日姿が見えません。もしやライ様に会いたい余り、どこぞを歩き回っているのやも」
「……そうか、困ったな。次に戻ってくる時には会えればいいが」
「しかし……先日お送り頂いた食料でごちそうを作ろうと、料理長も張り切っておりましたのに」
「あれはお前たち民が食べるために調達したものだ。俺のために使っては意味がない」
そう言うと、ライゼンシュタールは懐にしまっていたメガネをかけた。
金色の瞳が黒へと変わる。角も瞬時に見えなくなった。
あっという間に、国王ライゼンシュタールは、人間の青年ライへと姿を変えた。
そして魔力を操作して、目の前に扉のようなものを出現させた。
「では、副業に行ってくる」
ライゼンシュタール……いや、ライはギルに向けて手を振り、目の前の扉をくぐった。
人間界へと向かって、旅立ったのだ。
「だからこそ、歴代の国王様は人間界に攻め入ろうとなさっていましたが……」
「どれほど獰猛な獣だろうと、海に沈んでは戦えまい。戦意ばかり高揚して、結局のところ打つ手なしで終わっていたな」
「はい。ですが……貴方様は違います」
ギルザードの瞳が、きりっと引き締まった。まっすぐにライゼンシュタールを見据える。
「我らが王は、南の人間の装備を見て、彼らの文明がとても優れた技術を持っていることに目を付けた。そして、その技術を取り入れる方法を考え、気付いた……彼らの元で働けば収入を得て物資を手に入れられ、その上彼らの技術も学ぶことが出来ると……!」
「そんな大層なものじゃない。『出稼ぎ』だ」
「王自らがなさることです。これほど尊い『出稼ぎ』がありますか……!」
「……わかったわかった」
熱っぽく語るギルザードを、ライゼンシュタールが宥めている。
この副官は、普段は優秀で、ライゼンシュタールの留守を安心して任せられる人物なのだが、主のことを語り出すと熱が上がりすぎるきらいがある。本当に、なぜなのか、わからないが……。
そして、熱くなったかと思うと、急にさめざめと泣き出す始末だ。ちょうど、今のように。
「ああ、なんてことだ……王にこのような役目を負わせて……本来なら我々配下が行かなければならないというのに」
「何度も話しただろう。南の地は、ここと比べて魔力濃度が低すぎる。ろくに身動きすらとれないだろう。魔力の外郭を常に纏っていられる俺以外はな」
「はい……貴方様のような規格外の魔力量がなければ、できぬ神業です」
「そう。だから俺が出稼ぎに行くのは、自明の理ということだ」
ライゼンシュタールがそう言うと、納得してけろっと立ち直る。長年の付き合いだが、本当にわからない……。
「それで、今回はいつまで城に?」
「いや、これからすぐに発つ」
「そ、そんな……!」
ライゼンシュタールが立ち上がると同時に、ギルザードはあたふたし始める。
「先ほど帰られたばかりではないですか」
「今、繁忙期らしくてな。働き口は競争になっているんだ。まぁ……ルーグには顔を見せてやりたかったが……」
「ルーグは……ここ数日姿が見えません。もしやライ様に会いたい余り、どこぞを歩き回っているのやも」
「……そうか、困ったな。次に戻ってくる時には会えればいいが」
「しかし……先日お送り頂いた食料でごちそうを作ろうと、料理長も張り切っておりましたのに」
「あれはお前たち民が食べるために調達したものだ。俺のために使っては意味がない」
そう言うと、ライゼンシュタールは懐にしまっていたメガネをかけた。
金色の瞳が黒へと変わる。角も瞬時に見えなくなった。
あっという間に、国王ライゼンシュタールは、人間の青年ライへと姿を変えた。
そして魔力を操作して、目の前に扉のようなものを出現させた。
「では、副業に行ってくる」
ライゼンシュタール……いや、ライはギルに向けて手を振り、目の前の扉をくぐった。
人間界へと向かって、旅立ったのだ。
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