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第1章 荷物運びの(魔)王様
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長い長い通路を歩かされた末に、ライはようやく薄ぼんやりとした部屋にたどり着いた。
部屋の中には何もなく、部屋というよりは、ただただ広いだけの空間だった。
その中央を指して、ベルリは言った。
「ここに下ろしてください」
ベルリが指し示す場所には、大きな円が描かれている。奇妙なのは、それが淡く光を放っていることだった。
よく見れば、ここにも灯りはない。部屋がぼんやりと照らされているように見えたのは、その円が放つ光のせいだった。
そろりと近づくと、円の内側には細かな文様が見えた。人間が見ても意味がわからないものだろう。
だが、ライにはわかる。
それらは、ライたち北の国で扱われる魔力操作のための術に使われる文様だからだ。
(鎖の文様……魔術式の内に入ったものを繋ぎ止めるためのものだな)
ライは、箱を落とさないようにしっかりと抱えて……足をもつれさせた。
「あ、あぁ~足がすべった~」
ライは『うっかり』した。
『うっかり』足をもつれさせ、『うっかり』箱を置く前に円と文様をぐしゃぐしゃにしてしまい、『うっかり』荷物の包みをほどいて、『うっかり』封印のために付けられていたらしい魔石の飾りを外してしまった。
「ひぃ⁉ な、な、なんてことを……!」
それまで涼しい顔をしていたベルリが、急速に青ざめていく。
「申し訳ない。わざとでは……」
「そんなこと、関係あるか! どうしてくれるんだ! あれがなければ、あの獣は……!」
全部『うっかり』だ、仕方ない。そう言おうとしたが、無駄だった。
ベルリは狼狽えて、声にならない声を漏らす。ライの背後にある『荷物』だったものを見て、目を白黒させていた。
逃げようにも、足が動かないようだ。
それもそうだろう。
結果として、今、鎖の魔力は無効になり、封印の魔力も解かれ、彼の目の前に大岩をも超える巨大な犬が立っているのだから。
「ま、魔獣が……放たれた……!」
ベルリの悲鳴が暗い室内に、いや、その先の建物中にまで、響こうとしていた。
部屋の中には何もなく、部屋というよりは、ただただ広いだけの空間だった。
その中央を指して、ベルリは言った。
「ここに下ろしてください」
ベルリが指し示す場所には、大きな円が描かれている。奇妙なのは、それが淡く光を放っていることだった。
よく見れば、ここにも灯りはない。部屋がぼんやりと照らされているように見えたのは、その円が放つ光のせいだった。
そろりと近づくと、円の内側には細かな文様が見えた。人間が見ても意味がわからないものだろう。
だが、ライにはわかる。
それらは、ライたち北の国で扱われる魔力操作のための術に使われる文様だからだ。
(鎖の文様……魔術式の内に入ったものを繋ぎ止めるためのものだな)
ライは、箱を落とさないようにしっかりと抱えて……足をもつれさせた。
「あ、あぁ~足がすべった~」
ライは『うっかり』した。
『うっかり』足をもつれさせ、『うっかり』箱を置く前に円と文様をぐしゃぐしゃにしてしまい、『うっかり』荷物の包みをほどいて、『うっかり』封印のために付けられていたらしい魔石の飾りを外してしまった。
「ひぃ⁉ な、な、なんてことを……!」
それまで涼しい顔をしていたベルリが、急速に青ざめていく。
「申し訳ない。わざとでは……」
「そんなこと、関係あるか! どうしてくれるんだ! あれがなければ、あの獣は……!」
全部『うっかり』だ、仕方ない。そう言おうとしたが、無駄だった。
ベルリは狼狽えて、声にならない声を漏らす。ライの背後にある『荷物』だったものを見て、目を白黒させていた。
逃げようにも、足が動かないようだ。
それもそうだろう。
結果として、今、鎖の魔力は無効になり、封印の魔力も解かれ、彼の目の前に大岩をも超える巨大な犬が立っているのだから。
「ま、魔獣が……放たれた……!」
ベルリの悲鳴が暗い室内に、いや、その先の建物中にまで、響こうとしていた。
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