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寒の戻り
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もうこれで春として
いいかなっていうほどの
温かな日々があって
油断してたら
後ろから北風に抱きしめられ
首すじに冷えたキスをされた
寒の戻りのあの日
出会いました
あのマフラーに似た印象の
あなたに
わたしは結局
マフラーを巻かないまま
春になろうとしていた
押し入れに年中ぶら下がった
ままのマフラー
学生さんみたいな顔した
あなたと同じようで
なんか嬉しかった
あなたは
ひどく寒がりで
三月になってたあの日も
マフラーで首をぐるんぐるんに
まもってた
ダウンジャケットのポケットに
両手を突っ込んで
その手は手袋してたという
オチまでついてて
あとで何度も笑ったね
わたしは学生さんの多い
珈琲屋の窓辺で甘くない
温かな珈琲と
弾力のあるケーキを
いただいていた
窓の外を歩く人は途切れなく
流れていく川のようで
学生さんたちのさざなみに
ふと佇んだあなたを見つけた
あなたは
ひじょうに重装備したなりで
腕時計を見ていた
のかな
気の早い
軽い色の春コートの流れ
には似合わない
あなたは目立った
わたしはあなたに視線を
釘付けにされてた
珈琲屋に音楽は流れる
待ち合わせなのかな
と思ったがそれなら
店の中で待ち合わせれば
いいのにと気を揉んだ
揉んでもね
仕方ないけどね
弾力のあるスポンジの
ケーキはちょっと重たかった
五時の街はまだ明るくて
夕食には早すぎるが
おやつには遅すぎて
なんとも
スポンジをぱふぱふさせながら
あなたを見ていた
あなたは相変わらず
そこに立ったまま
もやもやしてる
きょろきょろはしてないし
荷物といえば
小さなショルダーバッグ
帽子は被っていない
耳が真っ赤になってる
そんなに寒いか?
腕時計をした
腕を何度も上げ下げして
あなたはとりあえず
時間は気になるようだ
人との待ち合わせじゃなければ
何なんだ?
と思ってたら
いきなりあなたは
振り向いた
ガラス越しに
思い切り
目が
合った
タラリラ~
と映画の主題歌が流れるところ
だったけど珈琲屋の音楽は
クセのないボサノヴァ
わたしはケーキの弾力を
確かめることも忘れて
あなたを見た
あなたからわたしは見えてたのかな
あなたの顔を描写する
語彙がわたしにはありません
ぐるぐる巻きのマフラーに埋もれた
年齢も不詳な
男の人
ってことは前からわかってたけど
ララルラ~
あなたの視線は珈琲屋の
ウインドウをすべって
向こうに落ちた
タラタッタ
効果音は唐突に終わり
あなたは来た方へ歩き出した
意味不明
いま、ここでわたしが
この珈琲屋を飛び出したとして
あなたを追いかけたとして
あなたに追いついたとして
肩をつかんだとして
何になるの
三月の珈琲屋ではまだ
珈琲といえばホットです
アイスが欲しければ
アイスと言わなければならない
アイスと言っても
アイスはないかもしれない
あなたの去った窓の外を
まだ呆然と見ているわたしの
前にはあなたが
立っていました
ぐるぐる巻きのマフラーも
ほどかずそのままに
さがしたよ
とあなたは言いました
忘れられないあの声で
あなたはポケットから
手袋付きの手を出して
向かいの椅子を引いた
あの日はやっぱりあなたが
正しかったんだと思う
三月なのに寒さの戻った帰り道
むき出しの首のわたし
しっかり風邪をひいてしまった
でもそれもあなたからの
プレゼントみたいで
ちょっと嬉しいなんて
まだ熱が下がってないな
いいかなっていうほどの
温かな日々があって
油断してたら
後ろから北風に抱きしめられ
首すじに冷えたキスをされた
寒の戻りのあの日
出会いました
あのマフラーに似た印象の
あなたに
わたしは結局
マフラーを巻かないまま
春になろうとしていた
押し入れに年中ぶら下がった
ままのマフラー
学生さんみたいな顔した
あなたと同じようで
なんか嬉しかった
あなたは
ひどく寒がりで
三月になってたあの日も
マフラーで首をぐるんぐるんに
まもってた
ダウンジャケットのポケットに
両手を突っ込んで
その手は手袋してたという
オチまでついてて
あとで何度も笑ったね
わたしは学生さんの多い
珈琲屋の窓辺で甘くない
温かな珈琲と
弾力のあるケーキを
いただいていた
窓の外を歩く人は途切れなく
流れていく川のようで
学生さんたちのさざなみに
ふと佇んだあなたを見つけた
あなたは
ひじょうに重装備したなりで
腕時計を見ていた
のかな
気の早い
軽い色の春コートの流れ
には似合わない
あなたは目立った
わたしはあなたに視線を
釘付けにされてた
珈琲屋に音楽は流れる
待ち合わせなのかな
と思ったがそれなら
店の中で待ち合わせれば
いいのにと気を揉んだ
揉んでもね
仕方ないけどね
弾力のあるスポンジの
ケーキはちょっと重たかった
五時の街はまだ明るくて
夕食には早すぎるが
おやつには遅すぎて
なんとも
スポンジをぱふぱふさせながら
あなたを見ていた
あなたは相変わらず
そこに立ったまま
もやもやしてる
きょろきょろはしてないし
荷物といえば
小さなショルダーバッグ
帽子は被っていない
耳が真っ赤になってる
そんなに寒いか?
腕時計をした
腕を何度も上げ下げして
あなたはとりあえず
時間は気になるようだ
人との待ち合わせじゃなければ
何なんだ?
と思ってたら
いきなりあなたは
振り向いた
ガラス越しに
思い切り
目が
合った
タラリラ~
と映画の主題歌が流れるところ
だったけど珈琲屋の音楽は
クセのないボサノヴァ
わたしはケーキの弾力を
確かめることも忘れて
あなたを見た
あなたからわたしは見えてたのかな
あなたの顔を描写する
語彙がわたしにはありません
ぐるぐる巻きのマフラーに埋もれた
年齢も不詳な
男の人
ってことは前からわかってたけど
ララルラ~
あなたの視線は珈琲屋の
ウインドウをすべって
向こうに落ちた
タラタッタ
効果音は唐突に終わり
あなたは来た方へ歩き出した
意味不明
いま、ここでわたしが
この珈琲屋を飛び出したとして
あなたを追いかけたとして
あなたに追いついたとして
肩をつかんだとして
何になるの
三月の珈琲屋ではまだ
珈琲といえばホットです
アイスが欲しければ
アイスと言わなければならない
アイスと言っても
アイスはないかもしれない
あなたの去った窓の外を
まだ呆然と見ているわたしの
前にはあなたが
立っていました
ぐるぐる巻きのマフラーも
ほどかずそのままに
さがしたよ
とあなたは言いました
忘れられないあの声で
あなたはポケットから
手袋付きの手を出して
向かいの椅子を引いた
あの日はやっぱりあなたが
正しかったんだと思う
三月なのに寒さの戻った帰り道
むき出しの首のわたし
しっかり風邪をひいてしまった
でもそれもあなたからの
プレゼントみたいで
ちょっと嬉しいなんて
まだ熱が下がってないな
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