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III
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寝ようと思ったその時。
「ユナちゃん」
誰かに呼ばれた。とてもはっきりと聞こえた。きっと昼間、ねえと話しかけて来た奴と同じだ。
いつの間に私の名前を。
部屋を見渡すけれど誰もいない。
やっぱり幽霊がいるのかもしれない。
パパとママのところへ行こうとしたら
「鏡。鏡を見て」
「あ、あなたは誰よ。何処にいるの? 姿を見せなさいよ。」
「鏡。鏡を見ればわかる。」
「鏡ね。鏡を見ればいいのね。わかったわ。」
恐る恐る鏡に掛けておいた布を取って覗いてみると......
女の子がいた。私と同じくらいの年だと思う女の子が。
目をこすってみた。しかし見えてるものは変わらない。その女の子が笑ってこっちをみている。
普通なら私が反射するはずだけれど私とは違う女の子が映っていて私は映っていなかった。
私の容姿が変わったわけではなくて私が手を挙げてみても鏡の中の女の子は手を挙げたりしない。
じっとこちらをみて笑っている。少し不気味だと思った。
「あなたの名前はなんていうの? 」
沈黙が続いていて相手が話しかけてくる雰囲気も無かったから思い切って自分から話しかけてみた。
「私の名前は楓。」
ほらこれと言って服のタグに楓と書いてあるのを見せてくれた。
「楓ちゃんっていうんだ。そこで何してるの? お家はないの? 」
「私はここから出られないのよ。鏡の中に突然閉じ込められちゃったの。お家はここよ。」
「ええ! 閉じ込められちゃってるの? 出る方法は何かないの? 」
「出る方法はわからないわ。もうどれくらい鏡の中にいるのかもわからないわ。鏡の中だと歳をとらないのか老けたりもしてないわ。お腹も空かないし喉も乾かない。トイレにも行きたくならないわ。眠くもならないし。」
「鏡の中ってすごいね。一回入ってみたいよ。って簡単に入れるものなのかな? 」
「ちょっと鏡越しに私と手を合わせてみて。」
言われた通りに楓ちゃんと手を合わせると。
入れ替わった。私が鏡の中に来ている。でも鏡の外にいるのも私だ。
多分中身だけが入れ替わっているのだろう。
「楓ちゃん。すごいね。鏡の中に来れちゃったよ! 」
「そうね。」
「思ったより鏡の中って狭いし何にもないのね。他の鏡の方へ移動できたりしないの?」
「他のところへの移動はできないわ。多分。何回か試してみてるけどできないわ。」
「さっきまで眠かったのに鏡の中へ来たら眠気が吹っ飛んだよ。鏡の中って不思議なところだね。」
「もう一回手を合わせましょ」
もう一度手を合わせると多分鏡の外へ戻って来た。鏡には楓ちゃんが映っている。ドレッサーの方の鏡を見てみると眠そうな私が映っていた。
戻って来たんだ。
「楓ちゃんはいつでもそこにいる?」
「私はずっとここにいるわよ。」
「私は一回なるけど起きたらまたお話ししましょうね。」
「わかったわ。待ってるわね。」
私は楓ちゃんと約束をして鏡に布をまたかけておいた。きっとママやパパが見たら驚いてこの鏡を壊してしまうかもしれない。そうしたら楓ちゃんはどうなってしまうのだろう。きっと恐ろしいことになってしまうのだろう。
そんなことにならないためにも布をかけ忘れないようにしないと。
もうこんな時間だ。早く寝ないと。
私はようやく眠りについた。
「ユナちゃん」
誰かに呼ばれた。とてもはっきりと聞こえた。きっと昼間、ねえと話しかけて来た奴と同じだ。
いつの間に私の名前を。
部屋を見渡すけれど誰もいない。
やっぱり幽霊がいるのかもしれない。
パパとママのところへ行こうとしたら
「鏡。鏡を見て」
「あ、あなたは誰よ。何処にいるの? 姿を見せなさいよ。」
「鏡。鏡を見ればわかる。」
「鏡ね。鏡を見ればいいのね。わかったわ。」
恐る恐る鏡に掛けておいた布を取って覗いてみると......
女の子がいた。私と同じくらいの年だと思う女の子が。
目をこすってみた。しかし見えてるものは変わらない。その女の子が笑ってこっちをみている。
普通なら私が反射するはずだけれど私とは違う女の子が映っていて私は映っていなかった。
私の容姿が変わったわけではなくて私が手を挙げてみても鏡の中の女の子は手を挙げたりしない。
じっとこちらをみて笑っている。少し不気味だと思った。
「あなたの名前はなんていうの? 」
沈黙が続いていて相手が話しかけてくる雰囲気も無かったから思い切って自分から話しかけてみた。
「私の名前は楓。」
ほらこれと言って服のタグに楓と書いてあるのを見せてくれた。
「楓ちゃんっていうんだ。そこで何してるの? お家はないの? 」
「私はここから出られないのよ。鏡の中に突然閉じ込められちゃったの。お家はここよ。」
「ええ! 閉じ込められちゃってるの? 出る方法は何かないの? 」
「出る方法はわからないわ。もうどれくらい鏡の中にいるのかもわからないわ。鏡の中だと歳をとらないのか老けたりもしてないわ。お腹も空かないし喉も乾かない。トイレにも行きたくならないわ。眠くもならないし。」
「鏡の中ってすごいね。一回入ってみたいよ。って簡単に入れるものなのかな? 」
「ちょっと鏡越しに私と手を合わせてみて。」
言われた通りに楓ちゃんと手を合わせると。
入れ替わった。私が鏡の中に来ている。でも鏡の外にいるのも私だ。
多分中身だけが入れ替わっているのだろう。
「楓ちゃん。すごいね。鏡の中に来れちゃったよ! 」
「そうね。」
「思ったより鏡の中って狭いし何にもないのね。他の鏡の方へ移動できたりしないの?」
「他のところへの移動はできないわ。多分。何回か試してみてるけどできないわ。」
「さっきまで眠かったのに鏡の中へ来たら眠気が吹っ飛んだよ。鏡の中って不思議なところだね。」
「もう一回手を合わせましょ」
もう一度手を合わせると多分鏡の外へ戻って来た。鏡には楓ちゃんが映っている。ドレッサーの方の鏡を見てみると眠そうな私が映っていた。
戻って来たんだ。
「楓ちゃんはいつでもそこにいる?」
「私はずっとここにいるわよ。」
「私は一回なるけど起きたらまたお話ししましょうね。」
「わかったわ。待ってるわね。」
私は楓ちゃんと約束をして鏡に布をまたかけておいた。きっとママやパパが見たら驚いてこの鏡を壊してしまうかもしれない。そうしたら楓ちゃんはどうなってしまうのだろう。きっと恐ろしいことになってしまうのだろう。
そんなことにならないためにも布をかけ忘れないようにしないと。
もうこんな時間だ。早く寝ないと。
私はようやく眠りについた。
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