101 / 387
見据える未来、払拭できない過去
38
しおりを挟む
「律ー、よかったのに。送ってくれなくても」
「そういうわけにはいかないよ。ほら、番号何番?」
すっかりふらふらの千愛希の腕を支えて歩く律。やっぱり1人で帰さなくてよかった、と思いながらマンションのエレベーターを待つ。
律の友人達の中にも高級マンションに住んでいる者は何人かいるが、その中でもハイクラスだな、と律はエントランスを見渡して思う。
エレベーターに乗り込むと、急に空間が狭くなり千愛希との距離感に少しだけモヤモヤした。見下ろす千愛希の顔は、店内ではわからなかったが、頬から胸元にかけて赤く変色していた。
やっぱり相当酔ってんな……。部屋に着いたら直ぐに帰ろう。帰宅するところまで見送れば、いくら酔ってても少し冷静になるだろうし。
そう思いながら、家の玄関まで送り届けた。
「律ー! ありがとうね! またねー!」
廊下に座って玄関で靴を脱ぎながら大きく手を振る千愛希。思わずふふっと笑いが込み上げた律。小さく手を振り返し、扉を開けた。
外から閉まっていくドアを振り返って見た途端、踞って膝に顔を伏せている千愛希の姿が目に留まった。すっかり電池切れのオモチャみたいに固まってしまったようだった。
「……千愛希?」
律は、わずか数cmとなったドアの隙間に手を入れ込んで、もう一度大きく開くとその様子を伺った。
「……ん。おやすみ」
そう発した千愛希に近付いた律は、隣にすとんと座った。
「中、入んないの?」
「……入るよ。律、帰んないの?」
「帰るよ。帰るけど……なんか、帰れない」
「なに、それ。変だよ」
千愛希はクスクス笑うけれど、踞ったまま顔を上げようとはしなかった。律はそっと手を伸ばして、肩から下に伸びた髪をすくった。それを耳にかけると、露になる頬は濡れていた。
……やっぱり。
千愛希は肝心なことはなにも言わない。全く煩わしいことを求めてこない代わりに、肝心なことも言わない。
律はそのまま千愛希の体を優しく抱き締めた。
「そういうわけにはいかないよ。ほら、番号何番?」
すっかりふらふらの千愛希の腕を支えて歩く律。やっぱり1人で帰さなくてよかった、と思いながらマンションのエレベーターを待つ。
律の友人達の中にも高級マンションに住んでいる者は何人かいるが、その中でもハイクラスだな、と律はエントランスを見渡して思う。
エレベーターに乗り込むと、急に空間が狭くなり千愛希との距離感に少しだけモヤモヤした。見下ろす千愛希の顔は、店内ではわからなかったが、頬から胸元にかけて赤く変色していた。
やっぱり相当酔ってんな……。部屋に着いたら直ぐに帰ろう。帰宅するところまで見送れば、いくら酔ってても少し冷静になるだろうし。
そう思いながら、家の玄関まで送り届けた。
「律ー! ありがとうね! またねー!」
廊下に座って玄関で靴を脱ぎながら大きく手を振る千愛希。思わずふふっと笑いが込み上げた律。小さく手を振り返し、扉を開けた。
外から閉まっていくドアを振り返って見た途端、踞って膝に顔を伏せている千愛希の姿が目に留まった。すっかり電池切れのオモチャみたいに固まってしまったようだった。
「……千愛希?」
律は、わずか数cmとなったドアの隙間に手を入れ込んで、もう一度大きく開くとその様子を伺った。
「……ん。おやすみ」
そう発した千愛希に近付いた律は、隣にすとんと座った。
「中、入んないの?」
「……入るよ。律、帰んないの?」
「帰るよ。帰るけど……なんか、帰れない」
「なに、それ。変だよ」
千愛希はクスクス笑うけれど、踞ったまま顔を上げようとはしなかった。律はそっと手を伸ばして、肩から下に伸びた髪をすくった。それを耳にかけると、露になる頬は濡れていた。
……やっぱり。
千愛希は肝心なことはなにも言わない。全く煩わしいことを求めてこない代わりに、肝心なことも言わない。
律はそのまま千愛希の体を優しく抱き締めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる