憂い視線のその先に

雪村こはる

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見据える未来、払拭できない過去

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 ベッドに千愛希を降ろすと、律は明かりを付けて調整した。白い光を少しずつ暗く落とす。ぼんやりとするが、はっきりお互いの顔がわかる明るさ。

「律? 電気、もっと暗く」

 千愛希が天井を指差す中、律はその上から覆い被さってまだ動いている口を自らの唇で塞いだ。

「んっ……」

 律は、軽く抵抗をみせる千愛希の手首をマットレスに押し当て、キスを続けた。唇を離すと、バッチリとお互いの視線が交わった。じっと数秒間見つめ合い、律は目を伏せ千愛希の首筋に顔を埋めた。

 暗いのなんてダメだよ。間違っても俺に抱かれていながら他の男と重ねるなんてことがないようにしないとね。

 そこに恋愛感情があろうとなかろうと、自分の向こう側に他の男をみることは許せない律。それが普段からそうだったのか、千愛希だからそう思うのか、律自身にも思い出せなかった。

 目が慣れてくると、お互いの体がハッキリと見える。千愛希の体はやはり驚くほどに細かった。ふっくらとした胸の下は、抉れるほどに窪んだ腹部。

「ねぇ、痩せすぎ」

「律だって……」

「俺は元々食が細いから。千愛希はまた食ってないんでしょ」

 甘いものが苦手な千愛希は、そもそも太る要素が少ないのだ。好物のガッツリ男飯も1食食べて満足すれば、残り2食は食べなくても平気だった。
 そんな世間話も交えてながら、行為は進む。

 律が触れる度、千愛希は体をしならせて甘い声を上げた。律の首に腕を回し、切なそうな声で律の名を呼んだ。
 律は時折、熱を孕んだ千愛希の視線を捕らえながら、律動を繰り返す。

「ぁっ……そこ、気持ち……」

 千愛希が快感に溺れる頃には、彼女の反応する場所を多く知った律。与えた刺激に素直に反応する千愛希の体に律も高揚感を覚えた。
 2人は夢中で体を重ねた。千愛希の背中に手を差し込めば、しっかりと浮き出た肩甲骨がひっかかる。同時に千愛希にも、ゴツゴツとした律の細い指の感覚が伝わる。
 お互いの細い体は、内部まで重なり合うかのようだった。
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