憂い視線のその先に

雪村こはる

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様々な恋愛事情

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 睦月が口を開くと、鍋田はビクリと肩を震わせた。脂汗をかいてごくりと喉を上下させた。

「鍋田。パソコンの履歴からお前の行ったことについては確認が取れている。今日もbattereから事務所に連絡があったよ」

「え?」

「損害賠償を求められているんだろ? なんでこんなことしたんだ?」

「それは……」  

「答えろ。場合によっては向こうのシステム改善を行ってもいい」

「ほ、本当ですか⁉︎」

「あぁ。そうなればお前への損害賠償も取り消されるかもしれないな。どうするつもりだ? 何億請求がくるかわかんないぞ」

 既に何千万、何億の数字を提示されているのか、鍋田はわなわなと唇を震わせ絶望に満ちた表情をしていた。
 睦月は大きくため息をつき、「battereが優秀な会社であることは俺達だってわかってる。最も警戒しているライバル会社だ。だが、エンジニアの腕はうちの方が上だよ。ここには大崎社長も千愛希もいる。そんな引き抜きが上手くいくと思ったか?」と言った。

「だ、だってここにいたって出世は望めないじゃないですか……」

「やっぱりそこか。ここは実力社会だからな。ただ、出世したいだけならよそに行っても同じだよ」

「どういう意味ですか?」

「結局制作会社っていうのは常にユーザーのニーズに合わせてマーケティングを考えていかなきゃいけない。そこに対応できない社員はどこでもそのレベルだ。今回battereで高いポストが与えられたとしても、優秀な者が出てくれば引きずり降ろされるのは目に見えている。どこもそういう競争社会だ」

「……曽根さんにはわかんないんすよ。あなたも土浦さんも天才ですからね」

 鍋田は悔しそうに顔を歪めて言った。睦月は言われ慣れてきた『天才』という言葉にまたかと呆れた顔をした。
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