憂い視線のその先に

雪村こはる

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変化の理由

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 駐車場までは門扉をくぐって左に曲がり、真っ直ぐ10mほど進んだところにある。家自体が大きいため、駐車場までも少し距離があった。

 門扉へ続く石畳の上を2人揃って歩きながら、先に言葉を発したのは千愛希だった。

「今日はありがとうね。おばあちゃんにも猫にも会えて楽しかった」

「うん……」

 足元を確認しながら微笑む千愛希だったが、律はふと思う。

 なんでおばあちゃんと猫のことしか出てこないんだろう。まどかさんに会えたってあんなにも玄関ではしゃいでたのに……。今、まどかさんに会えなかったことにも残念がる様子はないし……このところなんかおかしい。

 律はやはりこの前感じた違和感は勘違いじゃなかったと確信した。千愛希の中で、まどかの存在が変わりつつある。まるで、まどかを避けているみたいだと思った。

「あ、千愛希ちゃんもう帰るの?」

 門扉をくぐった先に、まどかの姿があった。動きやすそうなパンツとスニーカー。先程までのフェミニンな装いとは違った。
 そういえば、周が3人で散歩に行くと言っていたっけ、と律と千愛希は思う。

 妃茉莉を呼びに行った周を一足先に外で待っていたまどか。それだってこれ以上律と千愛希を邪魔しないようにという配慮からだったが、尽く行動が裏目に出る。

「まどかさん! 今日はありがとうございました!」

「ありがとうって、何にもしてないよ。それよりごめんね。せっかく2人だけの時間だったのに、邪魔したみたいになっちゃって」

 まどかの頭の中には、先程の周とのやり取りが思い出されているが、千愛希にとっては嫌味のようにも聞こえた。
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