憂い視線のその先に

雪村こはる

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勘違いがいっぱい

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「睦月は……私が他の人を好きでも平気なの?」

 素直に浮かんだ疑問だった。睦月が千愛希を想うこの状況は、千愛希が律を恋焦がれるのととてもよく似ていた。

 私は律が叶わない恋愛感情を他の人に向けているだけでこんなに苦しいのに、睦月はそれでも平気なの?

 そんな気持ちで言葉にした。

「平気じゃない。平気じゃないよ……。俺を見てほしいし、欲を言えば俺だけにしてほしい。でも、今行動しなかったら何も進まないから。もし千愛希があの男のことで辛い思いをしてるなら、俺が支えたい。今できることをしなかったら、少しでも可能性があることを行動しなかったら、また後悔するから……。今はあの男のことを好きでも仕方がないってわかってる。
 でも、俺の気持ちを知ってまだ望みがあるなら、別れた後少しでも俺のことが頭を過ぎったら……チャンスがほしい。どんな形でも俺は千愛希と一緒にいたい」

 千愛希はぱっと顔を上げてじわっと涙が込み上げた。

 そうだよね……。どんな形だって律と一緒にいたい、そう思って付き合うことも了承したんだもん。今はまどかさんを見ていても、いつかその想いに終止符を打って私を見てくれる日がくるかもしれない。
 それだって私が律のことを好きだって知らなきゃ、律もいつまで経ってもまどかさんへの気持ちを払拭できないよね……。

「ありがとう……。睦月、ありがとうね」

 千愛希はそっと後ろを振り向いて、涙を滲ませたままにっこりと笑った。

「千愛希……」

 律に言わなきゃ。ずっと逃げてるわけにはいかない。律から連絡が来たってことは、『会ってこい』って誰かが言ってる気がする。

 千愛希はうん、と大きく頷いた。奇しくも千愛希の背中を押したのは睦月だった。
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