憂い視線のその先に

雪村こはる

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勘違いがいっぱい

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 ベッドに潜り込むと、無意識か律が千愛希を引き寄せた。いつの間にか起きていたのかと律の様子を伺うが、熟睡しているようで静かな寝息を立てたままだった。
 千愛希は柔らかく微笑むと、安心感に包まれて再び目を閉じた。

「いたたたたた!」

 そのはずだったのに、いくらも経たない内に体中に痛みが走った。驚いて目を見開けば、律の体温を間近に感じると共に、とても強い力で抱きしめられていることに気付く。

「いった! 痛いってば!」

 突き飛ばすようにして両手に力を込めれば、律はうっすらと目を開け、ゆっくりと二度瞬きをした。
 ぼーっとしたように「……夢だ」と呟いた律。どんな夢を見たらこんなことになるのかと眉間に皺を寄せる千愛希は、甘い気持ちを一変させせっかく寝付いたところだったのにと盛大にため息をついた。

 体が温まり、うっすら汗が滲んでいたから服を身に付けるのも億劫で裸のままベッドに潜り込んでいた千愛希。どうせ律も全裸だし、散々体を見られたし、と再度やってきた睡魔に抗うことも止めて眠りについていた。
 律に起こされたからといって一度やってきた睡魔が消えることはない。今度はふわりと優しく包み込まれたのをいい事に、その胸に顔を埋めて目を閉じた。

「まだ寝るの?」

「眠い……」

「化粧落としたんだ」

「んー」

「可愛い」

「ん?」

「化粧してない方が可愛い」

「……え?」

 可愛いを連発する律の言葉につい目を開けてしまう。綺麗だ、美人だ、と言われることは多々あっても可愛いは中々聞き慣れない。照れくささもあって、一度上げた顔をもう一度律の胸に埋めた。

「すっぴんは2人きりの時だけでいいね」

「うん……」

「俺だけに見せて」

「……うん」

 朝から甘い雰囲気に、千愛希はクラクラと目眩がする。こんなに幸せでいいんだろうか……。そんなふうに思ったりもするが、急激に律が愛しくなって、そっと体を起こすと律の唇にキスを落とした。
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