憂い視線のその先に

雪村こはる

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最恐の男

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 社員達には、あくまでも何かあった時のための証拠であること、今回の鍋田のように裏切り者を出さないための防犯であることを説明した睦月。日頃の信用もあり、社員達は言及することもなく、いつの間にかその存在にも慣れていた。

 管理者である睦月だけは、その録画映像を管理することができた。もちろんパスワードで保護されている。設置してから異常がないか時々確かめるだけだったその存在だが、睦月は本日の午前まで時間を巻き戻し、応接室の映像に切り替えた。

 そこには部屋に入ってきた千愛希の姿が映っていた。内側から鍵を閉め、台紙からストッキングを丁寧に解いた。
 真剣な面持ちの睦月は、カタカタとキーボードを叩く。得意の技術で画像の鮮明度を上げると、千愛希だけにピントを当ててズームにする。
 画面いっぱいに映し出された千愛希。鮮明度を何度も上げると、ズームにした事によりボヤけてしまった荒い画像が綺麗に映し出された。

 スカートの裾をたくし上げ、腰のあたりまで手を差し込んだ指が、スルリとストッキングを降ろす。

 睦月は尚も真剣な眼差しで、画面に顔を近付けた。好みの美しい足が、ゆっくりと引き抜かれていく。左足、右足とストッキングから離れると、千愛希はパンティラインを指でなぞって尻の形に合わせた。脱いだストッキングは一旦ソファの上に置き、新しいストッキングを取り出すと、脱ぐ時とは反対に足を入れた。
 少しずつ上に引き上げ、股に食い込まないよう調整する。腰まで上がると、伝線がないか両足を確認し、スカートの裾を降ろした。

 目に焼き付けるようにして目を見開く睦月。暫くしてドアを開け、顔を出した睦月自身が映りこんだ。

「画素数が足りないか……もう少し弄るか」

 ポツリと真面目な口調でそう言う姿は、他人からは真剣に仕事と向き合っているように見えるだろう。
 睦月は、その部分だけを切り取って保存すると、後で更に修正をかけようと一旦映像を閉じた。

 より鮮明な映像にするにはコントラストも変えなきゃな、と思いつつそのためには早く仕事を終わらせねばと一層仕事にやる気をだすのだった。
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