憂い視線のその先に

雪村こはる

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最恐の男

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 千愛希はビッシリと黒い文字で埋まったスケジュール帳をそっと閉じた。

「以上ですね。とりあえず明日の午前中はゆっくりできるかと」

「そうだな。お疲れ様、もう上がっていいよ」

 千愛希と共にスケジュールを確認した大崎は軽く頷くと、睦月より承ったデータ共有の件も目を通さなくてはとパソコン画面に視線を移した。
 千愛希が帰社するやいなや、伝言を受けたが他の仕事が滞っていて結局終業時間を過ぎてからになってしまったのである。

「社長ももう終わりますか?」

「ああ。これだけ確認したら俺も帰るよ。明日は他社にも行かなきゃだしな。気を使うだろうから今日は早めに帰って寝ることにする」

「わかりました。それでは私はお先に失礼します」

「ああ、お疲れ」

 手をヒラヒラとさせ、千愛希の背中を見送る大崎。睦月と千愛希のやり取りなど知る由もない大崎は、残りの仕事を片付けるべくすぐに千愛希から視線を背けた。

 千愛希はいつも通りタイムカードを切って会社を出た。バッグに入れっぱなしだったスマートフォンを取り出すと、連絡を確認する。仕事の連絡も多いため、バイブレーションが作動すれば、すぐに確認するのが癖になっている。
 仕事中にもプライベートの連絡以外は全て返信、または折り返し電話をかけている。プライベートのものに関しては目を通すだけ通して返信は仕事が終わった後に行っていた。

 他に仕事の連絡がないのがわかると、既読マークを付けたままになっていた【守屋律】とのトーク画面を開く。

『お疲れ様。今日は珍しく定時上がり。千愛希の方が遅いかな? 終わったら連絡して』

 可愛くも甘くもない文章が並んでいるが、それでも千愛希はとろけそうなほど甘い気分になった。
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