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友人の悩み
【8】
しおりを挟む「……不倫してるかどうかは確認したわけじゃないんですよね?」
暫くじっと一点を見つめて何かを考えている様子の律くんは、そう口にした。
「うん。お店以外で会ってるところを見たのはその日だけだし、電話で確認したら怒られちゃったし……」
「うーん。どうでしょうかね。でも、本当に不倫なんてしてたらそんなに白昼堂々と二人で歩いたりしなくないですか?」
「そう……かな?」
「そうでしょ。もし俺がまどかさんと不倫するなら、絶対に周の目の届かないところでもっと上手にするよ」
「え!?」
律くんがさらっとおかしなことをいうものだから、私は声を裏返らせながら驚くはめになった。
そんな私を見て律くんはククッと笑いながら、「だって周にバレたらとんでもないことになっちゃうでしょ?」と言った。
「そりゃそうだよ! 間違ってもそんなこと……」
「だから、まどかさんのお友達も同じだと思いますよ。旦那さんに見つかれば面倒なことになりますし。子供だって普段預けて出掛けているわけでしょ?
親権とられたっておかしくないし、相手の男性だって慰謝料を払うことになる。話を聞いてる限り、そんなこともわからず間違いを侵すような人達には思えないし……」
律くんは、私から聞いた話だけで冷静に分析している。
「じゃ、じゃあ……不倫はしてないってことで……」
「だと思います。そう考えると、なぜまどかさんに相談しないか、ですよね」
「うん……」
「女性同士のいざこざは、俺にも理解できませんけど……まどかさんだから言えないってことなのかも」
「私だから?」
律くんなら答えをくれるような気がして、身を乗り出す。
「まどかさんは新婚だし、周とも上手くいってるわけじゃないですか。その状況がおもしろくないのかも」
「え!? 茉紀は、私の幸せに嫉妬するような子じゃないよ!」
「まあ、本来はそうなのかもしれないですけど、向こうの夫婦仲がよくないとしたら? 旦那の方から離婚を切り出されている可能性だってなくもないし。逆に、旦那の方が不倫してるとか」
「えぇ!?」
……そんなことまで考えていなかった。単純にハイジさんと仲良くなった茉紀のことしか見えていなかった。
たしかに、旦那さんの方が不倫している可能性だって……。
「それなら、周にえらく愛されてるあなたに、打ち明けにくいのもわかる気はするんですよね」
「そっか……。で、でもね! 私は臣く……結城さんの浮気現場を見た時、その事だって茉紀には相談したんだよ? それなら、茉紀も私に相談してくれてもいいんじゃないかな?」
「まあ、その時とは状況が違いますからね。その時には、茉紀さん? は既婚者で、まどかさんは独身だった。結婚の経験のないまどかさんにアドバイスするような立場だったわけですから、その相談には乗るんじゃないですか?
でも、今はどうですか? 浮気や不倫とは無縁で、喧嘩だってほとんどないようなあなた達に、自分の不幸話を打ち明ける気になれますかね?」
……それはそうかもしれない。私だって、もしも茉紀が新婚夫婦で今がラブラブ絶頂期でとても幸せそうな様子だったら、雅臣の浮気のことを相談できたかわからない。
茉紀はいいよね、旦那さんに愛されて。私なんて、婚約までしてるのに浮気されて、その現場まで見るはめになったんだから! なんてやっかみを抱いたかもしれない。
そう考えると、律くんの言う線も否めない。
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