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効果覿面
【29】
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目が覚めると、私達はルームサービスを頼んで朝食兼昼食を済ます。絵画やら並べられた高級グラスやら各部屋をあちこち見て回り、スウィートルームを満喫した。
「素敵なところだったなぁ。またいつか子供が大きくなって手が離れたら来たいかも」
「うん。まどかさんが望むならいつでも連れていってあげる」
あまねくんはとことん私に甘い。そんな甘い甘い時間を満喫し、チェックアウトをしてから例のメッセージをあまねくんに見せた。
せっかくのスウィートルームでの時間を無駄にしたくなかったからだ。
「え? この人頭大丈夫? 旦那さんのご迷惑にならないようにって既に存在自体が迷惑なんだけど」
とてもご立腹です。
明るい空の下、私達は最寄りの駅まで歩く。その間、ずっと顔をしかめて私のスマホとにらめっこしている。
その内に彼の指が動いて、スピードを上げる。何か文字を打っているもよう。
今までは文句を言うだけだったけれど、ついに我慢できなくなって自ら伊織くんにメッセージを送りつけるつもりなのだろう。
履歴が残るため、見るのも恐ろしいが私が返信すれば相手を喜ばせるだけだとあまねくんが言うので、私は暫し彼等のやり取りを見守ることにした。
電車の中でも新幹線の中でもひたすら私のスマホを触っているあまねくん。どうやら伊織くんからの連絡もすぐにやってくるようで、文章を読んでは怪訝そうな顔を浮かべる。
「ほんっとに腹立つなぁ……俺、コイツ嫌い」
顔を歪めてあまねくんはそう言う。ようやく返された私のスマホ。トーク画面には数々のやり取りの痕跡。窓側に座るあまねくんは、不機嫌そのものの顔で肘掛けに頬杖をつきながら、窓から外を眺めている。
一度躊躇したものの、気になってトーク画面に目線を落とす。
〔夫の守屋周です。昨日は、食事会へのお誘いありがとうございました。ですが、妻はあの女性からの言葉に傷付いています。今後、あなたとは友人としてでもお付き合いをする気はありません。どうか、二度と連絡してこられませんよう、お願い申し上げます〕
文章は丁寧だけれど、棘があるのは間違いない。
〔こちらこそ遠くからお越しくださってありがとうございました。奥様へのご無礼は、私も反省し、近衛にも厳しく指導致しました。
旦那様にも不愉快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。しかし、私と連絡を取りたくないという意向があるのでしたら、直接まどかさんからの言葉をいただきたいので、一度会ってお話をしたいと考えています〕
〔妻は精神的にも疲弊していますし、あなたと会うつもりはないと言っています。こちらとしてもあなたと会わせるわけにはいきません。どうか、理解のほどを宜しくお願いいたします〕
〔申し上げにくいのですが、私と奥様との関係に旦那様が口を挟むというのはいかがなものかと思います。
大人同士のやり取りですので、まずはまどかさん本人から連絡をいただけないでしょうか〕
〔その妻が、あなたとは連絡を取りたくないと言っているため、私がこうして連絡をしているのです。妻は妊娠中ですし、心身共に負担はかけたくありません。
こうして遠出をすることも、他人に罵声を浴びせられることも負担になります。今後もこのような事があると困るので連絡を控えていただきたいと思っております〕
〔それにつきましてはご安心下さい。まどかさんと会う際には、今後は私の方が静岡に出向きます。他人を含めての食事会は控えさせていただきます。旦那様にも日時と会場はお知らせさせていただきますので、ご安心下さい〕
そのやり取りだけでもまだ半分。私は目眩がしそうだった。何でこの人こんなに諦めが悪いんだろうか……。
さすがにこれではあまねくんの機嫌が悪くなっても仕方がない。向こうもまるきり喧嘩腰なのが伝わってくるのだ。あまねくんに対してこういうこと言うのもやめてほしいなぁ……。
私は、怒りというよりも半ば呆れてしまう。気を取り直して、あまねくんと伊織くんのやり取りを目で追った。
「素敵なところだったなぁ。またいつか子供が大きくなって手が離れたら来たいかも」
「うん。まどかさんが望むならいつでも連れていってあげる」
あまねくんはとことん私に甘い。そんな甘い甘い時間を満喫し、チェックアウトをしてから例のメッセージをあまねくんに見せた。
せっかくのスウィートルームでの時間を無駄にしたくなかったからだ。
「え? この人頭大丈夫? 旦那さんのご迷惑にならないようにって既に存在自体が迷惑なんだけど」
とてもご立腹です。
明るい空の下、私達は最寄りの駅まで歩く。その間、ずっと顔をしかめて私のスマホとにらめっこしている。
その内に彼の指が動いて、スピードを上げる。何か文字を打っているもよう。
今までは文句を言うだけだったけれど、ついに我慢できなくなって自ら伊織くんにメッセージを送りつけるつもりなのだろう。
履歴が残るため、見るのも恐ろしいが私が返信すれば相手を喜ばせるだけだとあまねくんが言うので、私は暫し彼等のやり取りを見守ることにした。
電車の中でも新幹線の中でもひたすら私のスマホを触っているあまねくん。どうやら伊織くんからの連絡もすぐにやってくるようで、文章を読んでは怪訝そうな顔を浮かべる。
「ほんっとに腹立つなぁ……俺、コイツ嫌い」
顔を歪めてあまねくんはそう言う。ようやく返された私のスマホ。トーク画面には数々のやり取りの痕跡。窓側に座るあまねくんは、不機嫌そのものの顔で肘掛けに頬杖をつきながら、窓から外を眺めている。
一度躊躇したものの、気になってトーク画面に目線を落とす。
〔夫の守屋周です。昨日は、食事会へのお誘いありがとうございました。ですが、妻はあの女性からの言葉に傷付いています。今後、あなたとは友人としてでもお付き合いをする気はありません。どうか、二度と連絡してこられませんよう、お願い申し上げます〕
文章は丁寧だけれど、棘があるのは間違いない。
〔こちらこそ遠くからお越しくださってありがとうございました。奥様へのご無礼は、私も反省し、近衛にも厳しく指導致しました。
旦那様にも不愉快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。しかし、私と連絡を取りたくないという意向があるのでしたら、直接まどかさんからの言葉をいただきたいので、一度会ってお話をしたいと考えています〕
〔妻は精神的にも疲弊していますし、あなたと会うつもりはないと言っています。こちらとしてもあなたと会わせるわけにはいきません。どうか、理解のほどを宜しくお願いいたします〕
〔申し上げにくいのですが、私と奥様との関係に旦那様が口を挟むというのはいかがなものかと思います。
大人同士のやり取りですので、まずはまどかさん本人から連絡をいただけないでしょうか〕
〔その妻が、あなたとは連絡を取りたくないと言っているため、私がこうして連絡をしているのです。妻は妊娠中ですし、心身共に負担はかけたくありません。
こうして遠出をすることも、他人に罵声を浴びせられることも負担になります。今後もこのような事があると困るので連絡を控えていただきたいと思っております〕
〔それにつきましてはご安心下さい。まどかさんと会う際には、今後は私の方が静岡に出向きます。他人を含めての食事会は控えさせていただきます。旦那様にも日時と会場はお知らせさせていただきますので、ご安心下さい〕
そのやり取りだけでもまだ半分。私は目眩がしそうだった。何でこの人こんなに諦めが悪いんだろうか……。
さすがにこれではあまねくんの機嫌が悪くなっても仕方がない。向こうもまるきり喧嘩腰なのが伝わってくるのだ。あまねくんに対してこういうこと言うのもやめてほしいなぁ……。
私は、怒りというよりも半ば呆れてしまう。気を取り直して、あまねくんと伊織くんのやり取りを目で追った。
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