【R18】美人過ぎる○○は今日も旦那様からの寵愛を受ける

雪村こはる

文字の大きさ
115 / 208
効果覿面

【33】

しおりを挟む
「旦那さんといたら、まどかさんはずっと幸せですか?」

「うん。とっても。だから、私の幸せを願ってくれるなら主人と穏やかに暮らせるようにしてほしい」

「……わかりました。で、でも……たまにはこうやって声を聞きたいです」

「伊織くん、それも困るんだ。文章のやり取りも、電話のやり取りも私と主人にとっては困ることなの。だからもうこれっきりにして。私も連絡先消すから」

「まっ……待ってください! これっきりなんて言わないで下さい! 俺、本当にまどかさんの事が好きなんです」

 ああ、遂に言われてしまった……。執着心から勘づいてはいたけれど……。
 もしも私があまねくんと出会っていなくて、雅臣は議員の娘さんと結婚話が進んでいて、私は呆気なく振られていて。雅臣のお父さんの事務所も脱税の事実が見付からず、飄々と生きていて……それを指を咥えて見ていることしかできない。
 そんな空っぽな人生を今送っていたのだとしたら……優しさに飢えた私は伊織くんに惹かれただろうか。

 一瞬、違うルートの人生が頭を過ったが、私の人生は今のルートに進んだ。あまねくんに出会い、救われ、幸せを知った。
 彼に出会ってしまったら、どんな男性だって目に入らない。あまねくんよりも先に伊織くんに出会っていたとしても、私はゆくゆくあまねくんを選んだのだと思う。

「伊織くんがそう思ってくれる以上に、私は主人のことが好きだよ。だって、伊織くんは24歳の時の私で止まってるでしょ? あれから10年近くも経って、私だって変わったの。伊織くんが好きでいてくれた時の私じゃないよ」

「そんなことないです! 優しい笑顔も、話し方も、美しさも全然変わらない! 多くは望みませんから……こうして少しだけ声が聞きたい……」

「私は単なる主婦で、母親だから。ごめんね」

「嫌です! 月に1回だっていい! また会いたい……」

「もう会えないんだって。わかってよ。伊織くんには、伊織くんのことだけ見てくれる人と幸せになって欲しいって思う」

「そんな人、いりません! だって、もう諦めてたのに……二度と会うこともないと思ってたまどかさんと再会できたのに……もう一度会えたってことは……」

「運命じゃないよ。私の運命の人はあまねくんなの。伊織くんじゃない。これ以上はもう話はできないよ。わかってくれるでしょ?」

「……諦めたくありません」

 私は段々と重たくなる頭をベッドに伏せながら、深い深い溜め息をついた。
 私の言葉なら納得するんじゃなかったっけ。

「……しつこい人は好きじゃない」

「え?」

「粘って手に入るものと、入らないものがあるの」

「……わかってます」

「じゃあ、納得して。もうこれで終わり。さようなら」

 私はそう言って一方的に電話を切った。こういうことははっきりさせておいた方がいい。雅臣のように刺しにくる人間もいると知ったから。
 変な同情は相手のためにはならない。私は嫌な人間かもしれない。でも、あまねくんとの幸せは誰にも邪魔されたくない。

 私は、伊織くんの連絡先をブロックした。トーク画面は、いつか何かの証拠になるかもしれないため、仕方なくとっておくことにした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

専属秘書は極上CEOに囚われる

有允ひろみ
恋愛
手痛い失恋をきっかけに勤めていた会社を辞めた佳乃。彼女は、すべてをリセットするために訪れた南国の島で、名も知らぬ相手と熱く濃密な一夜を経験する。しかし、どれほど強く惹かれ合っていても、行きずりの恋に未来などない――。佳乃は翌朝、黙って彼の前から姿を消した。それから五年、新たな会社で社長秘書として働く佳乃の前に、代表取締役CEOとしてあの夜の彼・敦彦が現れて!? 「今度こそ、絶対に逃さない」戸惑い距離を取ろうとする佳乃を色気たっぷりに追い詰め、彼は忘れたはずの恋心を強引に暴き出し……。執着系イケメンと生真面目OLの、過去からはじまる怒涛の溺愛ラブストーリー!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...