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効果覿面
【33】
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「旦那さんといたら、まどかさんはずっと幸せですか?」
「うん。とっても。だから、私の幸せを願ってくれるなら主人と穏やかに暮らせるようにしてほしい」
「……わかりました。で、でも……たまにはこうやって声を聞きたいです」
「伊織くん、それも困るんだ。文章のやり取りも、電話のやり取りも私と主人にとっては困ることなの。だからもうこれっきりにして。私も連絡先消すから」
「まっ……待ってください! これっきりなんて言わないで下さい! 俺、本当にまどかさんの事が好きなんです」
ああ、遂に言われてしまった……。執着心から勘づいてはいたけれど……。
もしも私があまねくんと出会っていなくて、雅臣は議員の娘さんと結婚話が進んでいて、私は呆気なく振られていて。雅臣のお父さんの事務所も脱税の事実が見付からず、飄々と生きていて……それを指を咥えて見ていることしかできない。
そんな空っぽな人生を今送っていたのだとしたら……優しさに飢えた私は伊織くんに惹かれただろうか。
一瞬、違うルートの人生が頭を過ったが、私の人生は今のルートに進んだ。あまねくんに出会い、救われ、幸せを知った。
彼に出会ってしまったら、どんな男性だって目に入らない。あまねくんよりも先に伊織くんに出会っていたとしても、私はゆくゆくあまねくんを選んだのだと思う。
「伊織くんがそう思ってくれる以上に、私は主人のことが好きだよ。だって、伊織くんは24歳の時の私で止まってるでしょ? あれから10年近くも経って、私だって変わったの。伊織くんが好きでいてくれた時の私じゃないよ」
「そんなことないです! 優しい笑顔も、話し方も、美しさも全然変わらない! 多くは望みませんから……こうして少しだけ声が聞きたい……」
「私は単なる主婦で、母親だから。ごめんね」
「嫌です! 月に1回だっていい! また会いたい……」
「もう会えないんだって。わかってよ。伊織くんには、伊織くんのことだけ見てくれる人と幸せになって欲しいって思う」
「そんな人、いりません! だって、もう諦めてたのに……二度と会うこともないと思ってたまどかさんと再会できたのに……もう一度会えたってことは……」
「運命じゃないよ。私の運命の人はあまねくんなの。伊織くんじゃない。これ以上はもう話はできないよ。わかってくれるでしょ?」
「……諦めたくありません」
私は段々と重たくなる頭をベッドに伏せながら、深い深い溜め息をついた。
私の言葉なら納得するんじゃなかったっけ。
「……しつこい人は好きじゃない」
「え?」
「粘って手に入るものと、入らないものがあるの」
「……わかってます」
「じゃあ、納得して。もうこれで終わり。さようなら」
私はそう言って一方的に電話を切った。こういうことははっきりさせておいた方がいい。雅臣のように刺しにくる人間もいると知ったから。
変な同情は相手のためにはならない。私は嫌な人間かもしれない。でも、あまねくんとの幸せは誰にも邪魔されたくない。
私は、伊織くんの連絡先をブロックした。トーク画面は、いつか何かの証拠になるかもしれないため、仕方なくとっておくことにした。
「うん。とっても。だから、私の幸せを願ってくれるなら主人と穏やかに暮らせるようにしてほしい」
「……わかりました。で、でも……たまにはこうやって声を聞きたいです」
「伊織くん、それも困るんだ。文章のやり取りも、電話のやり取りも私と主人にとっては困ることなの。だからもうこれっきりにして。私も連絡先消すから」
「まっ……待ってください! これっきりなんて言わないで下さい! 俺、本当にまどかさんの事が好きなんです」
ああ、遂に言われてしまった……。執着心から勘づいてはいたけれど……。
もしも私があまねくんと出会っていなくて、雅臣は議員の娘さんと結婚話が進んでいて、私は呆気なく振られていて。雅臣のお父さんの事務所も脱税の事実が見付からず、飄々と生きていて……それを指を咥えて見ていることしかできない。
そんな空っぽな人生を今送っていたのだとしたら……優しさに飢えた私は伊織くんに惹かれただろうか。
一瞬、違うルートの人生が頭を過ったが、私の人生は今のルートに進んだ。あまねくんに出会い、救われ、幸せを知った。
彼に出会ってしまったら、どんな男性だって目に入らない。あまねくんよりも先に伊織くんに出会っていたとしても、私はゆくゆくあまねくんを選んだのだと思う。
「伊織くんがそう思ってくれる以上に、私は主人のことが好きだよ。だって、伊織くんは24歳の時の私で止まってるでしょ? あれから10年近くも経って、私だって変わったの。伊織くんが好きでいてくれた時の私じゃないよ」
「そんなことないです! 優しい笑顔も、話し方も、美しさも全然変わらない! 多くは望みませんから……こうして少しだけ声が聞きたい……」
「私は単なる主婦で、母親だから。ごめんね」
「嫌です! 月に1回だっていい! また会いたい……」
「もう会えないんだって。わかってよ。伊織くんには、伊織くんのことだけ見てくれる人と幸せになって欲しいって思う」
「そんな人、いりません! だって、もう諦めてたのに……二度と会うこともないと思ってたまどかさんと再会できたのに……もう一度会えたってことは……」
「運命じゃないよ。私の運命の人はあまねくんなの。伊織くんじゃない。これ以上はもう話はできないよ。わかってくれるでしょ?」
「……諦めたくありません」
私は段々と重たくなる頭をベッドに伏せながら、深い深い溜め息をついた。
私の言葉なら納得するんじゃなかったっけ。
「……しつこい人は好きじゃない」
「え?」
「粘って手に入るものと、入らないものがあるの」
「……わかってます」
「じゃあ、納得して。もうこれで終わり。さようなら」
私はそう言って一方的に電話を切った。こういうことははっきりさせておいた方がいい。雅臣のように刺しにくる人間もいると知ったから。
変な同情は相手のためにはならない。私は嫌な人間かもしれない。でも、あまねくんとの幸せは誰にも邪魔されたくない。
私は、伊織くんの連絡先をブロックした。トーク画面は、いつか何かの証拠になるかもしれないため、仕方なくとっておくことにした。
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