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風雲児
【8】
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丁寧に私用のノンアルコールカクテルを用意してあり、皆でシャンパングラスを掲げて乾杯した。
なんだろう……。伊織くんの時とは違う、この上品なお食事会は。気を遣って、あの時とは別の意味で硬くなる。
「本日はお越しいただきありがとうございます。中途半端な時間となってしまいましたが楽しんでいって下さい」
そう言って社長さんは爽やかな笑顔を向けた。同世代で年商何十億も売り上げているやり手だなんて思うと、自分がなんともちっぽけな存在に見えた。
しかし、そんな私を卑屈にさせない程、社長さんも奥さんも人の良さそうな笑顔を振り撒く。本来、交流会とはこういうものなのかもしれない。
「まどかさんも今日は来て下さってありがとうございます。お会いできて光栄です」
不意に社長さんに話かけられ、動揺する。慌てて「こちらこそこんな素敵なお家に招待していただきありがとうございます」と頭を下げた。
「土浦には、昔からまどかさんの素晴らしさについて聞かされていましてね」
社長さんはおかしそうに笑いながらそんな話をする。土浦とは千愛希さんのことだ。苗字で呼ばれるとあまりピンとこない。けれど、そんなことよりも私は顔が熱くなるのを感じてなんと答えていいのか戸惑う。
「ぜ、全然素晴らしくなんてありませんよ。千愛希さんが応援してくれているのは嬉しいんですが……」
「いやいや、俺も覚えていますよ。なんたって同世代ですからね。当時は社内でもまどかさんの話題で持ちきりでした」
「そ、そうですか……」
こんなに話題にされては、またあまねくんが機嫌を損ねかねない。隣を横目で見ると、じっと目を細めているあまねくん。
やっぱり……。早くこの話切り替わらないかなぁなんて逃げ道を探していると、社長さんが「はい。周さんの話も聞いていますよ。とても素敵な夫婦なんですね。お似合いで羨ましいです」とあまねくんの方を見ながらそう言った。
あまねくんは、きょとんと目を丸くした後ふっと柔らかく微笑んで「ありがとうございます。そう言っていただけると、俺も嬉しいです」と言った。
……この人、有能だ。私は早くも高いコミュニケーション能力を見せつけられたような気がした。
なんだろう……。伊織くんの時とは違う、この上品なお食事会は。気を遣って、あの時とは別の意味で硬くなる。
「本日はお越しいただきありがとうございます。中途半端な時間となってしまいましたが楽しんでいって下さい」
そう言って社長さんは爽やかな笑顔を向けた。同世代で年商何十億も売り上げているやり手だなんて思うと、自分がなんともちっぽけな存在に見えた。
しかし、そんな私を卑屈にさせない程、社長さんも奥さんも人の良さそうな笑顔を振り撒く。本来、交流会とはこういうものなのかもしれない。
「まどかさんも今日は来て下さってありがとうございます。お会いできて光栄です」
不意に社長さんに話かけられ、動揺する。慌てて「こちらこそこんな素敵なお家に招待していただきありがとうございます」と頭を下げた。
「土浦には、昔からまどかさんの素晴らしさについて聞かされていましてね」
社長さんはおかしそうに笑いながらそんな話をする。土浦とは千愛希さんのことだ。苗字で呼ばれるとあまりピンとこない。けれど、そんなことよりも私は顔が熱くなるのを感じてなんと答えていいのか戸惑う。
「ぜ、全然素晴らしくなんてありませんよ。千愛希さんが応援してくれているのは嬉しいんですが……」
「いやいや、俺も覚えていますよ。なんたって同世代ですからね。当時は社内でもまどかさんの話題で持ちきりでした」
「そ、そうですか……」
こんなに話題にされては、またあまねくんが機嫌を損ねかねない。隣を横目で見ると、じっと目を細めているあまねくん。
やっぱり……。早くこの話切り替わらないかなぁなんて逃げ道を探していると、社長さんが「はい。周さんの話も聞いていますよ。とても素敵な夫婦なんですね。お似合いで羨ましいです」とあまねくんの方を見ながらそう言った。
あまねくんは、きょとんと目を丸くした後ふっと柔らかく微笑んで「ありがとうございます。そう言っていただけると、俺も嬉しいです」と言った。
……この人、有能だ。私は早くも高いコミュニケーション能力を見せつけられたような気がした。
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