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風雲児
【18】
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翌日の土曜日、私はあまねくんと産科へ定期検診に来ていた。
赤ちゃんの体勢によっては今日、性別がわかる。早く知りたいような知りたくないような。
旦那さんは女の子だと信じて疑わないため、どちらでもよさそうだけど。
名前を呼ばれるまで、気持ちは落ち着かない。いつも一緒に検診に来てくれるあまねくん。先生からも赤ちゃんに対して前向きでいいパパですねと好感をもたれている。
それでなくてもモデル体型で美形のあまねくん。どこに行っても女性達が熱い眼差しを向けてくる。そんな場面も見慣れてきている私は、それなりに守屋周の妻をやれているらしい。
「緊張してきた……」
「ん? でも、赤ちゃん元気に動いてるでしょ?」
「そうだけど、性別。今日わかるかもしれないから……」
「ああ、だから女の子だってば」
「またそんなこと……」
やっぱりそんなことを言う。あまねくんには、このドキドキする気持ちがわからないのだろうか。
「本当だよ。絶対女の子」
お母さん向けに置かれていた雑誌を開きながら、あまねくんはふっと微笑む。何だか冗談で言っているようにも見えず、かといって理想だけでそんなことを言っているようにも見えなかった。なぜかいつも自信満々に「女の子だよ」と言い張るあまねくん。
「……なんでそう思うの?」
「んー……? んーとね、会いに来てくれたから」
「は?」
あまねくんのおかしな発言に、私は低くおじさんのような声が漏れた。
「はは、そんな顔しなくても。……夢でね。3ヶ月くらい前だったかな。家族写真を眺めてる夢。俺とまどかさんと、女の子。あと、男の子」
「はぁ……」
「男の子の方が小さかったから多分2人めは男の子だね」
「それ、夢の話だよね?」
「うん。夢の話。でも、まどかさんに似たすっごく可愛い女の子だったよ」
夢の話だってわかってるのに、そんなことを言われたら気になって「……男の子はどっちに似てる?」と聞いてみた。
「んー……、んー? 俺かなぁ? いや、でもまどかさんにも似てるよ」
「えー……ちっちゃいあまねくんがよかった」
「さすがに生き写しみたいのは無理でしょ。でも、男の子も可愛いよ。よかったね。男の子も女の子も両方欲しいって言ってたじゃん」
「言ったよ。言ったけどさ……あまねくん、夢の話だよね?」
「そうだよ。だから女の子だって」
堂々巡りできりがない。平然とした顔で彼が言うものだから、私の方がおかしなことを言っているのかと錯覚しそうになる。
夢と現実は違う。わかっている筈なのに、何故か自信満々の旦那様が解せない。
赤ちゃんの体勢によっては今日、性別がわかる。早く知りたいような知りたくないような。
旦那さんは女の子だと信じて疑わないため、どちらでもよさそうだけど。
名前を呼ばれるまで、気持ちは落ち着かない。いつも一緒に検診に来てくれるあまねくん。先生からも赤ちゃんに対して前向きでいいパパですねと好感をもたれている。
それでなくてもモデル体型で美形のあまねくん。どこに行っても女性達が熱い眼差しを向けてくる。そんな場面も見慣れてきている私は、それなりに守屋周の妻をやれているらしい。
「緊張してきた……」
「ん? でも、赤ちゃん元気に動いてるでしょ?」
「そうだけど、性別。今日わかるかもしれないから……」
「ああ、だから女の子だってば」
「またそんなこと……」
やっぱりそんなことを言う。あまねくんには、このドキドキする気持ちがわからないのだろうか。
「本当だよ。絶対女の子」
お母さん向けに置かれていた雑誌を開きながら、あまねくんはふっと微笑む。何だか冗談で言っているようにも見えず、かといって理想だけでそんなことを言っているようにも見えなかった。なぜかいつも自信満々に「女の子だよ」と言い張るあまねくん。
「……なんでそう思うの?」
「んー……? んーとね、会いに来てくれたから」
「は?」
あまねくんのおかしな発言に、私は低くおじさんのような声が漏れた。
「はは、そんな顔しなくても。……夢でね。3ヶ月くらい前だったかな。家族写真を眺めてる夢。俺とまどかさんと、女の子。あと、男の子」
「はぁ……」
「男の子の方が小さかったから多分2人めは男の子だね」
「それ、夢の話だよね?」
「うん。夢の話。でも、まどかさんに似たすっごく可愛い女の子だったよ」
夢の話だってわかってるのに、そんなことを言われたら気になって「……男の子はどっちに似てる?」と聞いてみた。
「んー……、んー? 俺かなぁ? いや、でもまどかさんにも似てるよ」
「えー……ちっちゃいあまねくんがよかった」
「さすがに生き写しみたいのは無理でしょ。でも、男の子も可愛いよ。よかったね。男の子も女の子も両方欲しいって言ってたじゃん」
「言ったよ。言ったけどさ……あまねくん、夢の話だよね?」
「そうだよ。だから女の子だって」
堂々巡りできりがない。平然とした顔で彼が言うものだから、私の方がおかしなことを言っているのかと錯覚しそうになる。
夢と現実は違う。わかっている筈なのに、何故か自信満々の旦那様が解せない。
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