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それぞれの門出
【2】
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麗夢はきゃっきゃと笑っているが、小学生のテストで麗を書かなきゃいけないかと思うとスタートダッシュ遅れるなぁなんて考えた。
「子供が産まれたらあんたも忙しくなるねぇ。てか、産まれる前に判決決まってよかったね。諸々で5年だって?」
「うん。殺人未遂が一番大きいのは当たり前なんだけど、元彼っていうのもあったし、初犯っていうのもあって住居侵入も強制わいせつも大して懲役つかなかったんだ」
「へぇ……10年くらいぶち込んでおいてくれればいいのに」
「まあ……でも、同情するわけじゃないけど5年だって出てくれば39歳だしさ、結婚もしないで子供もいないわけだから、なんかそれで人生半分終わっちゃうって考えたらそれでもいいかなって思えたよ」
私は茉紀からメモを返してもらいながら話を進めた。自分の分の飲み物を用意しながら、去年の今頃を思い出す。
雅臣と別れたのは12月のことで、この時期には既にあまねくんとの結婚を考えていた。
あのまま雅臣がおとなしくしていれば、議員の娘との結婚は叶わなくとも、他の女性と普通に結婚して子供ができたかもしれない。
自ら選択して私との結婚をやめたのだから、私やあまねくんに執着なんてせずに残された人生を自由に生きればよかったのだ。お父さんやお兄さんからようやく解放されたのに、自分で刑務所に行くだなんて、もったいない人生だと思う。
「うーん、確かに20代、30代の貴重な時間だもんね。その4分の1を刑務所で過ごすって思うとまあ……いや、不憫なんて絶対言わない!」
一瞬同情しかけた様子だったのに、すぐに思い直したように茉紀はそう言う。麦茶に手を伸ばそうとする麗夢の口元までコップを持っていき、飲ませてやっている。
光輝はりんごジュースを持って面白くなさそうにしているため、何か暇潰しのDVDでもあったかなぁなんて思うが特に何もない。
機械に強い千愛希さんが、動画投稿サイトとテレビを繋げてくれたため、リビングのテレビで動画が見れるようになっていた。
私は、光輝がハマっているという戦隊ものの、猛獣戦隊 キバレンジャーの動画を流してやった。光輝はすぐにテレビの前に座り込み、夢中で画面に目を向けた。
「まあ、臣くんのことはもういいんだ。どうせもう危害加えるったって無理だし」
彼はすっかり全ての罪を認めて、裁判はすんなりと幕を閉じた。あんなに悪態をついていたものの、下半身が動かなくなり、行動が制限されるようになったからか生きる気力もないように見えた。全てにおいてどうでも良くなってしまったのかもしれない。
自業自得だけれど、彼がこちらに危害を加える気がない以上は犯してしまった罪を償ってくれさえすれば、私とあまねくんはただ幸せになるだけでいいのだ。
「まあね。過去に囚われて生きるのも面白くないしね。私も今後の人生楽しく生きるわ」
「茉紀の方も終わったんでしょ?」
「うん。あの坂部さんって人、ヤバイわ。敏腕弁護士だって聞いてたけど、相手の女の畳み掛け方といい……うん、気迫があった」
「へぇ……茉紀が言うくらいじゃ相当だね」
「うん。その人もシングルマザーでさ、色々話聞いてもらってかなりすっきりしちゃったよ。最初からこうしとけばよかったって思えてならないわ」
「まあ、何事もタイミングだよ。私があまねくんと出会ってなければ律くんも坂部さんも紹介できなかったわけだし」
茉紀が勝手に全然知らない弁護士さんに頼って、離婚裁判に負けていればまた人生は変わってしまっただろう。
「そうだね。どっちみち仕事復帰してなきゃ親権とるのも難しかったし……今でよかったか」
茉紀は、コーヒーの入った黄色のマグカップを持ってふふっと笑った。
「子供が産まれたらあんたも忙しくなるねぇ。てか、産まれる前に判決決まってよかったね。諸々で5年だって?」
「うん。殺人未遂が一番大きいのは当たり前なんだけど、元彼っていうのもあったし、初犯っていうのもあって住居侵入も強制わいせつも大して懲役つかなかったんだ」
「へぇ……10年くらいぶち込んでおいてくれればいいのに」
「まあ……でも、同情するわけじゃないけど5年だって出てくれば39歳だしさ、結婚もしないで子供もいないわけだから、なんかそれで人生半分終わっちゃうって考えたらそれでもいいかなって思えたよ」
私は茉紀からメモを返してもらいながら話を進めた。自分の分の飲み物を用意しながら、去年の今頃を思い出す。
雅臣と別れたのは12月のことで、この時期には既にあまねくんとの結婚を考えていた。
あのまま雅臣がおとなしくしていれば、議員の娘との結婚は叶わなくとも、他の女性と普通に結婚して子供ができたかもしれない。
自ら選択して私との結婚をやめたのだから、私やあまねくんに執着なんてせずに残された人生を自由に生きればよかったのだ。お父さんやお兄さんからようやく解放されたのに、自分で刑務所に行くだなんて、もったいない人生だと思う。
「うーん、確かに20代、30代の貴重な時間だもんね。その4分の1を刑務所で過ごすって思うとまあ……いや、不憫なんて絶対言わない!」
一瞬同情しかけた様子だったのに、すぐに思い直したように茉紀はそう言う。麦茶に手を伸ばそうとする麗夢の口元までコップを持っていき、飲ませてやっている。
光輝はりんごジュースを持って面白くなさそうにしているため、何か暇潰しのDVDでもあったかなぁなんて思うが特に何もない。
機械に強い千愛希さんが、動画投稿サイトとテレビを繋げてくれたため、リビングのテレビで動画が見れるようになっていた。
私は、光輝がハマっているという戦隊ものの、猛獣戦隊 キバレンジャーの動画を流してやった。光輝はすぐにテレビの前に座り込み、夢中で画面に目を向けた。
「まあ、臣くんのことはもういいんだ。どうせもう危害加えるったって無理だし」
彼はすっかり全ての罪を認めて、裁判はすんなりと幕を閉じた。あんなに悪態をついていたものの、下半身が動かなくなり、行動が制限されるようになったからか生きる気力もないように見えた。全てにおいてどうでも良くなってしまったのかもしれない。
自業自得だけれど、彼がこちらに危害を加える気がない以上は犯してしまった罪を償ってくれさえすれば、私とあまねくんはただ幸せになるだけでいいのだ。
「まあね。過去に囚われて生きるのも面白くないしね。私も今後の人生楽しく生きるわ」
「茉紀の方も終わったんでしょ?」
「うん。あの坂部さんって人、ヤバイわ。敏腕弁護士だって聞いてたけど、相手の女の畳み掛け方といい……うん、気迫があった」
「へぇ……茉紀が言うくらいじゃ相当だね」
「うん。その人もシングルマザーでさ、色々話聞いてもらってかなりすっきりしちゃったよ。最初からこうしとけばよかったって思えてならないわ」
「まあ、何事もタイミングだよ。私があまねくんと出会ってなければ律くんも坂部さんも紹介できなかったわけだし」
茉紀が勝手に全然知らない弁護士さんに頼って、離婚裁判に負けていればまた人生は変わってしまっただろう。
「そうだね。どっちみち仕事復帰してなきゃ親権とるのも難しかったし……今でよかったか」
茉紀は、コーヒーの入った黄色のマグカップを持ってふふっと笑った。
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