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それぞれの門出
【37】
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ダリアさん、あまねくんの許可があり早速翌日に戸塚さんと茉紀がやってくることになった。
「戸塚さん、嫌がってなかった?」
「うん。それどころかあの後ずっと気にしててさ。光輝くんが泣いてたから」
「そうなんだ。それならよかった。茉紀が迷惑そうなら無理しなくてもって言ってたからさ」
「それは大丈夫。光輝くんに会えるの楽しみにしてるって言ってたよ」
どこかあまねくんも嬉しそうで、私もまたあの楽しい一時が過ごせるのかと思うと嬉しく思えた。
律くんとお義父さんも茉紀の離婚の件で顔は合わせているし、戸塚さんに関してもあまねくんがお世話になっている先輩ならと招待することを快諾してくれた。
守屋家はいつもダリアさんが常に綺麗に掃除しているため、いつお客さんがきても困る状態ではない。
私はもし明日戸塚さんが家に来るってなったら、慌てて掃除をしなければならないと大変だっただろうなと守屋家にお世話になったことに感謝するばかりだった。
ーー
次の日、先に到着したのは戸塚さんだった。門構えをくぐった先は広い敷地が広がっているため、お客様用の車2台など優に停められる。
奏ちゃんは仕事があると早々に東京に帰ってしまった。今日は古河先生がマンションに泊まりに来るのだと言っていた。あの2人も順調に続いているようで安心したばかりだ。
「本日はお招きいただきありがとうございます」
戸塚さんは礼儀正しく頭を下げて、守屋家の皆さんに挨拶をした。やはり爽やかで、人柄のよさそうな雰囲気が漂っている。
「まどかさんもこんにちは。出産おめでとうございます」
「ありがとうございます。今日はわざわざ来ていただいてありがとうございます。それと茉紀のこと、すみません」
「いえいえ、とんでもない。俺もまた遊ぶと約束した手前中々機会もなくてもやもやしてたんです。誘っていただけてよかったですよ」
「そう言っていただけると助かります。妃茉莉にも会ってあげてください」
そう言って、眠っている妃茉莉のもとへと案内した。
「うわぁ……可愛いですね」
「ありがとうございます。まだ小さすぎてどっちに似てるかわかんないんですけどね」
「いやあ、どちらに似ても可愛い娘さんになるでしょうね。将来が心配です」
そう言う戸塚さんに、あまねくんが「戸塚さんもそう思いますよね!? 俺も悪い虫がついたらと思うと今から心配で心配で……」と眉を下げている。
まだ産まれたばかりだけど……。
「そうだね。女の子だといつかお嫁に行っちゃうのが寂しいね」
「嫁! 絶対だめ! 妃茉莉を嫁になんてあげないよ!」
ベッド柵を力一杯握りしめて口をぎゅっと結んでいるあまねくん。毎日自分が主体で育児をしているから余計になのだろう。
「そんなこと言ってて本当に婚期逃したらどうするの? うちらが先に死んだら妃茉莉一人ぼっちだよ」
「え!? あ……そうか……で、でも先に死なないかもしれないじゃん!」
「あまねくん、何百年生きるつもりなの……」
私が顔をしかめて言えば戸塚さんはげらげら笑ってしまっている。
「よぼよぼのあまねくんの世話をおばあちゃんになった妃茉莉にさせるつもり?」
「う……そう言われちゃうとなぁ……でも、嫁にあげたくないなぁ……」
「でも守屋はその大事な娘さんを嫁にもらっちゃったわけだからね」
「そ、それは……あー……今よくわかるなぁ……お義父さんが結婚渋ったの」
戸塚さんの言葉に今度は悔しそうに顔を歪めるあまねくん。今日は一段と表情豊かです。
「わかるの? お父さん結構ひどいこと言ってたけど」
「わかるよ。俺だって妃茉莉が男のことでもめてたら許せないもんね。ましてやまどかさんは殺されそうになったわけだし……」
そんな過去の話が掘り起こされてちらりと戸塚さんを見る。視線に気付いた彼に「結婚決まった時に聞きました。大変でしたね」と言われてしまった。
「実際それくらいの年になるまではわからないじゃん。それまで育児も大変だろうし。それに妃茉莉ちゃんにも兄弟必要なんじゃないの?」
「あーはい。それはもう男の子予定なんで大丈夫なんですけど」
「え?」
いつもの如く自信満々であまねくんが言うから、戸塚さんも目を丸くしている。妃茉莉の時には夢の通り女の子だったけれど、今度もそんなに都合よくいくかどうかはわからない。
とにかく妃茉莉が産まれたばかりだというのに、もう既に第二子のことまで考えている男性陣に思わずため息が溢れた。
「戸塚さん、嫌がってなかった?」
「うん。それどころかあの後ずっと気にしててさ。光輝くんが泣いてたから」
「そうなんだ。それならよかった。茉紀が迷惑そうなら無理しなくてもって言ってたからさ」
「それは大丈夫。光輝くんに会えるの楽しみにしてるって言ってたよ」
どこかあまねくんも嬉しそうで、私もまたあの楽しい一時が過ごせるのかと思うと嬉しく思えた。
律くんとお義父さんも茉紀の離婚の件で顔は合わせているし、戸塚さんに関してもあまねくんがお世話になっている先輩ならと招待することを快諾してくれた。
守屋家はいつもダリアさんが常に綺麗に掃除しているため、いつお客さんがきても困る状態ではない。
私はもし明日戸塚さんが家に来るってなったら、慌てて掃除をしなければならないと大変だっただろうなと守屋家にお世話になったことに感謝するばかりだった。
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次の日、先に到着したのは戸塚さんだった。門構えをくぐった先は広い敷地が広がっているため、お客様用の車2台など優に停められる。
奏ちゃんは仕事があると早々に東京に帰ってしまった。今日は古河先生がマンションに泊まりに来るのだと言っていた。あの2人も順調に続いているようで安心したばかりだ。
「本日はお招きいただきありがとうございます」
戸塚さんは礼儀正しく頭を下げて、守屋家の皆さんに挨拶をした。やはり爽やかで、人柄のよさそうな雰囲気が漂っている。
「まどかさんもこんにちは。出産おめでとうございます」
「ありがとうございます。今日はわざわざ来ていただいてありがとうございます。それと茉紀のこと、すみません」
「いえいえ、とんでもない。俺もまた遊ぶと約束した手前中々機会もなくてもやもやしてたんです。誘っていただけてよかったですよ」
「そう言っていただけると助かります。妃茉莉にも会ってあげてください」
そう言って、眠っている妃茉莉のもとへと案内した。
「うわぁ……可愛いですね」
「ありがとうございます。まだ小さすぎてどっちに似てるかわかんないんですけどね」
「いやあ、どちらに似ても可愛い娘さんになるでしょうね。将来が心配です」
そう言う戸塚さんに、あまねくんが「戸塚さんもそう思いますよね!? 俺も悪い虫がついたらと思うと今から心配で心配で……」と眉を下げている。
まだ産まれたばかりだけど……。
「そうだね。女の子だといつかお嫁に行っちゃうのが寂しいね」
「嫁! 絶対だめ! 妃茉莉を嫁になんてあげないよ!」
ベッド柵を力一杯握りしめて口をぎゅっと結んでいるあまねくん。毎日自分が主体で育児をしているから余計になのだろう。
「そんなこと言ってて本当に婚期逃したらどうするの? うちらが先に死んだら妃茉莉一人ぼっちだよ」
「え!? あ……そうか……で、でも先に死なないかもしれないじゃん!」
「あまねくん、何百年生きるつもりなの……」
私が顔をしかめて言えば戸塚さんはげらげら笑ってしまっている。
「よぼよぼのあまねくんの世話をおばあちゃんになった妃茉莉にさせるつもり?」
「う……そう言われちゃうとなぁ……でも、嫁にあげたくないなぁ……」
「でも守屋はその大事な娘さんを嫁にもらっちゃったわけだからね」
「そ、それは……あー……今よくわかるなぁ……お義父さんが結婚渋ったの」
戸塚さんの言葉に今度は悔しそうに顔を歪めるあまねくん。今日は一段と表情豊かです。
「わかるの? お父さん結構ひどいこと言ってたけど」
「わかるよ。俺だって妃茉莉が男のことでもめてたら許せないもんね。ましてやまどかさんは殺されそうになったわけだし……」
そんな過去の話が掘り起こされてちらりと戸塚さんを見る。視線に気付いた彼に「結婚決まった時に聞きました。大変でしたね」と言われてしまった。
「実際それくらいの年になるまではわからないじゃん。それまで育児も大変だろうし。それに妃茉莉ちゃんにも兄弟必要なんじゃないの?」
「あーはい。それはもう男の子予定なんで大丈夫なんですけど」
「え?」
いつもの如く自信満々であまねくんが言うから、戸塚さんも目を丸くしている。妃茉莉の時には夢の通り女の子だったけれど、今度もそんなに都合よくいくかどうかはわからない。
とにかく妃茉莉が産まれたばかりだというのに、もう既に第二子のことまで考えている男性陣に思わずため息が溢れた。
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