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それぞれの門出
【44】
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ーー
名波佳穂の件は想像していたよりも長引きそうだった。あれから5日程で茉紀から電話が入ったのだ。一応依頼主の個人情報としてか、律くんからその事に触れてくることはなかった。
同じ家にいながら、その後どうなったのかを茉紀から知らされたのだ。
律くんは翌日から早速動いてくれたようで、その後すぐに名波佳穂本人とコンタクトを取ったそうだ。
光輝の件についてはしらばっくれていた名波だったが、茉紀の元夫の名前を出した途端泣きながら和解を求めたという。
親権が取れなかったことで、名波に八つ当たりすることが多くなった元夫。自分との再婚が決まっているにも関わらず、子供に執着している元夫と元義母父に腹が立ち、やけ酒を飲んでいたそうだ。
その内に茉紀がいなくなれば、子供達は元夫の元へ戻り、自分が母親として仕方なく面倒をみていけばいいという考えに至り、酔った勢いで茉紀の実家に行ったところ、丁度私の家へと訪ねてくる茉紀の姿を見つけて尾行をした。
呆然と私の家へ入っていった茉紀の姿を見つめていた名波。車の中で更に酒を煽る内に、茉紀の子供を自分の子供として育てるにはあまりにも虚しく、プライドが許せなくなっていった。
酔いもかなり回っていた頃、戸塚さんと光輝の姿を見つけた。私達の家を、既に戸塚さんと暮らす家だと勘違いした名波は、自分から慰謝料をとっておきながら茉紀にも不倫相手がいて既に共同生活しているのかと憤りは頂点に達したようだ。
もう少し近くで証拠の写真でも撮ろうと近付いたところ、光輝が飛び出してきたのだ。咄嗟の判断で無意識にアクセルを踏み込んだという。
何とも身勝手な犯行であった。彼女の証言は立派な殺人未遂である。しかし、酒により判断力が低下していたことだから茉紀の元夫へは言わないで欲しいと泣いてすがったようだった。
酒気帯び運転で既に運転免許証を取り消されている名波は、暫く運転することもできず元夫からも呆れられているとのこと。そこへきて殺人未遂まで知られてしまえば完全に愛想を尽かされてしまう。それだけは避けたいとずっと泣き通しだったそうだ。
本人の証言がある以上、殺人未遂で違いないと判断した律くんは茉紀の意思に関わらず警察を介入しあれよあれよという間に裁判することに決まってしまった。
裁判だけは避けたかったと茉紀は言うが、このまま放っておいてまた子供に危害が及ぶようなことがあればその方が危険だと最終的に覚悟を決めたようだった。
私達はどうしてこうも刑事事件に巻き込まれるのだろうか。1つ解決する度に1つ問題が起こる。このサイクルがどうにかならないものかと、私も頭痛のするこめかみをぎゅっと指で押さえた。
名波佳穂の件は想像していたよりも長引きそうだった。あれから5日程で茉紀から電話が入ったのだ。一応依頼主の個人情報としてか、律くんからその事に触れてくることはなかった。
同じ家にいながら、その後どうなったのかを茉紀から知らされたのだ。
律くんは翌日から早速動いてくれたようで、その後すぐに名波佳穂本人とコンタクトを取ったそうだ。
光輝の件についてはしらばっくれていた名波だったが、茉紀の元夫の名前を出した途端泣きながら和解を求めたという。
親権が取れなかったことで、名波に八つ当たりすることが多くなった元夫。自分との再婚が決まっているにも関わらず、子供に執着している元夫と元義母父に腹が立ち、やけ酒を飲んでいたそうだ。
その内に茉紀がいなくなれば、子供達は元夫の元へ戻り、自分が母親として仕方なく面倒をみていけばいいという考えに至り、酔った勢いで茉紀の実家に行ったところ、丁度私の家へと訪ねてくる茉紀の姿を見つけて尾行をした。
呆然と私の家へ入っていった茉紀の姿を見つめていた名波。車の中で更に酒を煽る内に、茉紀の子供を自分の子供として育てるにはあまりにも虚しく、プライドが許せなくなっていった。
酔いもかなり回っていた頃、戸塚さんと光輝の姿を見つけた。私達の家を、既に戸塚さんと暮らす家だと勘違いした名波は、自分から慰謝料をとっておきながら茉紀にも不倫相手がいて既に共同生活しているのかと憤りは頂点に達したようだ。
もう少し近くで証拠の写真でも撮ろうと近付いたところ、光輝が飛び出してきたのだ。咄嗟の判断で無意識にアクセルを踏み込んだという。
何とも身勝手な犯行であった。彼女の証言は立派な殺人未遂である。しかし、酒により判断力が低下していたことだから茉紀の元夫へは言わないで欲しいと泣いてすがったようだった。
酒気帯び運転で既に運転免許証を取り消されている名波は、暫く運転することもできず元夫からも呆れられているとのこと。そこへきて殺人未遂まで知られてしまえば完全に愛想を尽かされてしまう。それだけは避けたいとずっと泣き通しだったそうだ。
本人の証言がある以上、殺人未遂で違いないと判断した律くんは茉紀の意思に関わらず警察を介入しあれよあれよという間に裁判することに決まってしまった。
裁判だけは避けたかったと茉紀は言うが、このまま放っておいてまた子供に危害が及ぶようなことがあればその方が危険だと最終的に覚悟を決めたようだった。
私達はどうしてこうも刑事事件に巻き込まれるのだろうか。1つ解決する度に1つ問題が起こる。このサイクルがどうにかならないものかと、私も頭痛のするこめかみをぎゅっと指で押さえた。
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