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愛情
【29】
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「話せば長いんだ……」
「じゃあ、ちょうどよかったじゃない。そっちの話も聞かせてもらうからね」
「はーい……」
どの道、あまねくんと結婚となれば姉に紹介しないわけにもいかない。
ここで経緯を話しておけば、姉はきっと私の味方になってくれるだろう。
レストランに着き、案内されたところは個室だった。こんな高そうなお店で個室ということはそれなりにするだろう。
「勝手にコースにしちゃったけどいい? あんたの好きな肉料理」
「わぁ……嬉しい」
きっと美味しいお肉が食べられるだろうとわくわくする。
「追加で何か頼んでくれてもいいからね」
菅沼さんがそう言ってくれる。
「今日は、お姉ちゃんがご馳走してくれるんじゃなかったの?」
「レストランは、拓真の奢り。私からはこれ」
そう言って紙袋を手渡された。
「これって……」
「あんた、今日も履いてるからビックリしちゃった。その色違い出たみたいだけどまだ買ってないでしょうね」
足元を指差されて姉がそう言った。私は首をぶんぶんと左右に振って「買ってない! 色違い!?」と興奮ぎみに紙袋を握る。
「ならよかった。開けてみて。昨日仕事帰りに買いに行ったら店員さんが入荷したばっかりだって教えてくれたの」
促されて紙袋から箱を取り出す。あまねくんのくれたヒールの色違い。紫と青と水色のトライカラーだった。
私の大好きなAMELIAの靴。姉は昔から私がこのブランドが好きなことを知っている。
「可愛い!」
「ね。あんたのピンクのやつも可愛いじゃん」
「うん! 彼氏がくれたの。お気に入り」
自慢するように足を伸ばせば「何? ノロケ?」と顔をしかめる姉。
「優しいんだ。凄くいい子なの」
「いい子? 何、年下なの?」
そんな流れから彼との出会い、そして雅臣の事件までも一通りの経緯を話すことになった。
私は、貰った靴をまた紙袋に戻し、運ばれてくる料理を食べながら話を進めた。思い出したくなかったあまねくんの妹さんから言われた辛辣な言葉も一字一句残さず伝えた。
「きっつ……」
菅沼さんは、苦虫を噛み潰したような顔をしている。姉も「ちょっと、その子常識ないんじゃない?」なんて怒り気味だ。
「もう家着いてから悲しくてさ、泣いたよね」
「まあ、泣きたくもなるよね。それで、それから彼氏とは話し合ったの?」
「ううん。ずっとすれ違いでまだ会ってない。連絡もあんまりとれなくてさ」
「ちゃんと話し合った方がいいよ。向こうだって自分の妹が彼女のこと傷付けたって思えば心配だろうしさ」
「うん……でも、何か会いづらいんだよね」
「彼の方も責任感じてると思うよ。結婚したいって言い出したのは、向こうでしょ? 自分から言っておいて、自分の家族が彼女のこと否定しただなんて、あんたに振られるかもって怯えてるかもよ」
「私が? あまねくんを? 何でよ」
私は、思わず笑ってしまった。彼は若くて経済力もあって魅力的な男性。
その彼に私が振られることはあっても、なんの取り柄もなく、売れ残った30代独身の私が彼を振るなんてことはあり得ない。
「あんたね、笑い事じゃないよ」
へらへらしている私とは対照的に、真剣な顔をして姉が言うものだから、思わずフォークとナイフを握る手を止めて、姉の目を見つめる。
「結婚ってナイーブな話なんだから」
「特に男にとっては一大事だよ。今後は一家の大黒柱として妻を守っていかなきゃって覚悟を決めるわけだから。俺だって、大きい案件が終わって、給料も安定してからってさくらと話し合ってここまで延びちゃったし。ちゃんと双方が納得してるならいいけどさ、彼の方が気持ちが大きくなっちゃってるなら、今頃凄く不安に思ってるかもよ?」
諭すように菅沼さんにまで言われ、言葉が見つからなかった。
私は、自分が妹さんに否定されたことで、自分だけが認められなくて辛いと思っていた。
それに対して思うところはあったけれど、結婚できない事実はあまねくんにとっても同じことで、私以上に結婚したいと望んでいた彼にとっては、今回のショックも私以上だった可能性もある。
「じゃあ、ちょうどよかったじゃない。そっちの話も聞かせてもらうからね」
「はーい……」
どの道、あまねくんと結婚となれば姉に紹介しないわけにもいかない。
ここで経緯を話しておけば、姉はきっと私の味方になってくれるだろう。
レストランに着き、案内されたところは個室だった。こんな高そうなお店で個室ということはそれなりにするだろう。
「勝手にコースにしちゃったけどいい? あんたの好きな肉料理」
「わぁ……嬉しい」
きっと美味しいお肉が食べられるだろうとわくわくする。
「追加で何か頼んでくれてもいいからね」
菅沼さんがそう言ってくれる。
「今日は、お姉ちゃんがご馳走してくれるんじゃなかったの?」
「レストランは、拓真の奢り。私からはこれ」
そう言って紙袋を手渡された。
「これって……」
「あんた、今日も履いてるからビックリしちゃった。その色違い出たみたいだけどまだ買ってないでしょうね」
足元を指差されて姉がそう言った。私は首をぶんぶんと左右に振って「買ってない! 色違い!?」と興奮ぎみに紙袋を握る。
「ならよかった。開けてみて。昨日仕事帰りに買いに行ったら店員さんが入荷したばっかりだって教えてくれたの」
促されて紙袋から箱を取り出す。あまねくんのくれたヒールの色違い。紫と青と水色のトライカラーだった。
私の大好きなAMELIAの靴。姉は昔から私がこのブランドが好きなことを知っている。
「可愛い!」
「ね。あんたのピンクのやつも可愛いじゃん」
「うん! 彼氏がくれたの。お気に入り」
自慢するように足を伸ばせば「何? ノロケ?」と顔をしかめる姉。
「優しいんだ。凄くいい子なの」
「いい子? 何、年下なの?」
そんな流れから彼との出会い、そして雅臣の事件までも一通りの経緯を話すことになった。
私は、貰った靴をまた紙袋に戻し、運ばれてくる料理を食べながら話を進めた。思い出したくなかったあまねくんの妹さんから言われた辛辣な言葉も一字一句残さず伝えた。
「きっつ……」
菅沼さんは、苦虫を噛み潰したような顔をしている。姉も「ちょっと、その子常識ないんじゃない?」なんて怒り気味だ。
「もう家着いてから悲しくてさ、泣いたよね」
「まあ、泣きたくもなるよね。それで、それから彼氏とは話し合ったの?」
「ううん。ずっとすれ違いでまだ会ってない。連絡もあんまりとれなくてさ」
「ちゃんと話し合った方がいいよ。向こうだって自分の妹が彼女のこと傷付けたって思えば心配だろうしさ」
「うん……でも、何か会いづらいんだよね」
「彼の方も責任感じてると思うよ。結婚したいって言い出したのは、向こうでしょ? 自分から言っておいて、自分の家族が彼女のこと否定しただなんて、あんたに振られるかもって怯えてるかもよ」
「私が? あまねくんを? 何でよ」
私は、思わず笑ってしまった。彼は若くて経済力もあって魅力的な男性。
その彼に私が振られることはあっても、なんの取り柄もなく、売れ残った30代独身の私が彼を振るなんてことはあり得ない。
「あんたね、笑い事じゃないよ」
へらへらしている私とは対照的に、真剣な顔をして姉が言うものだから、思わずフォークとナイフを握る手を止めて、姉の目を見つめる。
「結婚ってナイーブな話なんだから」
「特に男にとっては一大事だよ。今後は一家の大黒柱として妻を守っていかなきゃって覚悟を決めるわけだから。俺だって、大きい案件が終わって、給料も安定してからってさくらと話し合ってここまで延びちゃったし。ちゃんと双方が納得してるならいいけどさ、彼の方が気持ちが大きくなっちゃってるなら、今頃凄く不安に思ってるかもよ?」
諭すように菅沼さんにまで言われ、言葉が見つからなかった。
私は、自分が妹さんに否定されたことで、自分だけが認められなくて辛いと思っていた。
それに対して思うところはあったけれど、結婚できない事実はあまねくんにとっても同じことで、私以上に結婚したいと望んでいた彼にとっては、今回のショックも私以上だった可能性もある。
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