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再会
【62】
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「私もびっくりした。奏ちゃん、帰って来てたんだね」
「うん。俺も知らされてなかったから下に降りて来たの見て驚いた。知ってたらまどかさんに言うし」
「それもそうだね。おばあちゃんのこと、怖かったんだろうね」
「俺だって怖かったもん。本当にまどかさんいてくれてよかった」
「そんな、大したことしてないよ」
「大したことだよ! あのまま意識が戻らなかったら、俺達全員後から原因知って後悔しただろうし」
あまねくんは、真っ直ぐ前を向きながら、少し早口にそう言う。私も、上手いこと体が動いてくれてよかったと自分の行動にも安堵する。私だって、利用者さんから学んだ経験があったのにあそこで行動に移せなかったら、きっと後悔したことだろう。
「じゃあ、助けられてよかった」
「うん。奏も本気でまどかさんにお礼が言いたくて来たんだと思う」
「そうだね。おばあちゃんのこと大好きだもんね」
「うん。まどかさんがこの前、奏と話をしてくれてから、前よりも帰ってくる回数が増えたって母さんが言ってた」
「そっか……。よかった」
「前みたいに自分から話かけるようになったし、律よりも隣にいることが多くなったって律も言ってたよ」
「奏ちゃんも本当はおばあちゃんとたくさんお話したかったんだね」
「そうだったのかなぁ。いつの間にか可愛気なくなっちゃったって思ってたけど、まだ残ってたみたい」
彼はクスクスと笑いながら、奏ちゃんの態度を思い出しているようだった。
私も、奏ちゃんのことを全く気にしなくなったと言えば嘘になるが、前ほど会うのが嫌だとは思わなくなった。本当に少しずつだけれど、彼女との蟠りも解け始めている気がする。
とにもかくにも、おばあちゃんが大事に至らなくてよかった。雅臣が釈放され、恐怖に支配される中、おばあちゃんに何かあってもお見舞いにもいけないし、余計に不安が募る。
おばあちゃんとダリアさんとのお茶会という楽しみがあるこらこそ、辛いことも耐えられるのだから。
そんなことを考えていると、カーナビの画面が電話に切り替わる。ナビには守屋律と表示されている。
「あ……律くん」
「病院に着いたのかもね」
彼は、画面に触れて回線を繋げる。
「律? 病院着いた?」
「うん、今。診察待ち。救急車で来たのに元気そうだからか、後回し」
律くんは、ふうっと息を漏らしながらそう言う。彼にしてみれば、優先して診てほしいだろうに。他に重傷者がいるなら仕方がない。
「じゃあ、まだどのくらいかかるかわかんないか」
「うん。また連絡する。今運転中?」
「そう。まどかさん送ってるところ」
「そっか。気を付けなよ」
「わかってる。じゃあ、連絡待ってるから」
「うん。まどかさんにももう一度お礼言っておいて」
律くんの言葉に、聞こえてるよ。そう心の中で呟く。電話を切ってから、あまねくんは「だってさ」と言って横目でこちらを見るのだった。
「うん。俺も知らされてなかったから下に降りて来たの見て驚いた。知ってたらまどかさんに言うし」
「それもそうだね。おばあちゃんのこと、怖かったんだろうね」
「俺だって怖かったもん。本当にまどかさんいてくれてよかった」
「そんな、大したことしてないよ」
「大したことだよ! あのまま意識が戻らなかったら、俺達全員後から原因知って後悔しただろうし」
あまねくんは、真っ直ぐ前を向きながら、少し早口にそう言う。私も、上手いこと体が動いてくれてよかったと自分の行動にも安堵する。私だって、利用者さんから学んだ経験があったのにあそこで行動に移せなかったら、きっと後悔したことだろう。
「じゃあ、助けられてよかった」
「うん。奏も本気でまどかさんにお礼が言いたくて来たんだと思う」
「そうだね。おばあちゃんのこと大好きだもんね」
「うん。まどかさんがこの前、奏と話をしてくれてから、前よりも帰ってくる回数が増えたって母さんが言ってた」
「そっか……。よかった」
「前みたいに自分から話かけるようになったし、律よりも隣にいることが多くなったって律も言ってたよ」
「奏ちゃんも本当はおばあちゃんとたくさんお話したかったんだね」
「そうだったのかなぁ。いつの間にか可愛気なくなっちゃったって思ってたけど、まだ残ってたみたい」
彼はクスクスと笑いながら、奏ちゃんの態度を思い出しているようだった。
私も、奏ちゃんのことを全く気にしなくなったと言えば嘘になるが、前ほど会うのが嫌だとは思わなくなった。本当に少しずつだけれど、彼女との蟠りも解け始めている気がする。
とにもかくにも、おばあちゃんが大事に至らなくてよかった。雅臣が釈放され、恐怖に支配される中、おばあちゃんに何かあってもお見舞いにもいけないし、余計に不安が募る。
おばあちゃんとダリアさんとのお茶会という楽しみがあるこらこそ、辛いことも耐えられるのだから。
そんなことを考えていると、カーナビの画面が電話に切り替わる。ナビには守屋律と表示されている。
「あ……律くん」
「病院に着いたのかもね」
彼は、画面に触れて回線を繋げる。
「律? 病院着いた?」
「うん、今。診察待ち。救急車で来たのに元気そうだからか、後回し」
律くんは、ふうっと息を漏らしながらそう言う。彼にしてみれば、優先して診てほしいだろうに。他に重傷者がいるなら仕方がない。
「じゃあ、まだどのくらいかかるかわかんないか」
「うん。また連絡する。今運転中?」
「そう。まどかさん送ってるところ」
「そっか。気を付けなよ」
「わかってる。じゃあ、連絡待ってるから」
「うん。まどかさんにももう一度お礼言っておいて」
律くんの言葉に、聞こえてるよ。そう心の中で呟く。電話を切ってから、あまねくんは「だってさ」と言って横目でこちらを見るのだった。
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