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前進
【2】
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ベッドの上で燻り、廃人のように何もやる気の起きない体を空間の中に放っておく。寝返りをうつことさえ面倒で、大の字で仰向けになったまま、何時間も天井を見つめていた。
そんな中、電話をくれたのは可愛い職場の後輩だった。
充電することすら忘れていたスマホは、13%の表示と共に右上で赤ランプが点滅している。
「まどかさん!? どうしちゃったんですか? 今日勤務表出て、皆ざわざわしてますよ。まどかさんの名前ないから」
昼過ぎに電話をよこし、今日勤務表を貰ったと言っているということは、恐らく夜勤明けだろう。
「ごめんね、千尋ちゃん。私、辞めるんだ」
「何でですか!? そんな突然! ……何か、体調悪かったりするんですか?」
最初は声を張っていた彼女は、何か思いついたかのように声を潜めてそう言った。まさか職場からかけているわけではあるまいし、そんなに小声で話さなくたっていいだろうに。
「部長から休んでる理由って何か聞いてる?」
「最初は、家の事情でって聞いてたんです。1週間休みとるって後から知って。勤務被らない時は全然会わないから、まどかさんが休んでることすら知らなかったんですよ、私」
「そっか、そっか。ごめんね。本当は皆に挨拶してから辞めたかったんだけど、色々あってさ」
仰向けのまま会話をしていたが、腕が重たく感じてきたため、仕方なく体を起こして壁に寄りかかる。軽く目眩がした気がした。
「何で挨拶もなしに辞めちゃうんですか……。寿退社で、皆にお祝いされながら辞めると思ってたのに」
「私だってそのつもりだったよ。詳しくは言えないんだけど、そこで働けない理由ができちゃったの」
「え……」
「言っとくけど、私は悪いことしてないからね!」
何となく彼女が引いたのを感じて、仕事中にとんでもないことをやらかしたのではないかなんて勘ぐられたら嫌だから。
「なんだ……てっきり横領でもしたのかと……」
「それは捕まる」
「ですよね。理由はめちゃくちゃ気になりますけど、言えないならしょうがないですね……。何か、重い病気とかじゃないですよね?」
「ないない、それはないから大丈夫」
「よかったぁ……。それが1番心配だったんですよ。千代さん亡くなってからまどかさん元気なくなっちゃったし」
「千代さん大好きだったからね。でも、逆に千代さん看取れたからもういいんだ。だけど、栗田さんのことがあるから、私も千尋ちゃんのこと心配だったの」
「あー……あの人、移動になるかもです」
「え!? 本当!?」
私は、電話なのに思わず身を乗り出す。最後に会った時の千尋ちゃんの暗い表情を思い出すと、こちらも苦しい気持ちになる。
「やっぱ他の職員からも苦情が多くて。怪我する利用者さんも増えて来ちゃったんで、言動をメモしてどんな行いをしていたかまとめようってなったんです。
証拠集めじゃないけど、ちゃんとした根拠がないと移動させたり退職してもらったりっていうのが大変らしくて」
「今って勝手に退職させられない世の中だからねぇ……。でも、千尋ちゃんはまだプリセプターなんだよね?」
「部長さんに言って外してもらいました。このままずっとこの環境が続くなら私が辞めますって言って」
千尋ちゃんの言葉に胸を撫で下ろした。自分の意見がしっかり言える子でよかった。私が彼女をプリセプターにしてしまったせいで、彼女には大変な苦労をかけた。
その上勝手に辞めてしまったものだから、気がかりではあったのだ。
そんな中、電話をくれたのは可愛い職場の後輩だった。
充電することすら忘れていたスマホは、13%の表示と共に右上で赤ランプが点滅している。
「まどかさん!? どうしちゃったんですか? 今日勤務表出て、皆ざわざわしてますよ。まどかさんの名前ないから」
昼過ぎに電話をよこし、今日勤務表を貰ったと言っているということは、恐らく夜勤明けだろう。
「ごめんね、千尋ちゃん。私、辞めるんだ」
「何でですか!? そんな突然! ……何か、体調悪かったりするんですか?」
最初は声を張っていた彼女は、何か思いついたかのように声を潜めてそう言った。まさか職場からかけているわけではあるまいし、そんなに小声で話さなくたっていいだろうに。
「部長から休んでる理由って何か聞いてる?」
「最初は、家の事情でって聞いてたんです。1週間休みとるって後から知って。勤務被らない時は全然会わないから、まどかさんが休んでることすら知らなかったんですよ、私」
「そっか、そっか。ごめんね。本当は皆に挨拶してから辞めたかったんだけど、色々あってさ」
仰向けのまま会話をしていたが、腕が重たく感じてきたため、仕方なく体を起こして壁に寄りかかる。軽く目眩がした気がした。
「何で挨拶もなしに辞めちゃうんですか……。寿退社で、皆にお祝いされながら辞めると思ってたのに」
「私だってそのつもりだったよ。詳しくは言えないんだけど、そこで働けない理由ができちゃったの」
「え……」
「言っとくけど、私は悪いことしてないからね!」
何となく彼女が引いたのを感じて、仕事中にとんでもないことをやらかしたのではないかなんて勘ぐられたら嫌だから。
「なんだ……てっきり横領でもしたのかと……」
「それは捕まる」
「ですよね。理由はめちゃくちゃ気になりますけど、言えないならしょうがないですね……。何か、重い病気とかじゃないですよね?」
「ないない、それはないから大丈夫」
「よかったぁ……。それが1番心配だったんですよ。千代さん亡くなってからまどかさん元気なくなっちゃったし」
「千代さん大好きだったからね。でも、逆に千代さん看取れたからもういいんだ。だけど、栗田さんのことがあるから、私も千尋ちゃんのこと心配だったの」
「あー……あの人、移動になるかもです」
「え!? 本当!?」
私は、電話なのに思わず身を乗り出す。最後に会った時の千尋ちゃんの暗い表情を思い出すと、こちらも苦しい気持ちになる。
「やっぱ他の職員からも苦情が多くて。怪我する利用者さんも増えて来ちゃったんで、言動をメモしてどんな行いをしていたかまとめようってなったんです。
証拠集めじゃないけど、ちゃんとした根拠がないと移動させたり退職してもらったりっていうのが大変らしくて」
「今って勝手に退職させられない世の中だからねぇ……。でも、千尋ちゃんはまだプリセプターなんだよね?」
「部長さんに言って外してもらいました。このままずっとこの環境が続くなら私が辞めますって言って」
千尋ちゃんの言葉に胸を撫で下ろした。自分の意見がしっかり言える子でよかった。私が彼女をプリセプターにしてしまったせいで、彼女には大変な苦労をかけた。
その上勝手に辞めてしまったものだから、気がかりではあったのだ。
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