【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

文字の大きさ
232 / 289
婚姻届

【17】

しおりを挟む
 私は、3時間程泣き続けた。今更雅臣の気持ちを知ったからといって、刑を軽くして欲しいなんていうつもりはない。

 なんの相談もなく、犯罪を犯したのは雅臣なのだから。

 ただ、職場で待ち伏せされていた時、私も感情的にならずに彼の話を聞いていたなら……やめよう。
 過去をどんなふうに言ったって変えられない。

 私達は、5年も一緒にいたのに、お互いに遠慮して顔色を伺って、全くコミュニケーションがとれていなかった。
 すれ違いだらけの交際は、雅臣を歪ませただけだ。

 もしも雅臣が目を覚ましたら、私はあまねくんにたくさん愛されていると伝えてもらおう。

 この日記帳はもう開かない。雅臣の気持ちはもう十分伝わってきた。何度も読み返して思い出に浸るのも違う。彼には罪を償ってもらうし、私はあまねくんと前に進む。

 明日磯部さんに返しに行こう。大丈夫。

 今日の夕飯はお姉ちゃんも来るし。家族水入らずの時間を久々に過ごそう。
 1つ1つの時間を大事にしよう。

 あまねくんは素直でとてもいい子だ。けれど、以前は私が彼を蔑ろにしたせいで一時すれ違ってしまった。あの時、泣いてまで自分の気持ちを伝えてくれたあまねくん。
 意地もプライドも置き去りに、本当の気持ちを教えてくれたあまねくん。
 私は、そんな彼だから信用できるし大事にしたいと思った。

 あまねくんとは、雅臣とは乗り越えられなかったものを乗り越えられた。
 彼こそが私の運命の人だと強く思える。

 雅臣の気持ちを今更知りたくなんてなかったと思ったが、彼の日記は私があまねくんを思う気持ちをより強くさせてくれた。
 雅臣が素直になれなかった分、私が雅臣に遠慮していた分、私はあまねくんに素直でいよう。泥臭くても、カッコ悪くても、こんなに好きな気持ちを知っていて欲しい。

 私は、雅臣に手紙を書いた。ストーカー規制を解いてもらう気はない。だから、彼に会いにいくなんて馬鹿なことはしない。
 けれど、日記を読むにおそらく雅臣は誤解をしている。
 
 私も単純に、写真をバラ撒かれた復讐をしにきたのだと思ったが、私の家で待ち伏せし、私を襲ったのは、雅臣と付き合っていた当時から他に付き合っていた人がいたとでも思われたんじゃないかと考えた。

 彼はあの時、「付き合ってる男がいるって本当だったんだ? 強がって嘘ついたのかと思った」「俺と別れていくらも経ってないのに、もう結婚の話なんて出てんだ」なんて言っていた。
 雅臣は、自分の目の前であまねくんが私を振るところをみている。その後、共謀して私が雅臣を嵌めたが、実は同時進行で他にも彼氏がいてその男性と結婚をしようとしている、言わばあばずれのような女だと思われたんじゃないか。そんなふうにも思えた。

 結局はあまねくんと付き合っていることを理解したはずだが、彼がどこまで理解しているのかは不明だ。未だに私が自分に会いに来てくれたと思っていたようだし……。

 だから、全ての誤解を解くためにも手紙を書いた。
 私に幸せになってほしいと言った雅臣のことだ。今がその幸せの時なのだとわかってもらえれば、私の相手であるあまねくんのことも、私のこともこれ以上責めたりしないはずだ。

 これで彼とは終わりにする。逃げずに向き合って、しっかりと終わりにする。
 彼が目を覚ましたら、この手紙を渡してもらおう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

独占欲全開の肉食ドクターに溺愛されて極甘懐妊しました

せいとも
恋愛
旧題:ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~ 救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。 どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。 乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。 受け取ろうとすると邪魔だと言われる。 そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。 医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。 最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇ 作品はフィクションです。 本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

処理中です...