【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

文字の大きさ
242 / 289
婚姻届

【27】

しおりを挟む
「周が、あなたを救いたいと言ったんです」

「え?」

「あなたと周が初めて出会った映画館。あれが結城の計画だったということは把握していますね?」

「うん」

「あの後、周があなたのことをとてもいい人だったと言っていました。俺は、警察じゃないし、任されたのは保険の件についてだけ。だから本来なら写真のことなんてどうでもよかった。正直、あなたのことも。俺は、周に映画館でスマホを壊せばデータは消える。さっさと写真を消して結城と縁を切れと言ったんです」

「……酷い」

 あまねくんも、スマホを壊すことも考えたって言っていた。まさか、律くんからの案だったとは……。初めて会った時の、律くんの冷たい印象は、あながち間違ってはいないかもしれない。

 私は、溶けた氷を混ぜるように、ストローでグラス内をかき回した。分離した液体が混ざり合い、本来のカフェオレの色に戻る。グラスはすっかり汗をかいて、コースターを濡らしていた。

「実際には浮気じゃなかったわけですから、そもそもあれは浮気の証拠でもなんでもなかった。データが破壊されたところであなたにだって害のないものだったわけです」

「そ、そうだけど……あまねくんはそれを知ってたの?」

「その段階では知りません。結城にとっても、実際に浮気していたかどうかは重要じゃなかった。写真の内容が悪すぎただけで。
 だから、結城も他の女とキスをしている写真としか言っていなかったようですね。周も勝手に浮気の証拠写真だと信じて疑わなかった。
 そこにきて、あなたから彼氏が浮気をしていると聞かされれば、疑う余地などないでしょう」

「じゃ、じゃあ律くんが教えてあげればよかったんじゃないの?」

「それを言うなら、あなたが直接結城を問い詰めればよかったじゃないですか。そしたら、浮気じゃなかったと白状したかもしれませんよ。それをあなたが信じたかどうかは別として」

「ぐ……」

 何も言い返せない。何度か問い詰めようかと考えた。それでも怖じ気づいてできなかったのは自分だ。律くんばかりを責められない。

「周においても同じです。例えば、俺が周にあの写真は事故だったと言うとする。あなたがめそめそ泣いている様子を見て、何の確証もない周があれは浮気じゃなかったと言えたと思いますか?」

「それは……そうね」

 事情を知らないあまねくんに、あれは浮気相手じゃないんだよなんて言われたら、雅臣に対する不信感でいっぱいの私は、あまねくんのことすら疑ってしまったかもしれない。

「あの時の周は、同情からあなたを救いたいなんて言ったんだと思います。昔から周もあなたと同じお人好しですから」

「そう……」

「本来の目的を忘れて、純粋にあなたと映画を楽しんできたことを聞かされた俺の身にもなって下さい。結城の彼女とデートをした挙げ句、いい人だったと言ってきたんですよ、あの男は」

 律くんの目が据わっている。当時のことを思い出し、苛立ちを隠せない様子だ。
 私の右頬がピクピクと動くものだから、無意識に引きつっているのが自分でもわかる。あまねくんって、律くんの思い通りにいかない行動をとることもしばしばあるのね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

処理中です...