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婚姻届
【27】
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「周が、あなたを救いたいと言ったんです」
「え?」
「あなたと周が初めて出会った映画館。あれが結城の計画だったということは把握していますね?」
「うん」
「あの後、周があなたのことをとてもいい人だったと言っていました。俺は、警察じゃないし、任されたのは保険の件についてだけ。だから本来なら写真のことなんてどうでもよかった。正直、あなたのことも。俺は、周に映画館でスマホを壊せばデータは消える。さっさと写真を消して結城と縁を切れと言ったんです」
「……酷い」
あまねくんも、スマホを壊すことも考えたって言っていた。まさか、律くんからの案だったとは……。初めて会った時の、律くんの冷たい印象は、あながち間違ってはいないかもしれない。
私は、溶けた氷を混ぜるように、ストローでグラス内をかき回した。分離した液体が混ざり合い、本来のカフェオレの色に戻る。グラスはすっかり汗をかいて、コースターを濡らしていた。
「実際には浮気じゃなかったわけですから、そもそもあれは浮気の証拠でもなんでもなかった。データが破壊されたところであなたにだって害のないものだったわけです」
「そ、そうだけど……あまねくんはそれを知ってたの?」
「その段階では知りません。結城にとっても、実際に浮気していたかどうかは重要じゃなかった。写真の内容が悪すぎただけで。
だから、結城も他の女とキスをしている写真としか言っていなかったようですね。周も勝手に浮気の証拠写真だと信じて疑わなかった。
そこにきて、あなたから彼氏が浮気をしていると聞かされれば、疑う余地などないでしょう」
「じゃ、じゃあ律くんが教えてあげればよかったんじゃないの?」
「それを言うなら、あなたが直接結城を問い詰めればよかったじゃないですか。そしたら、浮気じゃなかったと白状したかもしれませんよ。それをあなたが信じたかどうかは別として」
「ぐ……」
何も言い返せない。何度か問い詰めようかと考えた。それでも怖じ気づいてできなかったのは自分だ。律くんばかりを責められない。
「周においても同じです。例えば、俺が周にあの写真は事故だったと言うとする。あなたがめそめそ泣いている様子を見て、何の確証もない周があれは浮気じゃなかったと言えたと思いますか?」
「それは……そうね」
事情を知らないあまねくんに、あれは浮気相手じゃないんだよなんて言われたら、雅臣に対する不信感でいっぱいの私は、あまねくんのことすら疑ってしまったかもしれない。
「あの時の周は、同情からあなたを救いたいなんて言ったんだと思います。昔から周もあなたと同じお人好しですから」
「そう……」
「本来の目的を忘れて、純粋にあなたと映画を楽しんできたことを聞かされた俺の身にもなって下さい。結城の彼女とデートをした挙げ句、いい人だったと言ってきたんですよ、あの男は」
律くんの目が据わっている。当時のことを思い出し、苛立ちを隠せない様子だ。
私の右頬がピクピクと動くものだから、無意識に引きつっているのが自分でもわかる。あまねくんって、律くんの思い通りにいかない行動をとることもしばしばあるのね。
「え?」
「あなたと周が初めて出会った映画館。あれが結城の計画だったということは把握していますね?」
「うん」
「あの後、周があなたのことをとてもいい人だったと言っていました。俺は、警察じゃないし、任されたのは保険の件についてだけ。だから本来なら写真のことなんてどうでもよかった。正直、あなたのことも。俺は、周に映画館でスマホを壊せばデータは消える。さっさと写真を消して結城と縁を切れと言ったんです」
「……酷い」
あまねくんも、スマホを壊すことも考えたって言っていた。まさか、律くんからの案だったとは……。初めて会った時の、律くんの冷たい印象は、あながち間違ってはいないかもしれない。
私は、溶けた氷を混ぜるように、ストローでグラス内をかき回した。分離した液体が混ざり合い、本来のカフェオレの色に戻る。グラスはすっかり汗をかいて、コースターを濡らしていた。
「実際には浮気じゃなかったわけですから、そもそもあれは浮気の証拠でもなんでもなかった。データが破壊されたところであなたにだって害のないものだったわけです」
「そ、そうだけど……あまねくんはそれを知ってたの?」
「その段階では知りません。結城にとっても、実際に浮気していたかどうかは重要じゃなかった。写真の内容が悪すぎただけで。
だから、結城も他の女とキスをしている写真としか言っていなかったようですね。周も勝手に浮気の証拠写真だと信じて疑わなかった。
そこにきて、あなたから彼氏が浮気をしていると聞かされれば、疑う余地などないでしょう」
「じゃ、じゃあ律くんが教えてあげればよかったんじゃないの?」
「それを言うなら、あなたが直接結城を問い詰めればよかったじゃないですか。そしたら、浮気じゃなかったと白状したかもしれませんよ。それをあなたが信じたかどうかは別として」
「ぐ……」
何も言い返せない。何度か問い詰めようかと考えた。それでも怖じ気づいてできなかったのは自分だ。律くんばかりを責められない。
「周においても同じです。例えば、俺が周にあの写真は事故だったと言うとする。あなたがめそめそ泣いている様子を見て、何の確証もない周があれは浮気じゃなかったと言えたと思いますか?」
「それは……そうね」
事情を知らないあまねくんに、あれは浮気相手じゃないんだよなんて言われたら、雅臣に対する不信感でいっぱいの私は、あまねくんのことすら疑ってしまったかもしれない。
「あの時の周は、同情からあなたを救いたいなんて言ったんだと思います。昔から周もあなたと同じお人好しですから」
「そう……」
「本来の目的を忘れて、純粋にあなたと映画を楽しんできたことを聞かされた俺の身にもなって下さい。結城の彼女とデートをした挙げ句、いい人だったと言ってきたんですよ、あの男は」
律くんの目が据わっている。当時のことを思い出し、苛立ちを隠せない様子だ。
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