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婚姻届
【29】
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「クリーニングは?」
「本当に偶然を装うなら、もう少し期間を空けたかった。でも、思わぬ機会が訪れたのでつい。土日は周の友人がいたので、クリーニングに行けないことはわかっていました。そして、月曜日は研修のためいつもより早く仕事が終わることも。
そこで、俺は周にスーツを1着クリーニングに出すよう頼みました。男の一人暮らしなんて、クリーニングは行ける時に行きます。でも、人から頼まれたものがあったらすぐに行くでしょう? 周なら尚更」
「そんなところにまで罠を……」
「罠って……。もちろんまどかさんがいつクリーニング屋に行くかはわからなかったので、一か八かではありましたけどね。周の方が先にクリーニング屋にいたのは気付きました?」
「え!? 知らない……」
「小さなクリーニング屋なので、17時半には閉店してしまいますよね? だから、17時半までにはあなたが来ることを予想していた。
友人の安藤さんがあなたのアパートから出たところで、周をクリーニング屋に向かわせました。先に周がクリーニング屋についてしまったので、俺から電話をかけて足止めしていた。
あなたがやって来たのを確認してから、電話を切って周を中に入れた。こうも簡単に思い通りにいくと、些か心配にもなりますけどね」
「じゃあ、あまねくんはそのことも……」
「未だに偶然だと思っています」
「やっぱり……」
段々あまねくんが可哀想になってきた。何だかんだあまねくんを1番利用してるのは律くんなんじゃないかと思えてならない。
「でも、なんで私があそこのクリーニング屋を使ってるって知ってたの!?」
「あなたが出したゴミの中に、あのクリーニング屋のレシートが入っていたみたいですね」
「そんなことまでしてたの!? でも、あまねくんがあそこのクリーニング屋を選ぶとは限らないじゃん……」
私は、意気消沈してテーブルの上に突っ伏した。
「周があなたの家の近くを通るように、郵便局へ封筒を出すよう頼んでありました。研修会場から1番近い郵便局は、まどかさんの家の近くですから。
後は、確かあの近くにクリーニング屋もあったよねと一言添えておくだけでいいんです。前日に、あなたを家まで送る際、実際にそのクリーニング屋の前を通っているわけですし」
「それじゃあ、確実にそのまま、クリーニング屋に寄るじゃん」
私は、突っ伏したまま頭を抱える。何から何まで律くんの計画通りだったのだ。言われなければ気付くはずがない。
「そもそも、あなたを救いたいと言い出したのは周ですからね。そのために協力したまでです」
まるで私の心の中を先読みし、これは利用ではなくあくまでも協力だと言いたげだ。
「あまねくんは、本当に運命だと思ってるんだよ」
「そうみたいですね。それにあなたも。でも、俺はそこまでしかしてない。自宅に招き入れたのはあなたの意思だし、その後改めてデートに誘ったのは周だし」
「……そうだけど」
「それに周は、あなたがあの時テレビに出演していた人物だと自分で辿り着いた。こちらとしては、何ヵ月も前から知っていたことなのに、それを知って密かにはしゃいでいる周の姿。笑いを堪えるのに必死でしたよ」
思い出したかのように、ククッと喉で笑う。
黒い! 真っ黒い! 律くんは完全にブラックだ。純粋な弟の心を弄んで楽しむなんて、悪行そのものではないか。
「それからは早かったですね。周があなたに夢中になるまで。結城雅臣からあなたを救いたいと言ってた筈なのに、いつの間にか周の目的は、あなたを手に入れることに変わってた」
「……」
「周があんなにあなたに惚れてしまうなんて、こちらとしても予想していなかったんですよ。9年前の一まどかと同一人物だと教えるつもりもなかったし、ただのお人好しで終わる予定だった。写真を何とかして、結城雅臣を捕まえたら、あなたとは徐々に距離をおくものだと思っていました」
「え……?」
本来の予定では、あまねくんは私と付き合うつもりではなかったということだ。
私は、顔を上げて律くんの目を見つめる。
「本当に偶然を装うなら、もう少し期間を空けたかった。でも、思わぬ機会が訪れたのでつい。土日は周の友人がいたので、クリーニングに行けないことはわかっていました。そして、月曜日は研修のためいつもより早く仕事が終わることも。
そこで、俺は周にスーツを1着クリーニングに出すよう頼みました。男の一人暮らしなんて、クリーニングは行ける時に行きます。でも、人から頼まれたものがあったらすぐに行くでしょう? 周なら尚更」
「そんなところにまで罠を……」
「罠って……。もちろんまどかさんがいつクリーニング屋に行くかはわからなかったので、一か八かではありましたけどね。周の方が先にクリーニング屋にいたのは気付きました?」
「え!? 知らない……」
「小さなクリーニング屋なので、17時半には閉店してしまいますよね? だから、17時半までにはあなたが来ることを予想していた。
友人の安藤さんがあなたのアパートから出たところで、周をクリーニング屋に向かわせました。先に周がクリーニング屋についてしまったので、俺から電話をかけて足止めしていた。
あなたがやって来たのを確認してから、電話を切って周を中に入れた。こうも簡単に思い通りにいくと、些か心配にもなりますけどね」
「じゃあ、あまねくんはそのことも……」
「未だに偶然だと思っています」
「やっぱり……」
段々あまねくんが可哀想になってきた。何だかんだあまねくんを1番利用してるのは律くんなんじゃないかと思えてならない。
「でも、なんで私があそこのクリーニング屋を使ってるって知ってたの!?」
「あなたが出したゴミの中に、あのクリーニング屋のレシートが入っていたみたいですね」
「そんなことまでしてたの!? でも、あまねくんがあそこのクリーニング屋を選ぶとは限らないじゃん……」
私は、意気消沈してテーブルの上に突っ伏した。
「周があなたの家の近くを通るように、郵便局へ封筒を出すよう頼んでありました。研修会場から1番近い郵便局は、まどかさんの家の近くですから。
後は、確かあの近くにクリーニング屋もあったよねと一言添えておくだけでいいんです。前日に、あなたを家まで送る際、実際にそのクリーニング屋の前を通っているわけですし」
「それじゃあ、確実にそのまま、クリーニング屋に寄るじゃん」
私は、突っ伏したまま頭を抱える。何から何まで律くんの計画通りだったのだ。言われなければ気付くはずがない。
「そもそも、あなたを救いたいと言い出したのは周ですからね。そのために協力したまでです」
まるで私の心の中を先読みし、これは利用ではなくあくまでも協力だと言いたげだ。
「あまねくんは、本当に運命だと思ってるんだよ」
「そうみたいですね。それにあなたも。でも、俺はそこまでしかしてない。自宅に招き入れたのはあなたの意思だし、その後改めてデートに誘ったのは周だし」
「……そうだけど」
「それに周は、あなたがあの時テレビに出演していた人物だと自分で辿り着いた。こちらとしては、何ヵ月も前から知っていたことなのに、それを知って密かにはしゃいでいる周の姿。笑いを堪えるのに必死でしたよ」
思い出したかのように、ククッと喉で笑う。
黒い! 真っ黒い! 律くんは完全にブラックだ。純粋な弟の心を弄んで楽しむなんて、悪行そのものではないか。
「それからは早かったですね。周があなたに夢中になるまで。結城雅臣からあなたを救いたいと言ってた筈なのに、いつの間にか周の目的は、あなたを手に入れることに変わってた」
「……」
「周があんなにあなたに惚れてしまうなんて、こちらとしても予想していなかったんですよ。9年前の一まどかと同一人物だと教えるつもりもなかったし、ただのお人好しで終わる予定だった。写真を何とかして、結城雅臣を捕まえたら、あなたとは徐々に距離をおくものだと思っていました」
「え……?」
本来の予定では、あまねくんは私と付き合うつもりではなかったということだ。
私は、顔を上げて律くんの目を見つめる。
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