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婚姻届
【31】
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「ただ、写真を売ると周が言った時、俺は条件を2つ出しました」
「2つ?」
「そう。1つは、記者に対して絶対に偽りの発言はしないこと。結城と花井は恋愛関係ではなく、たまたま撮影してしまった写真であり、花井に迷惑がかからないよう配慮すると約束してもらうこと。
その際、必ず音声データをとってくるよう言ってありました。おそらく、記者は口約束した後、自分達の都合のいいように写真を使用するだろうということはわかっていました。だけど、今回みたいに第三者が騒ぐ可能性があることも目に見えていた。
だから、こちらには非はないという証拠を作っておかなければならなかった」
「そんなことまで考えて……」
「当たり前でしょう。俺が簡単に周を好きにさせるわけがないじゃないですか。そんなにリスクの高いもの、下手したらこっちが捕まりますよ。それと、2つ目。それは、何があってもあなたを傷付けないことと、必ず守ること」
「え……?」
律くんから、そんな言葉が聞かれて驚く。私のことなんてどうでもいいって言っていたくせに。
「俺が、さっさと結城と距離をおけと言ったのは、あなたのためでもあったんですよ。写真さえなくなれば、後はあなたと結城が別れて、あなたは何も知らないまま生活できた。
後に脱税の報道を見ても、別れてよかったと安堵することができた。例え、周がUSBを持って消えてしまったとしても、早い段階なら、脱税していた元彼の仲間だったんだと諦めもついたでしょう」
「確かに……」
「けれど、周があなたに深入りしたがばっかりに、あなたも周を信用し過ぎていた。今後あの写真が良くない方向に転じることは、薄々勘づいていましたから。
結城と周の関係性にあなたを巻き込んだのは、他でもない周です。だから、あなたに手を出すなら今後起こりうる危機から何がなんでもあなたを守るように言ってありました。それができないなら、リスクを侵すべきじゃない」
「律くん……」
「周は素直ですからね。2つの条件をしっかり守っています。だから、訴訟についてはあなたが心配することは何もない。
ただ、覚えていて欲しいのは、周はあなたのことになると冷静さを失う。決して馬鹿な奴じゃないんです。何なら、俺以上に頭が切れる時もあるし。でも、あなたにだけはめっぽう弱い。だから俺は、周が暴走しないように時々見張っていなきゃならない」
律くんは、困ったように眉を下げて少し笑った。手を焼いているといった様子だ。
「……あまねくんは、本当にいつも守ってくれるよ。結城に殴られた時も、今回殺されかけた時も……」
「そうですね。多分、これからもです。ただ、今回の件については責任を感じているようです」
「責任?」
「自分が写真を売ったせいで、自分だけでなくあなたまで殺されかけたんじゃないかって」
「それは、あまねくんだけのせいじゃっ」
「わかってます。詐欺の件で捕まったこと、傷害事件で父が担当したところも要因です。その前に、保険の件では俺が担当してますからね。守屋家には相当な恨みを抱いていても不思議じゃない」
律くんは、私の言葉を遮ってそう言った。私は、言い返す言葉が見つからず、黙ったままアイスカフェオレを2口飲んだ。
「周は、結城の気持ちもわかるんだと思います。結城からは、まどかさんについて酷い女だと告げられていたようですが、周だってさすがに浮気していたわけではないと知れば、あなたが結城から愛されていたことに気付きます。
結城がなぜそこまであなたに執着するのか、自分を忌み嫌うのか。あなたのことを大事に思う周になら、それがわかると思いますよ。
でも、だからこそ周の独占欲は膨らむんです。その結城に対して抱くのは、同情じゃない。敵対心です」
律くんはそこまで言うと、シャツの袖を少し上に上げ、時計を確認した。高級そうな時計だ。針が何時何分を差しているのか、私にはわからない。
「2つ?」
「そう。1つは、記者に対して絶対に偽りの発言はしないこと。結城と花井は恋愛関係ではなく、たまたま撮影してしまった写真であり、花井に迷惑がかからないよう配慮すると約束してもらうこと。
その際、必ず音声データをとってくるよう言ってありました。おそらく、記者は口約束した後、自分達の都合のいいように写真を使用するだろうということはわかっていました。だけど、今回みたいに第三者が騒ぐ可能性があることも目に見えていた。
だから、こちらには非はないという証拠を作っておかなければならなかった」
「そんなことまで考えて……」
「当たり前でしょう。俺が簡単に周を好きにさせるわけがないじゃないですか。そんなにリスクの高いもの、下手したらこっちが捕まりますよ。それと、2つ目。それは、何があってもあなたを傷付けないことと、必ず守ること」
「え……?」
律くんから、そんな言葉が聞かれて驚く。私のことなんてどうでもいいって言っていたくせに。
「俺が、さっさと結城と距離をおけと言ったのは、あなたのためでもあったんですよ。写真さえなくなれば、後はあなたと結城が別れて、あなたは何も知らないまま生活できた。
後に脱税の報道を見ても、別れてよかったと安堵することができた。例え、周がUSBを持って消えてしまったとしても、早い段階なら、脱税していた元彼の仲間だったんだと諦めもついたでしょう」
「確かに……」
「けれど、周があなたに深入りしたがばっかりに、あなたも周を信用し過ぎていた。今後あの写真が良くない方向に転じることは、薄々勘づいていましたから。
結城と周の関係性にあなたを巻き込んだのは、他でもない周です。だから、あなたに手を出すなら今後起こりうる危機から何がなんでもあなたを守るように言ってありました。それができないなら、リスクを侵すべきじゃない」
「律くん……」
「周は素直ですからね。2つの条件をしっかり守っています。だから、訴訟についてはあなたが心配することは何もない。
ただ、覚えていて欲しいのは、周はあなたのことになると冷静さを失う。決して馬鹿な奴じゃないんです。何なら、俺以上に頭が切れる時もあるし。でも、あなたにだけはめっぽう弱い。だから俺は、周が暴走しないように時々見張っていなきゃならない」
律くんは、困ったように眉を下げて少し笑った。手を焼いているといった様子だ。
「……あまねくんは、本当にいつも守ってくれるよ。結城に殴られた時も、今回殺されかけた時も……」
「そうですね。多分、これからもです。ただ、今回の件については責任を感じているようです」
「責任?」
「自分が写真を売ったせいで、自分だけでなくあなたまで殺されかけたんじゃないかって」
「それは、あまねくんだけのせいじゃっ」
「わかってます。詐欺の件で捕まったこと、傷害事件で父が担当したところも要因です。その前に、保険の件では俺が担当してますからね。守屋家には相当な恨みを抱いていても不思議じゃない」
律くんは、私の言葉を遮ってそう言った。私は、言い返す言葉が見つからず、黙ったままアイスカフェオレを2口飲んだ。
「周は、結城の気持ちもわかるんだと思います。結城からは、まどかさんについて酷い女だと告げられていたようですが、周だってさすがに浮気していたわけではないと知れば、あなたが結城から愛されていたことに気付きます。
結城がなぜそこまであなたに執着するのか、自分を忌み嫌うのか。あなたのことを大事に思う周になら、それがわかると思いますよ。
でも、だからこそ周の独占欲は膨らむんです。その結城に対して抱くのは、同情じゃない。敵対心です」
律くんはそこまで言うと、シャツの袖を少し上に上げ、時計を確認した。高級そうな時計だ。針が何時何分を差しているのか、私にはわからない。
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