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命乞い【6】
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「はじめ」
パンっと歩澄が軽く手を叩いた瞬間、徳昂は爪先に力を入れ、足を踏ん張った。その勢いで、刀は澪の首もとを狙う。
女、子供を殺める時は、一瞬で殺れという歩澄の教えだった。
澪はそれを軽々と避け、一歩で徳昂の体の下に潜り込みその刀を弾く。キンッと高い音が鳴り、一度はぐっと刀を握り直した徳昂であったが、次の一振りで徳昂の手中にあった刀は完全に弾かれた。
刀が地面に落ちる前に、澪は徳昂の左足を右足で取り、バランスを崩したところで一気に体重を乗せた。尻餅をついた徳昂が体勢を直そうと身を捩った刹那、ヒタッと首もとに刀が当てられた。
僅な時間の出来事であった。刀を弾かれ、首に刃をあてがわれた徳昂はぐっと奥歯を噛み締めたが、すぐに足元に転がった刀に手を伸ばす。
しかし、膝をついた澪により刀を押さえつけられそれを手に取ることは叶わなかった。
(勝負あった)
そう澪が確信した瞬間、徳昂は刀と反対側に頭を振り、澪の横顔を目掛けて蹴り上げた。しかし、澪はそれを左腕を盾にして受け止め、その体勢から徳昂の顎を膝で打った。更に、自由になった左手で徳昂の首に手刀を食らわす。
仰向けで地面に叩きつけられた徳昂の左顔横にドンッと右足で地面を踏みつけ、左膝で胸に体重をかける。
「ぐっ……」
唸った徳昂の右首に再度刀の刃を押し当てた。今度は、左首側を澪の足で塞き止められているがために、身動きがとれなくなった。
(完全に勝負はついてたのに。こいつ、本気で私を蹴り上げようとした……)
往生際の悪い徳昂の反撃に憤慨する澪は、「これで二回死にましたね」とにっこり笑顔を見せつけてやるのだった。
瞬く間に圧倒的な勝負をつけた澪。その姿を前にして、そこにいた誰もが言葉を失った。
その沈黙を破ったのは歩澄だ。
「勝負はついた。もういい」
その一言で、澪はようやく徳昂を解放した。その足で瑛梓の元へ行き、「刀、汚れずに済みました。ありがとうございました」そう言って刀を返却した。
「あぁ……」
唖然としている瑛梓を他所に、澪は歩澄に向き合い、「今度は約束守っていただけますか?」と尋ねた。
歩澄は、息一つ乱れていない澪の姿を目にして、決して表には出さないが動揺せずにはいられなかった。
(この体でこれだけの重さの刀を持って動き、息一つ乱さないだと? あの一瞬で間合いを詰め、懐に入る手慣れた動きはとてもただの姫とは思えない)
あれだけの動きができるのは、普段から戦闘慣れしている証拠であると歩澄は察する。それと同時に、とんでもない約束をしてしまったかと後悔するはめになった。
「歩澄様! もう一度!」
ようやく体を起き上がらせた徳昂は、ふらつく体で歩澄に近付く。
(この体格差で、徳昂にこれだけの痛手を負わせるか……。澪姫……何者だ)
歩澄は、徳昂が自分に対して揺るぎない信頼を寄せていることは心得ている。歩澄の命令は絶対であり、どんな事とてこの男ならやる。そんな徳昂をわかっているからこそ、澪相手に手を抜くなどということはあり得ないと歩澄は考える。
「もういい。下がれ」
「しかし、歩澄様!」
「下がれと言っているのが聞こえないか? お前は負けた」
「それはっ、相手が女だから油断して……」
「油断? 真剣を持って戦う者が油断だと? 本気で言ってるのか?」
歩澄の声色が変わった。女であろうが男であろうが、他人の命を奪う行為。自らの命をかけて当然だという信念の元、数々の命を奪ってきた歩澄。徳昂の言葉はあまりにも責任感に欠如していると感じた。
失言だった! そう歩澄の殺気を悟って気付いた徳昂は「いえ……申し訳ない限りです。俺の力が及ばず」と言い換えた。
しかし、徳昂は決して納得などしていない。この程度の小娘に自分が負けるなどあってはならないと。まして、尊敬する歩澄の前で辱しめを受けたこの屈辱が澪に対する憎悪を生んだ。
パンっと歩澄が軽く手を叩いた瞬間、徳昂は爪先に力を入れ、足を踏ん張った。その勢いで、刀は澪の首もとを狙う。
女、子供を殺める時は、一瞬で殺れという歩澄の教えだった。
澪はそれを軽々と避け、一歩で徳昂の体の下に潜り込みその刀を弾く。キンッと高い音が鳴り、一度はぐっと刀を握り直した徳昂であったが、次の一振りで徳昂の手中にあった刀は完全に弾かれた。
刀が地面に落ちる前に、澪は徳昂の左足を右足で取り、バランスを崩したところで一気に体重を乗せた。尻餅をついた徳昂が体勢を直そうと身を捩った刹那、ヒタッと首もとに刀が当てられた。
僅な時間の出来事であった。刀を弾かれ、首に刃をあてがわれた徳昂はぐっと奥歯を噛み締めたが、すぐに足元に転がった刀に手を伸ばす。
しかし、膝をついた澪により刀を押さえつけられそれを手に取ることは叶わなかった。
(勝負あった)
そう澪が確信した瞬間、徳昂は刀と反対側に頭を振り、澪の横顔を目掛けて蹴り上げた。しかし、澪はそれを左腕を盾にして受け止め、その体勢から徳昂の顎を膝で打った。更に、自由になった左手で徳昂の首に手刀を食らわす。
仰向けで地面に叩きつけられた徳昂の左顔横にドンッと右足で地面を踏みつけ、左膝で胸に体重をかける。
「ぐっ……」
唸った徳昂の右首に再度刀の刃を押し当てた。今度は、左首側を澪の足で塞き止められているがために、身動きがとれなくなった。
(完全に勝負はついてたのに。こいつ、本気で私を蹴り上げようとした……)
往生際の悪い徳昂の反撃に憤慨する澪は、「これで二回死にましたね」とにっこり笑顔を見せつけてやるのだった。
瞬く間に圧倒的な勝負をつけた澪。その姿を前にして、そこにいた誰もが言葉を失った。
その沈黙を破ったのは歩澄だ。
「勝負はついた。もういい」
その一言で、澪はようやく徳昂を解放した。その足で瑛梓の元へ行き、「刀、汚れずに済みました。ありがとうございました」そう言って刀を返却した。
「あぁ……」
唖然としている瑛梓を他所に、澪は歩澄に向き合い、「今度は約束守っていただけますか?」と尋ねた。
歩澄は、息一つ乱れていない澪の姿を目にして、決して表には出さないが動揺せずにはいられなかった。
(この体でこれだけの重さの刀を持って動き、息一つ乱さないだと? あの一瞬で間合いを詰め、懐に入る手慣れた動きはとてもただの姫とは思えない)
あれだけの動きができるのは、普段から戦闘慣れしている証拠であると歩澄は察する。それと同時に、とんでもない約束をしてしまったかと後悔するはめになった。
「歩澄様! もう一度!」
ようやく体を起き上がらせた徳昂は、ふらつく体で歩澄に近付く。
(この体格差で、徳昂にこれだけの痛手を負わせるか……。澪姫……何者だ)
歩澄は、徳昂が自分に対して揺るぎない信頼を寄せていることは心得ている。歩澄の命令は絶対であり、どんな事とてこの男ならやる。そんな徳昂をわかっているからこそ、澪相手に手を抜くなどということはあり得ないと歩澄は考える。
「もういい。下がれ」
「しかし、歩澄様!」
「下がれと言っているのが聞こえないか? お前は負けた」
「それはっ、相手が女だから油断して……」
「油断? 真剣を持って戦う者が油断だと? 本気で言ってるのか?」
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失言だった! そう歩澄の殺気を悟って気付いた徳昂は「いえ……申し訳ない限りです。俺の力が及ばず」と言い換えた。
しかし、徳昂は決して納得などしていない。この程度の小娘に自分が負けるなどあってはならないと。まして、尊敬する歩澄の前で辱しめを受けたこの屈辱が澪に対する憎悪を生んだ。
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