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赤髪の少女【21】

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「……何? 何事?」

 楊の元から帰った澪は、砂まみれになった二人の姿を見てゆっくりと近付いた。あらゆるところから出血し、顔や腕は痣だらけだった。
 琥太郎に関しては半裸の状態で震えている。

「誰がこんなことを?」

「……徳昂様の家来達だ」

「……何人?」

「……全部で七人だ」

「……下衆め」

 五平の言葉に澪は低く唸った。

(関係のない五平や琥太郎にまで手を出したか……)

 澪は、沸々と沸き上がる憤りを押さえ切れず、右手の拳を握った。

「琥太郎くんは、何でこんなことに?」

「……本当は女なんじゃないかって馬鹿にされて、それで脱がされて……」

「……今までにもこういうことが?」

「ああ。……ここではよくある。女がいないから……琥太郎みたいなやつは狙われやすい」

 五平が悔しそうに顔を歪めた。澪は、ゆっくり息を吐くと、琥太郎の前にしゃがんだ。そっと着物を直しそのまま抱き締めた。

「ひ、姫様……」

「大丈夫、落ち着いて。怖かったね」

「……情けないです。ぼ、僕は……」

「いいよ、言わなくて。後で傷の手当てをしよう」

 澪は体を離すと優しく琥太郎の頭を撫でた。

「……澪?」

 五平が澪の名を呼ぶと、「ちょっと、行ってくる……」そう言って澪はふらっと立ち上がった。

「い、行ってくるって……」

「大丈夫、殺さないから」

 そう言った澪からは殺気がだだ漏れていた。

「み、澪……。落ち着け、落ち着けって……相手は七人だぞ」

「徳昂様の家来は全部で何人いる?」

「え? ……ご、五十人弱は……」

「そう。……皆殺しだな」

「まっ……こ、殺さないって……」

「琥太郎くんを頼むよ」

 澪はぽんっと五平の肩を叩き、男達が逃げていった方に目を向けた。五平が何か発する前に、地面を蹴り人とは思えぬ速さでその場からいなくなった。

「み、澪ぉ……無理はするなよぉ」

 五平は顔をひきつらせてか細い声を上げた。





 澪はその辺にいた男に声をかけた。

「つかぬことをお聞きしますが、徳昂様の家来の方々はどちらに?」

 澪が声をかけたのは瑛梓の家来である。澪との面識はないが、時折瑛梓と笑顔で話している姿を目にしていた男は「ああ、それならむこうの広場にいるだろう。よく集まっては悪巧みをしている」そう言った。

 他の家来達からも、徳昂の家来は評判がよくない。五平や琥太郎のように嫌がらせをされた者も少なくはなかった。

「ありがとうございます」

 話しかけるために一瞬圧し殺していた殺気は、男に背を向けた途端に解放された。ただならぬ殺気を肌で感じ、男はびくりと肩を震わせた。


 澪が言われた場所に行くと、先程五平と琥太郎を襲った男達がぎゃはぎゃはと下品な笑い声を立てていた。
 澪の姿に気付いた颯は「どうしましたか? お姫様。こんな男ばかりのむさ苦しい場所に何用で?」と声をかけた。

「五平と琥太郎くんが酷い怪我をしましてね。何か知っているのではないかと尋ねてきたのです」

「なぜここに?」

「あなた方ならやりかねないと言っているのですよ」

 澪は、己よりも背の高い颯に下からギロリと鋭い眼光を向けた。
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