【完結:R15】蒼色の一振り

雪村こはる

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失われた村【15】

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◇◇◇

 澪、歩澄、秀虎の三名は、栄泰城へと招き入れられ、客間へと通された。
 中には皇成と頼寿、家来数名が構えていた。皇成は相変わらず、派手な着物を身に付けており、動く度に光が反射する。

「よく来たな。待っていたぞ」

 皇成は豪快に笑い、何事もなかったかのように振る舞った。その様子に歩澄と秀虎は顔をしかめた。

「お前、燈獅子とうじしのことを忘れたわけではあるまいな」

 歩澄は鋭い眼光を放って皇成に低い声で唸るように言った。
 その言葉を聞いた皇成は、びくりと肩を跳ね上げらせ、「わ、忘れてなどおらぬ! おぬしが来なかったのではないか! も、もう他の者に明け渡してしまったぞ!」と目を泳がせながら言った。

 明らかな嘘だと解っている歩澄は、表情を変えることなく「誰にだ?」と尋ねた。

「こ、洸烈郷の商人だ!」

「ほう? 国宝級の刀をか?」

「妖刀だと聞いたのでな! 不吉であるからして売ってしまった」

 あははと乾いた笑い声を上げる皇成。ああ言えばこう言う。ぽんぽんと馬鹿げた嘘を重ねる皇成に、潤銘郷側の憤りは増していく。

 ただでさえ千依のことで皇成に嫌悪を抱いている澪。そこへ加えて国宝級の燈獅子を使った嘘までつく始末。人一倍刀に情熱をもっている澪は、その苛立ちを隠しきれず表情に現れてしまっていた。
 そんな澪の眼を見て、皇成は顔をひきつらせた。

「お、恐ろしい眼をするおなごだな……。余は、気の強いおなごは苦手だの……」

 女人であれば迷いなく興味を示す皇成だが、澪の射るような瞳に、すっかり興が冷めた様子だ。

「私の女だ」

 歩澄は、そんな皇成の様子にふんっと鼻を鳴らしてそう言った。
 皇成は、目を見開き「なっ……ということは、おぬしが匠閃郷の……姫?」と言いながら、最後には首をひねった。姫らしくない振る舞いに、怪訝な表情を浮かべた。

「お初にお目にかかります。宗方憲明の娘、澪にございます。本日はお招きいただきまして、ありがとうございます」

 澪は、精一杯の笑みを作って頭を下げた。

「う、うぬ……礼儀はあるようだな」

 体をのけ反らしたまま、数回頷いたのもつかの間、「して、八雲様。燈獅子は既にこの世にはない筈ですが、何故あのような嘘を?」と澪は続けた。

 歩澄も触れなかったその事実に、場は凍りつく。

「な、な、な、なんだと!? 嘘ではない!」

 明らかな動揺を見せる皇成。澪は、無表情で「私は匠閃郷の姫です。燈獅子の最期は、私がこの目で見届けました」と言った。

「なにぃー!? で、では、あれは……あれはぁ……偽物だったのかもしれぬなぁ……」

 明後日の方向を見て何の悪びれもなく皇成は言った。どこまでもしらを切るつもりだ。
 潤銘郷側の三人は目を細めた。

「そうでしたか。紛い物にて金儲けを企む者もおります故、間違って紛れ込んだのやもしれませんね」

 澪はにっこりと笑ってそう言った。優しい笑みを浮かべた澪に、鼻の下を伸ばす皇成。やはり女人には甘いのだ。

「そうだの、そうだの」

 皇成がへらへらしていると、「しかし……ご統主ともあろうお方が、燈獅子の目利きもできないとは……残念です」と澪は、はっと馬鹿にしたように鼻で笑った。

(喧嘩腰ぃーー!?)

 歩澄と秀虎は、ぎょっとして澪の方を向いた。栄泰郷側の人間は、さあっと血の気の引いたような顔をしていた。

 皇成は、ぴくぴくと頬をひきつらせた。女人にここまで馬鹿にされるのは初めての経験であった。

「悪いな。少々気性が荒くてな。私も手なずけるのに時間を要した」

 皇成の表情を見て、歩澄はくすくすと笑いながらそう言った。

「き、気性が荒いどころではないぞ! なんという無礼を!」

 皇成が顔を真っ赤にして言うが、歩澄の冷ややかな眼を前にして、ぐっと黙った。

「無礼? お前、己の無礼を忘れたわけではあるまいな?」

 その瞬間、発しられた殺気に皇成は目を逸らした。
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