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失われた村【34】
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門番が丁寧に歩澄に挨拶をする。何人かいる民が、歩澄を見つけてざわざわと騒ぎ始めた。
「城まで行くには遅すぎる。宿は用意できるか」
歩澄がそう言うと「はい! ただいま!」と門番が姿勢を正してそう言った。
すぐに他の門番達と話を始め、空いている宿を確認していた。
澪は頭上の大きな門を見上げた。匠閃郷との境にある正門と比べると、些か小さいが立派な造りであることには変わりない。
正門は真紅に金が縁取られているが、栄泰郷との狭間にあるこの門は深碧に金が縁取られている。実に豪華で思わず吐息の出るような美しさである。
澪は、初めて潤銘郷に来た時のことを思い出していた。正門を目にした時の感動といったらない。
行きは栄泰郷への興味と、刀の行方を考えており門の事など頭にはなかったが、こうして改めて見上げてみると装飾品のようにきらびやかであった。
「どうかしたか?」
澪の様子を不思議に思った歩澄が、同じように見上げた。
「門がとても綺麗です……」
「ああ、そんなことか」
歩澄はふっと柔らかく笑い、ずっと下の柱に目を向けた。柱にはまるで蛇が巻き付いているかのように金の筋が上に向かって伸びている。
「そんな事ではないです! すっごく綺麗なんですよ!」
「そうか。そう言ってもらえるのであれば、建てた者も報われるな」
「もう一つの門は何色ですか?」
「漆黒だ」
「わぁ……そこも金で縁取られているのですか?」
「ああ。見たいか?」
「はい!」
澪は興味深そうに目を輝かせた。潤銘郷の城下にはまだ数回しか降りたことがない。海側には行ったことがなく、この場からどれ程離れているかも想像できない程であった。
「では、今度な。明日は匠閃郷へ行く。刀を直さねばならぬからな」
「はい! 海に行くのが楽しみです!」
澪が潤銘郷に来て暫く経つが、知らぬ場所多くあり、それを一つずつ知っていく楽しみを覚えた。
その内に門番がすぐに宿を案内できると言い、澪達は促されるまま上質な宿に案内された。
宿と言えど、壁や屋根は頑丈な壁土で固められており、西洋の造りであった。
「こ、ここは……宿ですか?」
澪がそわそわと落ち着かない様子で中に入る。足を踏み入れた瞬間、真っ赤な絨毯が広がっており澪は慌てて足を引いた。
「よい、そのままで」
「で、ですが汚れてしまいます!」
「いいんだ。ここは外と同じだ」
「え……? こ、このように綺麗なところがですか?」
「そうだ」
長く続く絨毯の先には上まで伸びた階段が左右に別れている。真っ白な階段は神秘的であり、手摺は金色に輝いていた。見上げれば宝石を散りばめたかのような明るい光がいくつも輝いており、滴のようにいくつもの石が垂れ下がっていた。
「あ、あ、あれは何ですか!?」
澪は興奮して歩澄の袖をぐいぐいと引っ張った。共に天井を見上げた歩澄は「あれはシャンデリアという」と言いながらくすくすと笑う。
「しゃ、しゃんでり……あ?」
首を傾げている間に案内人がやってきて、男は襯衣に黒の上着を着ていた。着物とは違い、上下に別れている珍しい衣装に澪は釘付けになる。
「あの着物はなんですか……」
澪はまたしても歩澄の袖を引っ張り、小声で問いかけた。
「あれは洋服だ。初めて見るのか?」
「初めて見ましたよ! 何ですか、あれは……」
「お前、本当に田舎者だな……」
いよいよ歩澄は顔をしかめ、澪はむすっと膨れた。
「城まで行くには遅すぎる。宿は用意できるか」
歩澄がそう言うと「はい! ただいま!」と門番が姿勢を正してそう言った。
すぐに他の門番達と話を始め、空いている宿を確認していた。
澪は頭上の大きな門を見上げた。匠閃郷との境にある正門と比べると、些か小さいが立派な造りであることには変わりない。
正門は真紅に金が縁取られているが、栄泰郷との狭間にあるこの門は深碧に金が縁取られている。実に豪華で思わず吐息の出るような美しさである。
澪は、初めて潤銘郷に来た時のことを思い出していた。正門を目にした時の感動といったらない。
行きは栄泰郷への興味と、刀の行方を考えており門の事など頭にはなかったが、こうして改めて見上げてみると装飾品のようにきらびやかであった。
「どうかしたか?」
澪の様子を不思議に思った歩澄が、同じように見上げた。
「門がとても綺麗です……」
「ああ、そんなことか」
歩澄はふっと柔らかく笑い、ずっと下の柱に目を向けた。柱にはまるで蛇が巻き付いているかのように金の筋が上に向かって伸びている。
「そんな事ではないです! すっごく綺麗なんですよ!」
「そうか。そう言ってもらえるのであれば、建てた者も報われるな」
「もう一つの門は何色ですか?」
「漆黒だ」
「わぁ……そこも金で縁取られているのですか?」
「ああ。見たいか?」
「はい!」
澪は興味深そうに目を輝かせた。潤銘郷の城下にはまだ数回しか降りたことがない。海側には行ったことがなく、この場からどれ程離れているかも想像できない程であった。
「では、今度な。明日は匠閃郷へ行く。刀を直さねばならぬからな」
「はい! 海に行くのが楽しみです!」
澪が潤銘郷に来て暫く経つが、知らぬ場所多くあり、それを一つずつ知っていく楽しみを覚えた。
その内に門番がすぐに宿を案内できると言い、澪達は促されるまま上質な宿に案内された。
宿と言えど、壁や屋根は頑丈な壁土で固められており、西洋の造りであった。
「こ、ここは……宿ですか?」
澪がそわそわと落ち着かない様子で中に入る。足を踏み入れた瞬間、真っ赤な絨毯が広がっており澪は慌てて足を引いた。
「よい、そのままで」
「で、ですが汚れてしまいます!」
「いいんだ。ここは外と同じだ」
「え……? こ、このように綺麗なところがですか?」
「そうだ」
長く続く絨毯の先には上まで伸びた階段が左右に別れている。真っ白な階段は神秘的であり、手摺は金色に輝いていた。見上げれば宝石を散りばめたかのような明るい光がいくつも輝いており、滴のようにいくつもの石が垂れ下がっていた。
「あ、あ、あれは何ですか!?」
澪は興奮して歩澄の袖をぐいぐいと引っ張った。共に天井を見上げた歩澄は「あれはシャンデリアという」と言いながらくすくすと笑う。
「しゃ、しゃんでり……あ?」
首を傾げている間に案内人がやってきて、男は襯衣に黒の上着を着ていた。着物とは違い、上下に別れている珍しい衣装に澪は釘付けになる。
「あの着物はなんですか……」
澪はまたしても歩澄の袖を引っ張り、小声で問いかけた。
「あれは洋服だ。初めて見るのか?」
「初めて見ましたよ! 何ですか、あれは……」
「お前、本当に田舎者だな……」
いよいよ歩澄は顔をしかめ、澪はむすっと膨れた。
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