【完結:R15】蒼色の一振り

雪村こはる

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楽しいお茶会……?【1】

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 太陽が照りつける。陽炎がたつ程に辺りは暑く、建物の日陰だけが救いである。
 外では激しい蝉の声が響き、真夏の風情を感じさせる。

 建物内には、潤銘郷の人間以外は皆集まっていた。集ったのは各統主とその正室、側近の重臣一名ずつである。

 翠穣郷の落伊吹が主催の茶会がいよいよ開催されようとしていた。場所は栄泰郷にある御堂であり、月に一度の統主評定が行われるところだ。
 広い部屋に大きな洋風座卓が置かれ、それを各郷が囲むようにして椅子に座っていた。
 栄泰郷統主の正室、紬と洸烈郷統主の正室、朱々は既に何年も前から交流がある。横並びになり、女同士で反物について話に華を咲かせていたところであった。

「一番年下の小僧が遅れてくるとはいかがかなものか」

 口を開いたのは洸烈郷統主、煌明である。歩澄が洸烈郷を訪ねてきてから二十日以上が経っている。あれから無事に酒は届いたが、歩澄の生意気な態度には未だに煮え切らない思いを抱いていた。

「まだ時間には早い。本日は単なる顔合わせの場に過ぎない。ゆっくり待てばよい」

 宥めるかのように言うのは伊吹。誰よりも煌明の性格を理解しており、短気な性格故こう苛々することも想定内である。
 扇子を仰ぎ、暑さを癒している皇成は「統主評定は改めて開くのか?」と疑問を投げ掛けた。

「そうなるであろうな」

「王には誰がなる」

 答えた伊吹の言葉に被せるようにして煌明が言う。先日の歩澄との件をまだ引きずっていた。

「本日は顔合わせだけだと言ったはずだが?」

 じろりと目を細めて伊吹は煌明を一睨した。

「そうも言っていられまい。民も今後どうなるか気が気でないはずだ。未だに誰も手を引く気はないのであろう?」

 酒を飲んでいない煌明の機嫌は頗る悪い。鼻をならし、己は絶対に譲らぬと腕を組んでふんぞり返る。

「俺は王位争いから手を引く」

 あっさり伊吹がそう言ったことで、煌明と皇成は「なに!?」と体を前のめりにさせた。
 正室二人も驚いて、目を見開いた。

「但し、翠穣郷に害が出ないのが条件だ」

「そういうことであれば、俺は手を出さないと約束しよう」

「余ももっと翠穣郷との取引を増やしてもよいぞ」

 にやりと笑った煌明に、にんまりと頬を上げる皇成。どちらも敵が一人減ったと喜びを露にする。
 予想通りの反応に、伊吹は軽く息をつき「しかし……どこに加勢するかはまず澪の意見を聞きたい」と言った。

 皇成は目をぱちくりと瞬かせ「匠閃郷の姫か?」と首を傾げる。
 怪訝な顔で煌明は「何故女の意見など聞く?」と太い声を唸らせた。

「女は愛でるものであり、男の争い事に口を出すものではない。のう?」

 皇成は扇子を持たぬ左手で、紬の肩を抱いた。体を引き寄せられた紬は、そのまま皇成の胸に頭を預け「はい、旦那様」と愛らしい笑みを浮かべた。

「愛でるものか……いつまでもそのような考え方だから困るのだ。神室歩澄の側で支える姫のことだ。今後、王となった後にどのように考えているのか知りたいのだ」

 呆れた様子で皇成を見据えた後、伊吹は顔の前で手を組んで言った。
 潤銘郷に手を貸すと言ってから幾日も経った。澪は、己の言葉の真意を理解し、歩澄のために何をするべきか考えてくるだろうかと気にやんでいた。
 己の目が正しければ、澪はきっと王となった先のことまで考えているはず。仮に何も考えずにこの茶会に参加するような女であれば、己の見込み違いだったと愕然とする他ないと伊吹は考えていた。
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