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楽しいお茶会……?【3】
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次に伊吹はその視線の先を紬へと移す。
「栄泰郷の奥方殿はどうだ?」
「え? うーん、千両ですよね……あ! 民のことを考えるのであれば、少しずつ民に配ってはどうでしょうか」
紬はパンっと両手を合わせ、名案とでも言わんばかりに歯を出して笑った。
「ほう。民に? 栄泰郷は広いが、各々に配ると一人あたり何文になるかな?」
伊吹はついにおかしくて手を口元に持っていき、親指の付け根を唇に押し当ててクスクスと笑う。
「おぬしは馬鹿だのう……」
口を尖らせ、皇成はそっと紬の頭を撫でた。
「旦那様、酷いです」
「よい、よい。馬鹿な子ほど可愛いものよ」
皇成は、はっはっはと扇子を扇ぎながら笑っている。伊吹も最後にクスリと笑うと「そういうことです。貴女方に意見を求めなかったのは」と言った。
重臣である頼寿、大和は正室の珍回答に苦笑するしかない。
そこへようやく到着した歩澄と澪。歩澄についてきた重臣は秀虎であった。栄泰郷、洸烈郷へ呼ばれた時も秀虎を連れていった。統主全員が集う茶会となれば、実際の歩澄の右腕である秀虎が参加するのは当然の流れであった。
しかし、皇成、頼寿は秀虎の横顔を見てびくりと肩を震わす。和解が成立したかのように見えたが、秀虎の顔を見ると千依の首が地面を転がった時のことを思い出すのだ。
秀虎は、参加者を見渡し「遅くなってしまい、申し訳ありません」と言った。
「いや、約束の刻丁度だ。掛けるといい」
伊吹がそう言ったことで、空席となっていた翠穣郷の隣へと一行は腰をかける。
自然と栄泰郷と向き合う形になり、皇成と頼寿は居心地の悪さを感じていた。
これで全ての役者が揃った。御堂の扉を開けて左側の手前から頼寿、皇成、紬、朱々、煌明と並び、右側手前から澪、秀虎、歩澄、大和、伊吹と並ぶ形となった。
座るや否や、伊吹は「突然だが、今しがた皆で話をしていてな。誰かが王となった場合のことだ」と言った。
来て早々そんな話かと歩澄は怪訝な表情を浮かべる。
「ただの茶会だと言ったのは、貴様ではなかったか」
「ああ。単なる雑談に過ぎん。ここで王を決めようなどという話ではない。少し聞きたいことがあっただけだ」
「聞きたいこと?」
「おぬしが王となったあかつきには、翠穣郷の民、三百人を半年間仕えさせるよう手配しよう」
伊吹は胸の下辺りまである座卓の面に肘をつき、歩澄を覗き込むようにしてにやりと笑う。
伊吹と歩澄の間にいる大和は居心地の悪さを感じながら、ぴったりと背を背もたれにくっ付け、伊吹の視界を遮らないよう努めた。
それを聞いていた朱々はクスリと笑い、煌明に近付き「民三百人ですって。私達は千両なのに」と小声で言った。
「よせ。黙っていろ」
煌明は、ぎゅっと眉間に皺を寄せ、澪に目を向けた。朱々があのような回答をした今、澪の発言が気になって仕方がなかった。
「その時、澪。お前ならどうする?」
歩澄を通り越して、その向こう側にいる澪を名指ししたことに潤銘郷の人間は驚きを隠せずにいた。
「栄泰郷の奥方殿はどうだ?」
「え? うーん、千両ですよね……あ! 民のことを考えるのであれば、少しずつ民に配ってはどうでしょうか」
紬はパンっと両手を合わせ、名案とでも言わんばかりに歯を出して笑った。
「ほう。民に? 栄泰郷は広いが、各々に配ると一人あたり何文になるかな?」
伊吹はついにおかしくて手を口元に持っていき、親指の付け根を唇に押し当ててクスクスと笑う。
「おぬしは馬鹿だのう……」
口を尖らせ、皇成はそっと紬の頭を撫でた。
「旦那様、酷いです」
「よい、よい。馬鹿な子ほど可愛いものよ」
皇成は、はっはっはと扇子を扇ぎながら笑っている。伊吹も最後にクスリと笑うと「そういうことです。貴女方に意見を求めなかったのは」と言った。
重臣である頼寿、大和は正室の珍回答に苦笑するしかない。
そこへようやく到着した歩澄と澪。歩澄についてきた重臣は秀虎であった。栄泰郷、洸烈郷へ呼ばれた時も秀虎を連れていった。統主全員が集う茶会となれば、実際の歩澄の右腕である秀虎が参加するのは当然の流れであった。
しかし、皇成、頼寿は秀虎の横顔を見てびくりと肩を震わす。和解が成立したかのように見えたが、秀虎の顔を見ると千依の首が地面を転がった時のことを思い出すのだ。
秀虎は、参加者を見渡し「遅くなってしまい、申し訳ありません」と言った。
「いや、約束の刻丁度だ。掛けるといい」
伊吹がそう言ったことで、空席となっていた翠穣郷の隣へと一行は腰をかける。
自然と栄泰郷と向き合う形になり、皇成と頼寿は居心地の悪さを感じていた。
これで全ての役者が揃った。御堂の扉を開けて左側の手前から頼寿、皇成、紬、朱々、煌明と並び、右側手前から澪、秀虎、歩澄、大和、伊吹と並ぶ形となった。
座るや否や、伊吹は「突然だが、今しがた皆で話をしていてな。誰かが王となった場合のことだ」と言った。
来て早々そんな話かと歩澄は怪訝な表情を浮かべる。
「ただの茶会だと言ったのは、貴様ではなかったか」
「ああ。単なる雑談に過ぎん。ここで王を決めようなどという話ではない。少し聞きたいことがあっただけだ」
「聞きたいこと?」
「おぬしが王となったあかつきには、翠穣郷の民、三百人を半年間仕えさせるよう手配しよう」
伊吹は胸の下辺りまである座卓の面に肘をつき、歩澄を覗き込むようにしてにやりと笑う。
伊吹と歩澄の間にいる大和は居心地の悪さを感じながら、ぴったりと背を背もたれにくっ付け、伊吹の視界を遮らないよう努めた。
それを聞いていた朱々はクスリと笑い、煌明に近付き「民三百人ですって。私達は千両なのに」と小声で言った。
「よせ。黙っていろ」
煌明は、ぎゅっと眉間に皺を寄せ、澪に目を向けた。朱々があのような回答をした今、澪の発言が気になって仕方がなかった。
「その時、澪。お前ならどうする?」
歩澄を通り越して、その向こう側にいる澪を名指ししたことに潤銘郷の人間は驚きを隠せずにいた。
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