【完結:R15】蒼色の一振り

雪村こはる

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楽しいお茶会……?【4】

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 澪はひょっこりと秀虎の横から顔を出し「私ですか?」と尋ねた。

「ああ、歩澄ではなくお前に権限があるとする。さあどうする?」

 そう聞かれ、澪は歩澄の顔に視線を移す。それを感じ取った歩澄は、澪の方に体を向けた。ふっと微笑むと「私も是非聞きたい」と言った。
 澪は、首を捻りうーんと暫し考える。

「そうですね……まず百名は匠閃郷へ、七十五名ずつは栄泰郷と洸烈郷へ、残り五十名を潤銘郷に振り分けます」

「何故?」

 伊吹は眉を上げ、先を急かす。

「匠閃郷は一番貧しい村が多くある郷です。いくつか復興しましたが、以前落様から指摘を受けたように田や畑が完全ではありません。翠穣郷の民が手伝って下さるのであれば、空いた土地を均し更に田と畑を作りたいのです。
 翠穣郷の穀物は豪雨にも負けない強さをもつと聞きます。匠閃郷の民が飢えで苦しむのは、毎年続く嵐に穀物が耐えきれないことにも原因があります。故に、翠穣郷ほどの良質な穀物が育たなくとも、食うに困らぬだけの食物が自分達で作れるようになればきっと今より生活は楽になるはずです」

 そう言った澪の顔を見て、皇成と煌明は目の色を変えた。
 更に澪は続ける。
 
「栄泰郷は一見どこの村も経済が回り潤っているかのように見えますが、一家あたりの子供の数が他の郷よりも多いと聞きました」

「あ、ああ……。その通りだ。子宝に恵まれるよう催し事が多くなされているのもあって、一夫婦に授かる子供は平均で五人。多いところは十人に近い」

 皇成は、扇子を閉じて真っ直ぐ澪を見つめた。

「そのようですね。ですから、仕事があって夫は稼げて経済は動いているように見えますが、子供が多い故に一家族あたりは決して裕福ではないのです」

「うむ……」

「ですから、全ての食物も翠穣郷から買い付けるのではなく、一般の家庭でも野菜を栽培できるよう翠穣郷の民から知識を提供していただくのです」

「家庭に?」

 目を見開いたのは伊吹であった。
 澪が言ったように、栽培方法や肥料の選抜は翠穣郷独自のものであり、他郷では穀物や野菜を良質なものへと育てるにはそれを生業にしている民でも困難なのだ。
 栄泰郷は、郷の特徴として商店を開いている家が多く、食物を育てる知識などもたない者が多い。そこへきて家庭で野菜を育てるという発想自体驚くべきことであった。
 
「匠閃郷でも簡単な野菜であれば家庭でも育ちます。しかし、米や果実、新鮮な魚など翠穣郷でしか採れないものは今まで通り翠穣郷から買い付けるようにすれば、翠穣郷の経済にもそれほど影響はでません」

「ああ……そうだな」

「また、形も綺麗で食欲をそそる翠穣郷の野菜は、素人が作ろうと思って作れるものではありませんから。家庭で取れたとしても時には買ってでも食べたいと思うでしょう」

 皇成、煌明は黙って澪の言葉に耳を傾けた。紬と朱々は、首を傾げる。裕福な家で育ち、良質な食物を食べて育った二人には、家で野菜を作るなどという思考は想像できるものではなかった。
 歩澄と秀虎は、澪らしいとふっと頬を緩めた。

「洸烈郷は他の郷と比較して、米と水の消費量が一番多いようですね」

「剣術や武術により鍛練を積む者が多いからな。力をつけるためには、その分食することも必要だ」

 栄泰郷から洸烈郷へと的が変わったことで、煌明は姿勢を正した。
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