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楽しいお茶会……?【13】
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「しかし、他郷の経費から出させてどうするつもりなのだ? このままでは栄泰郷と洸烈郷の民達の困窮は免れないぞ」
歩澄はそこは考えているのかと少し目を細めた。しかし、澪は冷静に頷く。
「大丈夫です。あの者達があの経費を持っていたところで適切な使い方などできないのですから、それなら歩澄様が持っていた方が今後の役に立ちます」
「なっ……」
己の考えの斜め上をいく澪の考え方に、歩澄は表情を失った。
「王になるのは歩澄様なのですから、その後栄泰郷と洸烈郷の民の生活を改善させるよう歩澄様が手を回せばよいのです。匠閃郷と同じように」
「……これではどちらが統主かわからぬな」
歩澄は目頭を押さえて軽く息をついた。
「私は、歩澄様に守られてばかりいるのは嫌なのです。貴方についていくと決めたのですから、時には共に悪者にもなりますよ」
肩をすくめて笑う澪に、歩澄の心はじんと暖かくなった。冷酷非道の名を一人で背負ってきた歩澄。慈悲はなく、雪のように冷たい目をした残酷な統主。そう言われ続けてきた。
秀虎さえ本当の己を理解してくれていればそれでいい。そう思ってここまでのし上がってきた歩澄だが、凍てついた心まで溶かしてくれるのは、後にも先にも澪しかいないだろうと思わずにはいられなかった。
「……期待している。私は王となり、ゆくゆくはより多くの国と貿易を結ぶ大国にする」
「はい! とりあえずこれで潤銘郷は黒字に戻りましたし、幸先いいですね!」
目の前の統主達と比較して、実に幸せそうな空気を纏う潤銘郷。
歩澄と澪に挟まれて、全てのやり取りが筒抜けの秀虎は、なんとも恐ろしい姫を味方につけたものだと身震いした。
その後の茶会は滞りなく終わりを告げた。皇成と煌明だけは肩を落としていたが、上機嫌な紬と朱々に連れられ城へと帰っていった。
澪は栄泰郷の珍しい茶を振る舞われ、いつまでも味比べをしていた。
そこへ話しかけてきたのは伊吹である。澪の隣へと椅子を持っていき、嬉しそうに腰かける。
「先程は見事であった。まさかあの話の流れから潤銘郷の名産である碧空石を売り付けるとは。しかも千二百両ときた。そなたは商人に向いているやもしれぬな」
声を弾ませて言う伊吹の首もとを掴み、後ろにぐっと引く。その刹那、ぬっと現れたのは歩澄である。
先程まで秀虎を挟んだ向こう側に座っていたはずだと視線だけを動かす。
黒の布地に金糸で模様を纏った上質な着物を握ったまま、歩澄は「油断も隙もない男だ。澪と話したくば私を通せ」と言った。
「何を言うか。私は翠穣郷統主として、匠閃郷の姫を褒めているだけのこと」
「貴様……そのような言い訳を」
「落様、本当に歩澄様が王になったあかつきには民の応援をお願いできるのでしょうか?」
まるで気にも止めていない様子の澪は、茶器を持ったまま、歩澄の腕を掴んで睨み合っている伊吹に問い掛けた。
「あ、ああ……。あの意見には俺も賛同したい。まあ……濾過機の設計図を提示するかいなかは悩むところだが、翠穣郷の不利益に繋がらないよう明確な計画が聞けるようになれば、前向きに検討しよう」
「それはありがたいです! 全ての郷の民が飢えも争いも知らずに生活できる時が訪れるといいですね!」
澪が屈託のない笑みを向けたことで、伊吹の心臓は撃ち抜かれたかのような衝撃を受けた。
顔を紅潮させ、歩澄の腕を掴んでいた手で己の鼻と口を覆った。ツンとした痛みが鼻の奥で疼いたのだ。
「……鼻血が出そうだ」
「貴様、今すぐ斬り殺してやろうか」
髪が逆立つ程に殺気を放つ歩澄は、今にも刀を抜きそうである。それをまあまあと宥める秀虎。
澪は、伊吹の申し出に満足し二人のやり取りなどお構いなしに茶を堪能するのであった。
歩澄はそこは考えているのかと少し目を細めた。しかし、澪は冷静に頷く。
「大丈夫です。あの者達があの経費を持っていたところで適切な使い方などできないのですから、それなら歩澄様が持っていた方が今後の役に立ちます」
「なっ……」
己の考えの斜め上をいく澪の考え方に、歩澄は表情を失った。
「王になるのは歩澄様なのですから、その後栄泰郷と洸烈郷の民の生活を改善させるよう歩澄様が手を回せばよいのです。匠閃郷と同じように」
「……これではどちらが統主かわからぬな」
歩澄は目頭を押さえて軽く息をついた。
「私は、歩澄様に守られてばかりいるのは嫌なのです。貴方についていくと決めたのですから、時には共に悪者にもなりますよ」
肩をすくめて笑う澪に、歩澄の心はじんと暖かくなった。冷酷非道の名を一人で背負ってきた歩澄。慈悲はなく、雪のように冷たい目をした残酷な統主。そう言われ続けてきた。
秀虎さえ本当の己を理解してくれていればそれでいい。そう思ってここまでのし上がってきた歩澄だが、凍てついた心まで溶かしてくれるのは、後にも先にも澪しかいないだろうと思わずにはいられなかった。
「……期待している。私は王となり、ゆくゆくはより多くの国と貿易を結ぶ大国にする」
「はい! とりあえずこれで潤銘郷は黒字に戻りましたし、幸先いいですね!」
目の前の統主達と比較して、実に幸せそうな空気を纏う潤銘郷。
歩澄と澪に挟まれて、全てのやり取りが筒抜けの秀虎は、なんとも恐ろしい姫を味方につけたものだと身震いした。
その後の茶会は滞りなく終わりを告げた。皇成と煌明だけは肩を落としていたが、上機嫌な紬と朱々に連れられ城へと帰っていった。
澪は栄泰郷の珍しい茶を振る舞われ、いつまでも味比べをしていた。
そこへ話しかけてきたのは伊吹である。澪の隣へと椅子を持っていき、嬉しそうに腰かける。
「先程は見事であった。まさかあの話の流れから潤銘郷の名産である碧空石を売り付けるとは。しかも千二百両ときた。そなたは商人に向いているやもしれぬな」
声を弾ませて言う伊吹の首もとを掴み、後ろにぐっと引く。その刹那、ぬっと現れたのは歩澄である。
先程まで秀虎を挟んだ向こう側に座っていたはずだと視線だけを動かす。
黒の布地に金糸で模様を纏った上質な着物を握ったまま、歩澄は「油断も隙もない男だ。澪と話したくば私を通せ」と言った。
「何を言うか。私は翠穣郷統主として、匠閃郷の姫を褒めているだけのこと」
「貴様……そのような言い訳を」
「落様、本当に歩澄様が王になったあかつきには民の応援をお願いできるのでしょうか?」
まるで気にも止めていない様子の澪は、茶器を持ったまま、歩澄の腕を掴んで睨み合っている伊吹に問い掛けた。
「あ、ああ……。あの意見には俺も賛同したい。まあ……濾過機の設計図を提示するかいなかは悩むところだが、翠穣郷の不利益に繋がらないよう明確な計画が聞けるようになれば、前向きに検討しよう」
「それはありがたいです! 全ての郷の民が飢えも争いも知らずに生活できる時が訪れるといいですね!」
澪が屈託のない笑みを向けたことで、伊吹の心臓は撃ち抜かれたかのような衝撃を受けた。
顔を紅潮させ、歩澄の腕を掴んでいた手で己の鼻と口を覆った。ツンとした痛みが鼻の奥で疼いたのだ。
「……鼻血が出そうだ」
「貴様、今すぐ斬り殺してやろうか」
髪が逆立つ程に殺気を放つ歩澄は、今にも刀を抜きそうである。それをまあまあと宥める秀虎。
澪は、伊吹の申し出に満足し二人のやり取りなどお構いなしに茶を堪能するのであった。
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