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将来の夢

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「なんなんだよお前。千景は俺を裏切らなかったし、亜純のことを好きにはならなかった」

「それはどうかしらね」

 この時の真白は千景が亜純を好きだったとは言わなかったが、意味深に言葉を濁らせた。

「とにかくもう連絡してくんなよ。俺たち夫婦の問題なんだから。お前も千景も関係ない」

 そう言って一方的に電話を切った。この数年間、真白は依に干渉してくることはなかった。それは表向きには亜純と依が上手くいっているように見えたからだ。
 それが今回セックスレスが発覚し、粗を見つけたとばかりに依に詰め寄ってきたように見えた。

 依にも真白が一体何をしたいのか理解できなかった。一度持った関係を弱味に依を揺することもなかったし、亜純にバラすこともなかった。
 今まで平穏に暮らせていたのに、それを真白が壊そうとしているようにみえた。

 そして依がなによりも気がかりなのは亜純だ。真白にセックスレスであることを話したということは、やはり子供が欲しいことを悩んでいる証拠でもある。
 あの半年前の一件から一度は亜純を抱こうとは思ったが、やはりどうしても無理だった。避妊をすれば余計に悲しませることになりそうで、かといって妊娠してしまっても困るのだ。

 依はあれから半年経ち、真白への嫌悪を忘れかけた時、同窓会の知らせを受けて嫌な気持ちが募った。その連絡をよこしたのも真白だったからだ。

「久しぶり。あれから亜純を抱いたの?」

「それを聞くためにかけてきたのかよ」

「違うわよ。今事故に遭って車がぐちゃぐちゃなの」

「は!?」

「保険屋さんの番号がわからなくて。今警察がきてるから、保険屋さんに繋いでくれる?」

「ぐちゃぐちゃって……お前は大丈夫なのかよ」

「胸を強く打ったみたい。聴取が終わったら病院に行くわ。多分廃車でしょうね」

「廃車になるほどの事故なのにそんな悠長なことを……」

 依は唖然とした。大きな事故を起こせば誰だってパニックになるだろう。それなのに真白といったらいつもと変わらない様子で、重大な要件よりも先に亜純と依のセックスレスについて尋ねたのだから。
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