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友人の恋人

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 緒方千景はスパークリングワインが入ったグラスを持ちながら、遠くに亜純と真白の姿を確認していた。依よりも先に2人をみつけたものだからすぐにでも駆け寄って久しぶりに挨拶したいと思っていたところだ。
 しかし、2人の表情がなんとなく楽しいものではないように見えて、千景は足を止めた。高校時代から彼女たちのことを知っている。2人はいつだって楽しそうにしていた。

 千景から見る亜純は元気いっぱいで、自分をしっかり持っている芯の強い女の子だった。対して真白はどこか影があってミステリアス。時々無表情で、他人を睨みつけることもあった。
 千景に対してもなんとなく冷たい時もあり、千景は少し真白のことが苦手だった。けれど、亜純といる時はよく笑う普通の女の子に見えた。客観的に見ても、真白が亜純のことを好いているのはよくわかる。だから、高校時代に真白が亜純から依を奪おうとしている。なんて噂が立った時には何を言ってるんだか……と呆れる他なかった。

 先日亜純と連絡を取った時には、真白とは半年ほど会っていないと言っていた。久しぶりに会ったら、楽しそうに談笑していてもおかしくないものをなぜだか亜純の表情は曇っている。真白は怒ったように眉を吊り上げて、まるで亜純を責めているかのようにも見えた。

 まさか、喧嘩でもしたのか。同窓会に来てわざわざするようなことではないが、半年合わなかった理由がそこに隠されているのかもしれない。なんて千景は思った。

 女性同士のいざこざに男の自分が割って入って反感を買わないか。それとも、久しぶりに会ったんだからと宥めることに成功できるだろうかとしばし考えた。

「千景」

 そんなことを考えているうちに声をかけられて振り返る。散々、久々に会った同級生たちに捕まって今の仕事の話をしたばかりだ。また同じ話をしなきゃならないかな……と少し面倒に思いながら振り返ればそこに立っていたのは依だった。
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