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友人の恋人

03

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 千景は違和感を抱いた。依が今まで上機嫌だったのに急に不機嫌そうに目を逸らしたからだ。
 それだけではない。先日亜純と話をした時にも子供の話題になった途端に言葉を濁された気がした。
 亜純は必死に誤魔化しているようだったし、あの時には千景もさほど気にしていなかった。しかし、依の反応を見て2人共どこかおかしいと感じたのだ。

 昔から千景は何かと洞察力に長けている。こういった勘はわりと当たる。

「あ……なんかごめん。もしかして、不妊症とかだったりする……?」

 いつか依が「俺と亜純との子供なら絶対可愛いだろ」と声高らかに言っていたから、千景だってまさか依の方が亜純との子供を望んでいないとは思いもしない。
 2人揃って顔を曇らせるのは、子供ができない理由があるのではないかと思うのが普通だった。

「いや……まあ……」

 千景の言葉にはっとした依は、既に真白にはセックスレスのことが知れてしまっているが千景にはなんとしてでも隠し通そうと顔を背けた。
 同時に本当に俺か亜純のどちらかが不妊症ならいいのに。そんなことまで考えた。

 いっその事、亜純に俺には精子がないって言ってみようか……いや、それでもしじゃあ避妊しなくていいって言われたら?
 妊娠する可能性がある以上、亜純のことは抱けないし……それなら亜純が子供を産めない体ならいいのに。そしたら一生俺が寄り添って亜純のためだけに生きられるのに。

 そんなことを考えていることなど知る由もない千景は、怪訝そうに顔をしかめた。それからチラリと亜純と真白の方を見た。
 今度は亜純の背中をさすっている真白の姿が見える。さっきまで喧嘩をしていた様子だったのに、真白が言いすぎて慌てて亜純を謝っているのか? それとも、違う誰かに怒っているんだろうか……。

 千景はゆっくりと視線を依に戻した。真白は何か知ってるんじゃないか。知っていてその何かに怒っているんじゃないか。その原因が依だとしたら……。と思いながら千景ばゴクリと息を飲んだ。
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