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友人の恋人

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 亜純に執着する依のことだから、2人で子供を望んでいて妊娠しないのであれば、夫婦揃って受診するだろう。
 それに、もしも不妊症で悩んでいるのなら、亜純の悩みはセックスレスではなく不妊だったはず。そうはならずに亜純と真白が依に不満を抱くのであれば、理由はどうであれ依が原因であることには変わりない。

 千景はゆっくりと真白の後を追うようにして、亜純に近寄った。

「千景は何食べる? このお魚美味しかったよ」

 亜純は、真白と何を話していたのかなんて野暮はことは聞かない。自分の皿に盛り付けてあるおそらくおかわりであろう魚を指さした。

「じゃあ、俺もそれ食べようかな」

「うん。1つ? 2つ?」

「とりあえず1つ」

 千景が手を伸ばすよりも先に亜純が自分の皿をテーブルに置いて、千景の皿を取ったものだから、千景はありがたくそれを見守った。
 あれもこれもと亜純がオススメしてくれたものを皿に取ってもらい受け取ると、皿の底からじんわりと料理の熱が伝わってきた。

 千景はじっと依の視線を感じながら、料理を口に運んだ。亜純の言った通り、卵の香りが強いタルタルソースが合っていて美味だった。

 亜純と真白はすぐにきゃっきゃとはしゃぎながらデザートを選んでいる。食事の合間にデザートを食べるのかなんて呑気に考えていると「真白と何話してたんだよ」と聞いてきたのは依だった。

 今更の仲でデリカシーのなさを語る気はない。おそらくこちらは聞いてくるであろうと千景は思っていたから。
 きっと真白が夫婦のセックスレスについて話したんじゃないかと気が気じゃないのだ。

「お礼を言われただけだよ。亜純に今日のこと言っておいてくれてありがとうって」

「……ふーん」

 妙な探りを入れた依は、自分が亜純に同窓会のことを隠していたことを千景に知られたのだと察して目を泳がせた。

「まあ、依は俺が言ったのが気に食わなかったみたいだけど」

 セックスレスについては聞けないが、亜純を悲しませていることに気付かせてやる必要はあると千景は思った。
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