したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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友人の恋人

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「依さ、子供はいらないからえっちしないって言ったけど、その前まではしてたよね? 子供いらなかったのに」

 亜純の問い詰めに依はぐっと黙り込んだ。自分の矛盾にようやく気付いたような顔をした。未だに玄関から入って1つ目のドアを開けたすぐそこのキッチンで2人立ったまま顔を見合う。
 今更座って話そうか、なんて言い出せる雰囲気ではなかった。

「それは……亜純のことが好きだったから。でも、途中で気付いたんだよ。これじゃ、自分勝手だなって。亜純が望んでたものを叶えられないんだから、自分も我慢しなきゃって」

「それを自己判断したことは自分勝手じゃないの? なんで子供はいらないって思った時に言ってくれなかったの?」

「だって亜純が悲しむだろ? 俺は亜純のこと悲しませたくなかった」

「時間が経ったら悲しまないと思ったの? 私、今の方がよっぽど悲しいよ。本当は結婚してすぐにでも子供が欲しかったのに。依がもう少し待ってって言ったから待ったのに」

「うん……。でも、亜純も俺のこと好きだって言ってくれたじゃん。だから、2人でも幸せだって思えるように頑張ろうと思って」

「子供を作らないために1年もセックスレスで、2人でいて私がずっと何の不満もなく幸せだったの思うの?」

 自分に素直な亜純は、思ったことをどんどん言葉にしていく。今まで依のために避けてきた話題も、もう遠慮することはない。

 亜純は今まで幸せだったし、この生活に不満を抱くのは贅沢だと思っていた。けれど、まるで考え方の違う依とこれ以上話し合いをしても埒が明かないと思い始めていた。

「だから、亜純が不満に思うなら俺は亜純とシたいと思ってるし」

「……私は、今更もう依とはシたくない」

 亜純はいつの間にか止まった涙が頬の上で乾くのを感じながら言った。
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