したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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友人の恋人

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 依は亜純の言葉に目を見開いた。避妊してなら抱いてくれるのかと亜純に尋ねられた時、依は心底嬉しく感じた。
 亜純が自分を求めてくれている。子供はいなくてもいいから自分だけを必要としてくれるんじゃないか。そんなふうにも思った。

 しかし、たったこれだけの時間の中で亜純は考えを変えた。しっかりと自分の意思を持っているわりに、依に合わせてくれる亜純はなんだかんだ言って今回も自分に従ってくれるのではないかと心のどこかで期待していた。
 突き放すような亜純の言葉に依は初めて事の重大さに気付いた。

「亜純、待って俺……」

「ちょっと外の空気吸ってくる。……今日はこれ以上話せそうにない」

「え? 待ってよ。まだ何も解決してない」

「解決ってなに? 勝手に自己解決してたのは依でしょ? 子供を望まない依とこれからどんなに話し合ったって私たちの意見が合うことはないと思う。……少し、1人にして」

 亜純は依の横を通り過ぎ、玄関に向かうと追いかけてくる依を振り切って外へ出た。勢い良くドアを閉め、外から押さえると依はようやく諦めたように一度回したドアノブを離した。
 定位置に戻ったドアノブを見てから亜純はその場を離れた。

 勢いのまま外に出たはいいが、同窓会から戻ったままの格好だ。ドレスアップした姿でどこへ行けというのか。すっかり遅くなってしまった時間帯でフラフラと出歩くのも危険だ。かといって飛び出してしまった手前、すぐに玄関のドアを開けるわけにはいかない。

 幸いバッグの中には車のキーが入っていた。現金を持っていた方がいいと依と出かける前に1人で銀行へ行ったからだ。
 一旦車の中で考えを整理しよう。そう思いながら亜純はアパートの階段を降りていった。

 その間にバッグの中でバイブレーションを感じ、歩きながらスマホを取り出す。歩き慣れないヒールで足を挫かないよう細心の注意を払いながら。
 ちょうど届いたメッセージの相手は千景だった。
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