88 / 243
友人の恋人
29
しおりを挟む
依は亜純の言葉に目を見開いた。避妊してなら抱いてくれるのかと亜純に尋ねられた時、依は心底嬉しく感じた。
亜純が自分を求めてくれている。子供はいなくてもいいから自分だけを必要としてくれるんじゃないか。そんなふうにも思った。
しかし、たったこれだけの時間の中で亜純は考えを変えた。しっかりと自分の意思を持っているわりに、依に合わせてくれる亜純はなんだかんだ言って今回も自分に従ってくれるのではないかと心のどこかで期待していた。
突き放すような亜純の言葉に依は初めて事の重大さに気付いた。
「亜純、待って俺……」
「ちょっと外の空気吸ってくる。……今日はこれ以上話せそうにない」
「え? 待ってよ。まだ何も解決してない」
「解決ってなに? 勝手に自己解決してたのは依でしょ? 子供を望まない依とこれからどんなに話し合ったって私たちの意見が合うことはないと思う。……少し、1人にして」
亜純は依の横を通り過ぎ、玄関に向かうと追いかけてくる依を振り切って外へ出た。勢い良くドアを閉め、外から押さえると依はようやく諦めたように一度回したドアノブを離した。
定位置に戻ったドアノブを見てから亜純はその場を離れた。
勢いのまま外に出たはいいが、同窓会から戻ったままの格好だ。ドレスアップした姿でどこへ行けというのか。すっかり遅くなってしまった時間帯でフラフラと出歩くのも危険だ。かといって飛び出してしまった手前、すぐに玄関のドアを開けるわけにはいかない。
幸いバッグの中には車のキーが入っていた。現金を持っていた方がいいと依と出かける前に1人で銀行へ行ったからだ。
一旦車の中で考えを整理しよう。そう思いながら亜純はアパートの階段を降りていった。
その間にバッグの中でバイブレーションを感じ、歩きながらスマホを取り出す。歩き慣れないヒールで足を挫かないよう細心の注意を払いながら。
ちょうど届いたメッセージの相手は千景だった。
亜純が自分を求めてくれている。子供はいなくてもいいから自分だけを必要としてくれるんじゃないか。そんなふうにも思った。
しかし、たったこれだけの時間の中で亜純は考えを変えた。しっかりと自分の意思を持っているわりに、依に合わせてくれる亜純はなんだかんだ言って今回も自分に従ってくれるのではないかと心のどこかで期待していた。
突き放すような亜純の言葉に依は初めて事の重大さに気付いた。
「亜純、待って俺……」
「ちょっと外の空気吸ってくる。……今日はこれ以上話せそうにない」
「え? 待ってよ。まだ何も解決してない」
「解決ってなに? 勝手に自己解決してたのは依でしょ? 子供を望まない依とこれからどんなに話し合ったって私たちの意見が合うことはないと思う。……少し、1人にして」
亜純は依の横を通り過ぎ、玄関に向かうと追いかけてくる依を振り切って外へ出た。勢い良くドアを閉め、外から押さえると依はようやく諦めたように一度回したドアノブを離した。
定位置に戻ったドアノブを見てから亜純はその場を離れた。
勢いのまま外に出たはいいが、同窓会から戻ったままの格好だ。ドレスアップした姿でどこへ行けというのか。すっかり遅くなってしまった時間帯でフラフラと出歩くのも危険だ。かといって飛び出してしまった手前、すぐに玄関のドアを開けるわけにはいかない。
幸いバッグの中には車のキーが入っていた。現金を持っていた方がいいと依と出かける前に1人で銀行へ行ったからだ。
一旦車の中で考えを整理しよう。そう思いながら亜純はアパートの階段を降りていった。
その間にバッグの中でバイブレーションを感じ、歩きながらスマホを取り出す。歩き慣れないヒールで足を挫かないよう細心の注意を払いながら。
ちょうど届いたメッセージの相手は千景だった。
0
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる