91 / 243
友人の恋人
32
しおりを挟む
「千景は凄いね……自分の夢叶えてさ」
亜純は声が震えそうになるのを必死に堪えた。とても惨めな気持ちになったのだ。結婚したら自然と自分の子供を妊娠して出産するものだと思っていた。それが当たり前だとすら思った。
結婚した時点で自分の夢は叶ったも同然だと思っていたのに、6年経ってからそれは叶わないのだと思い知らされたのだ。
何もかも後回しにして夢を追い続けた千景は夢を叶えたというのに、自分は掴むことができなかったのだと悲しくなった。
「読んでくれる子達がいるから俺は今も作家としてやっていけてるから……自分だけの力じゃない」
千景が遠慮がちに言う。こんなところは全く依と違う。そう思った。
「千景はほんとに凄いよ……。努力して作家になったのに、そうやって周りの人への感謝も忘れないでさ。……私は、もう夢を叶えられなくなっちゃった」
言いながら亜純はポロッと涙をこぼした。先程までとめどなく溢れていた涙は、簡単に亜純の頬を濡らした。
「亜純の夢って子供を産むこと?」
「うん……」
「それならまだ望みはあるじゃん」
「え……?」
「子供を産めない体なわけじゃないんでしょ? それならまだこれから産めるじゃん」
「そうだけど、依は……。やっぱり、離婚するってこと?」
亜純はおずおずと尋ねた。依と話しながらも一瞬頭を過ぎったのだ。
「うん。俺は依と友達だし、離婚を薦めるつもりはないけど、亜純とも友達だし亜純が辛いならその選択もありなんじゃないかって思う」
「……私もね、実はちょっと考えたの。だってきっと依は折れないし、もし折れて子供を授かったとしても依は前向きに子育てしてはくれないと思うの」
「うん」
「でも、私のことを好きでいてくれるのは伝わるから……依と別れて他の人と付き合うってどうなんだろうって……」
「どうなんだろうね。客観的な立場から言わせてもらえば、亜純のことを好きになってくれる人は依以外にもいるだろうし、他の人なら妊娠を喜んでくれる可能性は高いよね」
「……でもさ、私もう28だよ? 今離婚して、新しく彼氏ができたとしてさ、すぐに結婚とか子供とか考えてくれる人なんているのかな?」
「いるかもしれないし、いないかもしれない。でも、1つ言えるのは依といたらずっと子供はできない」
容赦ない千景の言葉は痛かったが、亜純はちゃんと現実と向き合うことができるような気がした。
亜純は声が震えそうになるのを必死に堪えた。とても惨めな気持ちになったのだ。結婚したら自然と自分の子供を妊娠して出産するものだと思っていた。それが当たり前だとすら思った。
結婚した時点で自分の夢は叶ったも同然だと思っていたのに、6年経ってからそれは叶わないのだと思い知らされたのだ。
何もかも後回しにして夢を追い続けた千景は夢を叶えたというのに、自分は掴むことができなかったのだと悲しくなった。
「読んでくれる子達がいるから俺は今も作家としてやっていけてるから……自分だけの力じゃない」
千景が遠慮がちに言う。こんなところは全く依と違う。そう思った。
「千景はほんとに凄いよ……。努力して作家になったのに、そうやって周りの人への感謝も忘れないでさ。……私は、もう夢を叶えられなくなっちゃった」
言いながら亜純はポロッと涙をこぼした。先程までとめどなく溢れていた涙は、簡単に亜純の頬を濡らした。
「亜純の夢って子供を産むこと?」
「うん……」
「それならまだ望みはあるじゃん」
「え……?」
「子供を産めない体なわけじゃないんでしょ? それならまだこれから産めるじゃん」
「そうだけど、依は……。やっぱり、離婚するってこと?」
亜純はおずおずと尋ねた。依と話しながらも一瞬頭を過ぎったのだ。
「うん。俺は依と友達だし、離婚を薦めるつもりはないけど、亜純とも友達だし亜純が辛いならその選択もありなんじゃないかって思う」
「……私もね、実はちょっと考えたの。だってきっと依は折れないし、もし折れて子供を授かったとしても依は前向きに子育てしてはくれないと思うの」
「うん」
「でも、私のことを好きでいてくれるのは伝わるから……依と別れて他の人と付き合うってどうなんだろうって……」
「どうなんだろうね。客観的な立場から言わせてもらえば、亜純のことを好きになってくれる人は依以外にもいるだろうし、他の人なら妊娠を喜んでくれる可能性は高いよね」
「……でもさ、私もう28だよ? 今離婚して、新しく彼氏ができたとしてさ、すぐに結婚とか子供とか考えてくれる人なんているのかな?」
「いるかもしれないし、いないかもしれない。でも、1つ言えるのは依といたらずっと子供はできない」
容赦ない千景の言葉は痛かったが、亜純はちゃんと現実と向き合うことができるような気がした。
0
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
継承される情熱 還暦蜜の符合
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる