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友人の恋人

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「私ね、依が結婚しようって言ってくれた時嬉しかったの。普段の結婚生活も幸せだったの」

「うん」

「だって家事もちゃんと半分こしてくれて、仕事で疲れて帰ってくるとマッサージしてくれたりして」

「依は亜純のことが大好きだから、至れり尽くせりだったんだね」

「うん……。子供だけなの。私たちに足りないのは。それ以外はなにも不満なんかないの」

「でも亜純にとって自分の子供を授かることは、今満足してるもの全部を上回るほど大切なことじゃないの?」

 亜純は千景の言葉を聞く度に涙が止まらなくなる。2つの選択で揺れる中、千景は亜純以上に亜純の気持ちをわかっているような気がした。

「そう……だね」

「たしかに今の依ほど家事もしっかりやってくれる人も、疲れて帰ってきた亜純を労わってくれる人もいないかもしれない。でも子供ができたら変わる人もいる。こんな言い方は無責任かもしれないけどさ、最悪子供さえできたら夫婦仲が悪くても離婚しちゃえばいいと思う」

「え?」

「でも、夫婦仲がよくても片方が子供を望まなければ、授かることもない」

 亜純はぼーっと千景の言葉を理解しようとした。子供を1人で育てるという考えは全くなかったからだ。自分が両親に育てられたのと同じように子供は2人で育てるものだと思っていた。
 だから依が子供を可愛がってくれなかったらどうしよう。なんて不安になったのだ。けれど世の中には片親の子供なんていくらでもいて、その親達は必死で我が子を育てている。

 子供を望むということは、そういった最悪の事態も含めて考えなければならないということ。亜純は、自分の考えが甘かったのではないかと思い始めていた。

「1人で育てるって大変だよね……。働きながらだし」

「そりゃ大変だろうね。でも、守りたいものがあるから頑張れるって人もいる。亜純にとって旦那や子供がどれくらい価値のあるものかにもよるんじゃない?」

「……うん」

「なんて、結婚もしてない俺が偉そうなこと言ってごめん」

 千景は電話の向こう側で声のトーンを落とした。
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