したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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夫婦のかたち

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「依、嬉しいの?」

 亜純は無表情のままそう尋ねた。別にわざわざそんなことを聞く必要もなかった。けれど、聞かずにはいられなかった。

「え?」

「嬉しそうな顔してる。子供はいらないって言われて」

「えっと、そんなこと……」

 依はギクリと体を跳ね上がらせたが、少し笑って誤魔化した。思えばこんなふうに誤魔化されることも何度かあったなと亜純は思う。
 都合の悪いことを濁したり、拗ねたりすることはよくあった。それも依のことが好きな内は、言いたくないことなら別にいいけど。なんて思ったりもしたが、今思えばそれも依のずるさだったのだと思わされた。

「もう言わないよ。依との子供が欲しいなんて。えっちしたいとも言わない」

「それは、別に……」

「もう依と一緒にいたいとも思わない」

「……え?」

 亜純が冷たく言い放つと、依は表情を固まらせて間の抜けた声を上げた。

「依はずっと自分のことばっかり。子供が欲しくないってことを隠してたり、えっちしないのを私のためだって言ったり。私は今まで依に隠し事をしたことなんて一度もなかった。今の依を信用するなんてもう私にはできそうにない」

「何言ってんの……? 亜純?」

「昨日までと同じように好きだなんて言えない。依との子供なんて欲しくないし、依とはもう一緒にいたくない」

「まっ……なんでそうなるんだよ! 亜純が俺の気持ちをちゃんと知りたいってちゃんと話し合いたいって言ったから全部正直に話したのに!」

 依は血相を変えて大声を上げた。ようやく亜純が依のもとを去ろうとしていることに気付いたのだ。そして、亜純の気持ちが既に離れ始めていることにも。
 依が1番恐れていたことが今目の前で起ころうとしていた。これだけは避けたくて、子供を望まないことも黙ってセックスレスにまでなったというのに。

 依は納得できずに亜純を引き留めようと手を伸ばした。けれど、亜純は躊躇なくその手を払い落とした。
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