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夫婦のかたち

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「話し合ってよくわかったの。依は私のことを大切にしてくれないって」

「は? 今まで亜純のために色々してきたのに?」

 本気で言っている様子の亜純に、依は怪訝な顔をした。こんなにも好きで大切にしてきたのに、どうしてそんなことが言えるのかと不思議でたまらなかった。

「ただ子供はいらないって言っただけだよ? 亜純のことが好きだから一緒にいたいって。それのどこが大切にしてないんだよ。家事だってやってるし、亜純の体調だって気にしてる。何もしないくせに子供だけ欲しがるような男よりも」

「やめてよ。自分より下の男の人と比べたりしないで。誰よりもマシだとか、誰よりかは上だとか。私は依と結婚したの。依のことが好きだったから結婚したし、依との子供が欲しかったの。今更誰かと比べたって依との結婚がなかったことにはならない」

 亜純は冷静だった。必死な依とは違って、自分の気持ちに整理がつき始めていた。

「そうだけど……。それならいいよ、子供産めばいいじゃん」

 依は嫌そうに顔を歪めながら言った。今回は自分が折れるしかなさそうだ。そうなふうに。

「いらないって言ったでしょ。それならいいって言い方も嫌。子供産めばって言い方も嫌。結局そうだよね。産むのは私で、依は痛くも痒くもない。大変な思いをして産んだって、依はきっと私が好きで産んだんだからって後になって言うよね。子育てしない理由を、俺は欲しくなかったのに私が欲しいって言ったからとか言うんだよ」

「そんなの想像だろ!? 亜純が欲しいなら」

「だったらなんで私が初めてそろそろ子供が欲しいって言った時にそう言わなかったの!? 私が欲しいなら、俺は望まないけど頑張ってみるよとか、考えてみたけどどうしても無理そうだから2人じゃダメかなとか。何の相談もなしに勝手に子供は作らない方向で私を拒絶したくせに、今更寄り添ってるふりなんかしないで!」

 亜純は心の奥底にある嫌悪を全て吐き出すかのように強い口調で言い放った。さすがにこれには依もぐっと口を噤んだ。
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