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想いの矛先

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 真白は真っ青な顔をして、フローリングの床に座り込んでいた。1LDKの部屋は、1人で住むには十分だが、とても広いわけではない。
 これが都会だったなら、家賃で何十万とんだかわからないが、幸いにも県内に留まったことでそこそこの家には住めている。

 現在は美容部員の給料だけで生活している。20代前半の頃は男性に貢いでもらったり、体を提供して現金をもらうこともあった。
 それもある程度の貯金ができて、生活にも余裕が出るとパッタリやめた。

 幼い頃からセックスをするのが当たり前だった。それを強いられてきたから拒むことさえできなかった。するかしないかを自分で決められるようになった。
 男に抱かれることをなんとも思っていなかったが、セックスのない日々は心が穏やかで精神的に楽だった。

 何の感情もないと思っていたが、自分にとってのセックスはこんなにも人生の足枷になっていたのだと思い知らされた。
 今となっては男とのセックスとは無縁の生活をしていて、誰かと付き合うだの恋愛をするだのということへの興味もない。

 ただ好きなことを仕事にし、オシャレをして好きな物を買って満足感を得る生活をそれなりに楽しんでいた。
 真白は高校時代から変わらずただ1人、亜純のことだけを想ってきた。それは完全なる恋愛感情だった。依が亜純に向ける感情と同じものだ。

 けれど亜純の恋愛対象は男性で、自分はどんなことがあっても亜純とは結ばれない運命。それでもどこかで亜純が幸せだったらそれでいい。亜純にとって好きな女友達の枠にいられたらそれでいい。
 そう思うことで自分の感情を封印してきた。時折それを、これ以上辛いことなどないと嘆きたくなることさえあったのに。

 ただ、たった今それ以上に辛い出来事が目の前に立ちはだかっていて、真白は通話を終えたスマホ画面をじっと見つめていた。
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