したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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想いの矛先

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 美希は物怖じせずに男性に話しかけた。亜純も人見知りがある方ではないが、美希のコミュニケーション能力には脱帽する。
 一昨年入会してから常に相手を探しているだけあって慣れたものだ。20代の内に絶対結婚する! と言い張っていたが、とうとう30代を迎えて焦っている様子も窺えた。

 亜純は恋愛にはそこまで興味はないものの、やはり子供が欲しいという夢は諦めきれず、どうせ産むなら早い方がいいに決まっているという気持ちはあった。

「こんばんは。少しお話しませんか」

 そう言って亜純に声をかけてきたのは自分よりも10個ほど年上の男性だった。そういえば依以外の男性の職種に興味を持ったこともなかったなぁとぼんやりと思った。
 彼はIT企業で働き、年収900万円以上なのだと自慢気に言った。美希は年収は高ければ高い方がいい。子供を育てるのにもお金がかかるんだから! と言い張っていたが、亜純と依の年収を合わせてこの男性の年収程度だったものだからあまり現実味がなかった。

「亜純さんはお子さん欲しいと考えていますか?」

「はい。結婚したらすぐにでも子供が欲しいくらいです」

「お仕事保育士さんっていいましたもんね? いいですよね、保育士さん。子供に慣れてるからいいお母さんになりそうです」

 そう言われて嫌な気はしなかったが、褒められているようにも感じなかった。

「子供ができても仕事は続けたいですか?」

「そうですね……今の仕事は好きなので」

「仕事が好きなら僕も賛成です。でも家事と育児をしながらできます?」

「でもそこは夫婦で協力し合っていければいいかなと思っていますよ」

「え? まさか、家事とか育児を夫にも負担させようと思ってます?」

「え……?」

 顔を引きつらせた男に亜純は首を傾げた。
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