したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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想いの矛先

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 亜純は少し考えた。
 ああ、これが世間一般的にいう家事も育児もしない夫の典型かと納得した。

「いいえ。負担させたいなんて思っていませんよ。前の夫は家事も一緒にやりたいと言ってくれる人だったので、そういう方に出会えたらと思っています」

 素直にそう言った亜純に、男は頗る嫌そうな顔をした。

「ああ……離婚経験がおありなんですね。まあ……家事を一緒にやりたいと言われたからといってそれを鵜呑みにしたら相手の負担になりますもんね」

「……はい?」

「相手の優しさにつけ込んで依存しては、上手くいきませんよ。親しき中にも礼儀ありです」

 男はやれやれと言った具合だ。亜純はだから結婚できないんだろうな……と心の中でポツリと呟く。

 相手に全てを押し付けようとしていることにこの人自身が気付いていないんだから、自分を客観視できないのって怖いわね。世の中色んな人がいるわ。

 亜純は至って冷静で、特に憤りも感じなかった。

「そうですね。考え方の合う素敵な方と出会えるといいですね」

 亜純はそう言って軽く会釈をすると、男に背を向けた。美希を探せばまた別の男性と会話をしていた。とても入り込める雰囲気ではなく、亜純も別の誰かと話してみようかとグルっと1周見渡した。

 パッと目が合った男性。亜純の顔をじっと見つめたかと思うと、キョロキョロと周りを見て亜純の視線が自分を捕らえているのだと認識してからそろりとやってきた。

「あのー……お1人ですか?」

 こっそり話すように前傾姿勢でそう言った。ひょろりと長身で、短髪は爽やかさがあったが決してイケメンと呼べる相手ではなかった。
 依も千景もその2人を取り巻く友人達がみんな整った顔立ちをしていたから、どうしたって薄い印象を持ってしまう。

 しかし、本来亜純は容姿で他人の評価をするような人間ではない。容姿よりもなぜコソコソと近付いてきたのかということの方が気になった。
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